16・贈り物
今回、零華の髪の色と母親の名前が出ますわ。
「とんでもない目にあったんだけど…」
「ごめんって、零華」
麻美と千秋と灯里と別れた零華と理奈は、家から近いスーパーに来ていた。
「ってか何で理奈もスーパーに来ているの?」
「さっきお母さんから、零華がスーパーに行くなら、一緒に行って、買ってきて欲しい物があるって、LINEが来て」
零華は其れを聞くと、納得した様な表情を見せて、買い物を行う。
「そういえば、文化祭の時もさっきも、零華はウイッグ着けてたけど…零華の髪の色なら、要らない気がするんだよね?」
理奈に言われて、零華はカゴに商品を入れるのを止め、自分の髪に触れた。
零華の髪は、亜麻色の様にも見え、プラチナブロンドの様にも見える髪であった。
「…お母さんが、この髪だったんだよね…遺伝だけど、日本人離れしているから、学校での地毛証明が大変だったよ…」
「…確かに、里乃亜おばさんと同じ髪をしているよね…」
理乃亜とは、零華の母親の名前である。
「お母さん…何処か国の外国人だと思うけど…何故か自分の故郷については、教えてくれなかったね…」
零華が母親の事を思い出す様に言う。
小学生の頃、零華は母・理乃亜が父・和樹とはあまりにも違う風貌だった為に、一度故郷について聞いたが、『遠い遠い国』とだけしか、教えてくれなかった。
「まあ、お父さんとお母さんって、結婚をお父さんの方のおじいちゃん達に反対されていたみたいだから、多分お母さんの方も同じで、疎遠になってたんだろうね」
結局分からなかった零華は、最終的にそう自己判断を下した。
『多分今考えれば、お父さんとお母さんが死んだ時、僕が罵倒されたのは、それもあったんだろうな…』
その時の事を思い出し、暗い表情を見せる零華。
「どうしたの?」
それに気づき、理奈が心配そうに尋ねる。
「いや…何でもないよ…それより買い物を続けよう」
二人は買い物を再開する。
やがてお茶の販売コーナーに辿り着いた時、零華はとある物を手に取る。
「零華、それハーブティー?」
「そうだよ」
零華が手に取ったのは、ハーブティーであった。
「お店で出すの?」
「店で出すのは、店側が用意した物だけど、僕はまだ出せる程上手く出来ないから、自分で買って、練習しているんだよ」
「そっか…ならさ、出せる様になったら、私に最初に出してくれない?」
「良いけど…この市販ので良いなら、家に来たら作るけど?」
「どうせなら、美味しいくなったのを飲みたいじゃない?」
「まあ、それもそうか…まあ楽しみにしててよ」
そう零華は約束し、買い物を続けた。
※ ※
買い物を終えて店を出た二人は帰路につき、やがて理奈の家の前に着いた。
「やれやれ…今日は大変だったよ」
「大変だったね、零華」
他人事の様に言う理奈。
「理奈…それって、君が言う?」
やや睨む様にする零華。
「怒んないでよ! ご褒美として、此れをあげるから」
そう言って理奈は、自分のカバンから、黒い何かを取り出し、零華に差し出した。それは…。
「…黒猫の…ぬいぐるみ?」
それは短足の二足歩行にディフォルメされた、黒猫のぬいぐるみであった。
「零華がお店でモデルをさせられている時、近くのお店で買って来たんだ。もうすぐ誕生日でしょ?」
ぬいぐるみをプレゼントに渡される零華。どう見ても女の子に対しての行動の様にしか見えず、普段の零華なら怒るだろう…。
「…可愛い」
ところが全く怒らず、それ処かぬいぐるみを抱きしめながら、はにかんだ笑みを浮かべる零華であった。
「零華はぬいぐるみが、小さい頃から好きだもんね?」
「…それ、修兵達には言わないでよ…ってか誕生日プレゼントって、僕の誕生日、七月だけど? 今五月だよ?」
「まあ、フライングって事で…今日のお詫びも込めて…」
苦笑いする理奈。
「…ありがとう、理奈…」
女装をさせるが、結局は優しい幼馴染に、感謝をする零華。
「じゃあ僕は帰るね」
「うん、また明日ね」
「うん」
零華は理奈が家の中に入るのを見届けると、ぬいぐるみをカバンに入れて家へと向かった。
ぬいぐるみ好きは、男の娘キャラを強める為ですわ。零華にしてみれば、ぬいぐるみ好きはソレとは関係無い感じですわ。
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