14・ⅮA・MA・SA・RE・TA
その日も授業が終わり、零華は帰る準備をしていた。
「零華―、今日はバイトはあるか?」
既に準備を終えていた修兵が話しかけてきた。
「今日は無いよ。買い物したら、家に帰るだけ」
「じゃあ今日どっか寄らないか? 孝明達も誘ったから、ゲーセンにでも?」
そう言って修兵が示した先には、孝明、一、太一の姿があった。
「何か昨日も同じ会話した様な…まあ良いかな。僕はあまり出来ないと思うけど?」
「良いさ。じゃあ行こうぜ!」
「うん」
零華達五人は、揃って教室を出て行った。
「…ふふっ」
その様子を不敵な笑みで見ている、女子四人組が居た。
※ ※
「…遅いな」
五人で出た筈だが、零華は今現在、ファストフードの店の前で一人で立っていた。
「何で四人揃って、忘れ物なんかするかな…」
呆れる零華。実は昇降口まで言った時、修兵、孝明、一、太一が揃って忘れ物したと急に言い始め、零華だけ先に行く様に言われ、仕方なく繁華街のファストフードの店の前で待っている事にしたのである。
「さっきから、五回程ナンパされたし…何やってるんだろ、修兵達…」
零華は先程からナンパをされ続け、少々事態に面倒くささを感じ始めていた。尚、ナンパしてきたのは全員男性であり、零華が自分は男だと言うと、悪態をついて去っていった。
「もう三十分くらい待つな…夕飯の買い物もあるし、修平達には悪いけど、今日は帰るか…」
そう決めた零華は、スマホを取りだして、修兵達にLINEを送ろうとした。
「零華!」
その時零華の名を呼ばれ、一瞬修兵達が来たのかと思ったが違った。
「理奈?」
声のした方を見ると、其処には理奈、麻美、千秋、灯里が居た。
「何だ、理奈達も繁華街で遊んでいたの? 僕も今、修兵達を待っているんだけど、どうにも来ないみたいなんだ…」
そう言って零華は、LINEを送る為に、再びスマホを見た。すると灯里が…。
「待つ必要は無いよ?」
「ふぇ?」
「だって修兵達、来ないもの」
「…ほへぇ?」
二回に渡って変な声を出す零華。その零華の手を理奈が掴んだ。
「零華は私達と買い物をするの!」
強い意思を感じる瞳で見る理奈だが、零華は訳が分からない。
「え、いや…ちょっと待って…でも修兵達…」
「私が修兵に言ったの」
灯里が説明する。
「今日は零華君は、私達が連れ回すから、それっぽく誘ってほしいって…簡単に言うとドッキリ!」
「え、何で…もしかして僕…去年みたいに嵌められた?」
理奈の方を見る零華だが…。
「ごめん零華…昨日『ある条件』で、零華の所に行く事を、麻美と千秋に認めてもらったって言ったじゃない?」
「……」
「アレね…今日零華を連れて、あるところで…去年みたいにするって条件なんだ…ルクレツィアちゃん…みたいにね…」
その理奈の言葉を聞いて、零華は全てを悟った。
「…ⅮA・MA・SA・RE・TA」
どうやら修兵達も、理奈達の計画に一枚噛んでおり、去年とは逆の手順で零華をだました様であった。
「さあ、行こう零華」
空手をやっている力強い理奈に逆らえず、零華は女子四人組と共に、繁華街を連れていかれた。
何処へ連れていかれる、零華…。
因みに、今回のタイトルを考えた時、昔年末にやった番組で、女優と歴史ネタをやる芸人のコラボのシーンがあったんですが、それが思い浮かびましたわ。
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