13・ルクレツィア 4
今回にて回想終了ですわ。
「あの時は、理奈に裏切られて、凄くショックだったんだから…」
現代で零華が、ジト目で理奈を見ながら言う。
「ほんとにゴメンって…」
理奈が謝る。
「ってかあの時の手錠…どっから持って来たのさ?」
「あれは演劇部から、借りて来たんだよ」
千秋が答える。
「それで女子に着せ替え人形にされた翌日…今度は源氏名を考えたよね…」
「でも、あの名前は、零華本人が考えたんだろ?」
麻美に言われて、零華はその翌日の事を思い出す。
※ ※
「えっ~、昨日めでたく配役が決まったので、今日は喫茶店で使う名前、つまり源氏名を使いま~す!」
美海がテンション高く宣言すると、クラスは歓声に包まれたが、昨日前日にメイド服を着させられた零華は、ジト目で見ていたが。
「源氏名は各自で決めてね。変なのじゃなきゃ、大丈夫なんで…これから私と尊が紙を配るから、其れに書いてね」
そう言いながら、美海は尊と共に紙を配った。其れには源氏名と書かれた後に、線が引かれていた。どうやら此処に源氏名を記載する様だ。
「書いたら先生に提出するから、それでОKが出れば、めでたく源氏名決定だからね」
美海が言うと、教室中盛り上がって、各々源氏名を書き始めた。そしてそれは零華も同じであった。
『源氏名ね…何にしようか…』
正直状況が状況の為に、零華はノリノリでは無かったが、迂闊に自分で考えないと、変な名前を与えられる可能性があった為、何とか考える事にした。
『う~ん…『ゼロ』…元々僕に付けられる筈だった名前…駄目だな…シンプル過ぎだ…そういえば、お母さんが昔、『サクラ』って名前を付けようとしたとか…でも『サクラ』だと、この桜花学園と被るしな…』
そう考えている時、零華のスマホが振動した。
「ん? LINE?」
スマホを確認すると、それは修平からのLINEであった。
『零華、この前言ってたゲーム…やっぱり貸してくれ!』
「……」
呆れた様な眼で修兵を見ると、修兵が手を合わせて、零華を見ていた。
「何で源氏名考えている時、ゲームの催促してくるんだ…!」
零華はその時、ある事を思い出した。
『そういえば…あのゲームに『ルクレツィア』って名前のキャラが居たな…『ルクレツィア』かぁ…』
零華は何故か『ルクレツィア』という名前の響きが気に入った。
『…良いかも知れない…『ルクレツィア』…』
初めは自分のアイディアが採用されて嬉しかったが、それがメイド&執事カフェに改変された挙句、自身はメイド服を着させられる事になり、正直最悪であったが、今自分が気に入つた『ルクレツィア』が使えるなら、我慢も出来る気がした。
『決めた! 『ルクレツィア』にしよう…』
そう決めた零華は、源氏名の欄に『ルクレツィア』と記載した。
やがて書き終わった紙は、他の生徒の紙と共に回収されて、先生に提出される事になった。
※ ※
数日後教室の壁に、生徒達の源氏名が書かれた紙が貼られた。
「何だよ零華。あんなに嫌がっていたのに、ノリノリだな」
零華の肩に腕を乗せながら、修兵がニヤニヤしながら言う。その目線は零華の源氏名に向けられている…『ルクレツィア』という源氏名に…。
「まあ良いでしょ…僕だって文化祭楽しみたいし…」
笑みを浮かべながら、零華は言った。
※ ※
「そして僕らの模擬店は大成功。学校で一番の売り上げを出したね」
零華が思い出しながら言う。
「でも其れは、『ルクレツィア』ちゃんのおかげだよね! 来た男性客、皆ルクレツィアちゃんが目当てだったから」
「零華の接客の良さもあったけどな」
千秋と麻美が言う。
「…あの頃には僕はもう既に、喫茶店でアルバイトしてたから、それで来てくれたんだよ」
口を尖らせながら零華は言うが…
「いやいや…絶対にルクレツィアちゃんのおかげだよ」
と千秋が言うと、理奈と麻美もニヤニヤとする。
「……」
零華は不満そうな顔をする。
ルクレツィアの名前の由来は、某RPGのラスボスの母親から来ていますわ。何故か浮かんだ為に、使いましたわ。
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