12・ルクレツィア 3
逃走は…どうなるんや…。
何とか追跡を振り切って、零華は昇降口迄来た。
「やっと諦めたか…柔道部の大作とかまで追いかけてきたら、流石に面倒だったね…」
安堵の言葉を呟きながら、零華は下駄箱に入っている、自分の靴を取り出そうとした。
「零華!」
「! 理奈!」
其処に現れたのは、カバンを持った理奈であった。何故か右手を隠している。
「理奈ももう帰るの?」
「う、うん…まあね…」
「じゃあ帰ろうか…全くアイツ等、全員で徒党を組んで…その点理奈を始めとする女子は、僕を無理矢理しようとしないから、安心出来るよ」
「そうなんだ…ねえ零華…」
何故か暗い口調で、零華の名を呼ぶ理奈。
「んっ? 何?」
「…ごめん」
ガシャン!
「…えっ?」
金属音と共に左手に冷たい感触を感じて、零華は左手を見てみる。左手には手錠が填められており、理奈の右手と繋がっていた。
「えっちょっと…理奈? 僕は某大泥棒の三代目じゃないんだから、手錠を外すなんて出来ないよ…」
認めたくない事実に、零華は苦笑いして尋ねる。すると…
「やっぱり理奈なら油断するな、零華は」
「零華君、理奈には無防備だもんね」
そう言いながら現れたのは、麻美と千秋であった。
「えっえっ? 理奈? 何で…?」
「ごめん零華…零華を女装させる計画は、クラスの殆どが総意なんだ…」
理奈が申し訳なさそうに言った。つまり…理奈達も修平達と同じであった。
「じゃあ理奈、零華を教室に連行しようか」
麻美がそう言うと、零華の周りを理奈達三人で固めて、教室に連行し始める。
「ちょっと待って! 止めてぇぇぇ!!!」
離れていく昇降口に、零華の悲鳴が響いた。
※ ※
教室に連れ戻された零華は、早速メイド服の試着が行われた。尚、衣装が女の子物の為に、男子は全て教室から出されて、女子だけで行われる事になった。
男子が退出すると、教室は外からは見えない様にされ、中から『助けて! 止めて!』という、零華の悲鳴が響いた。
やがて暫くすると…。
「もうええで男子! 入ってきや!」
と、中から浜崎 凛の声が響いた。大阪出身であるらしく、関西弁で喋る。
男子達が教室に入ると、其処には…。
「マジかよ…」
修兵が呟いた。
前髪で右目を隠した長めの金髪の髪にカチューシャを点け、肩が露出したミニススカートのメイド服を着た、絶世の美少女が居た。
「…見ないでよ…」
恥ずかし気な表情で言うその声は、正しく零華の声であった。
「ほんとに…零華かよ…?」
「そうだよ…」
修兵の言葉に、零華は小さく答える。
「ってかこのメイド服…ミニスカートだから…足がスースーする…」
「どう? 私達がコーディネートしたんだよ!」
「薄くだけど、お化粧もしたんだ!」
天沢 里香と椎名 真子が得意げに語る。
「…何で化粧迄するんだ…ノーメイクで良いじゃないか…」
「駄目だよ! 折角の美少女が勿体無い!」
零華の意見に真子が反論する。
「僕は男だって、何度も…」
「今は女の子でしょ?」
バッサリと切る里香。
「よっしゃ! 此れなら売り上げNО1を狙えるんじゃないか?」
「そうだ! これ程の美少女が居るなら、他の中学の客とかも、絶対に集まって来るぞ!」
修兵の言葉に、疾風が賛同する。
クラスの殆どが、その言葉に歓声を上げた。端の方でシエラが呆れた様な溜息を吐いていた。
「…覚えてなよ…皆…」
「…ごめん…零華…」
小さく呟く零華。その零華を申し訳なさそうに見ていた理奈であった。
見た目が絶世の美少女のオトコの娘のメイド姿…千客万来でしょうな♪
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