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~対決編~

事件の捜査が終わったのか。ようやく学校に来れたのは1週間後のとある日だった。早く部屋を片付けてしまいたい。この1週間ほぼそれしか考えられなかった。ようやく今は正直ホッとしている。


他の部員らは校庭にある第一部活室で、爆風の影響で壊れてしまった弓矢や道具などの片づけをしており、自分ただ一人は尋常ではない被害を受けた第二部活室に足を運んだ。

割れているガラスなどをかき分けて、大きな窓まで行くと、下は事件現場で現在立ち入り禁止の理科室がある。しかし、もう既に面影は一切ないほど焦げている。今は誰もいないが、恐らくこんな場所を警察官が働いていたと思うと、ただお疲れ様と思うだけだった。


「よし。片付けでもしよう」


気合を入れて片づけを始めようとしたときに


「あのすいません」


驚いて一瞬叫び声を上げてしまった。前には小柄でスーツ姿で髪を縛っている女性が立っていた。一瞬新しい教師かなと思い


「あっ職員室なら、4階の奥ですよ」


すると女性は戸惑いながら


「あっいえ。私はですね」


スーツの胸裏ポケットから、警察手帳を取り出してそれを見せる。


「私、警視庁捜査一課の岡部と申します」


「岡部さんですか。刑事さんだったんですね、それは無礼なことをして申し訳ございません」


思わず恥ずかしながら頭を下げる。すると岡部は慌てながら


「あっいや。大丈夫ですよ、慣れてますから」


その慣れてますからが怖いんだ。慣れていると言うことは内心少しは怒ってるって意味にも捉えてしまうため、その言葉は好きではなかったが、そんなことはどうでもいい。今は刑事がなぜここに来たかと言うことだ。こんな場所は新入生でも新部員でも分かりずらい場所にあるんだぞ。多分私目的だろと思いながら


「私は、小城敦美と申します」


「教えてくださりありがとうございます」


「で、刑事さんが私にどんなご用件で?」


「あっそれがですね。実は生徒さん一人一人に色々とお聞きしてまして」


「一人一人ですか?!」


「はい。丁度あなたで54人目です」


驚いた。たった一人でも刑事なら聞くことは山ほどあると親戚の警察官に聞いたことがある。それが53人も、まだ登校して1時間しか立ってないのにそんなに聞き回るとは、この女刑事、加減という言葉を知らないのかと思いながら


「54人目ですか。で私に用って…」


ふと岡部を見ると、壊れた弓矢に興味深々で。つい自分は


「何してるんですか?」


「あっすいません。いや弓矢をこんなに間近で見たの初めてなもので。ここは何の部屋でしょうか?」


少し笑顔になりながら


「ここは弓道部の第二部活室です」


「弓道って。ボールのスポーツですか」


突然の間違った答えに、少し戸惑いながら


「あっいや。そっちじゃないですね。弓の方です」


岡部は納得した顔になり


「あっだから弓があったのですね」


当たり前だろ。弓が飾りで置いてたのでも思っていたのかこの刑事は。次第に腹が立ちながらもなんとか抑えていた。まさかこの刑事、私に何かをテストしてるのか、頭が次第にはちゃめちゃになりそうになってきた。そのため


「あの刑事さん」


すると岡部が少し微笑んだ笑顔で


「岡部さんで大丈夫ですよ」


「あっ、では岡部さん。要件は?」


するとすっかりと忘れていたのか、岡部が慌てながら普通の手帳を取り出して


「えっとですね。事件当時に一体何があったのか。一人一人にお聞きしてまして」


なんだそんなことか。それだったらほとんどは長く喋る人なんていないだろ。それもそうだし、この学校は土曜授業基本登校自由のため、限りなく来る生徒は限られている。53人の事情聴取が1時間で終わったのも納得がいく。自分も平日よりかは月一回の土曜授業の方が気も楽だ。そう思いながら、とりあえず質問に答えようと思い


「えっとその時間は、ここにいました」


「ここにですか?」


少し驚きの表情をしながら聞いていた。あまりにも迫力のある目に圧倒されながらも


「はい。そこにある執務室で今は壊れたんですけど、パソコンで作業をしてました」


「お一人で作業を?」


「はい」


ふと思った。他の教師からは松川の事故として片付けられたと聞いたはず。なぜこの刑事はまるでアリバイ確認みたいなことをしているのかと思いながら


「あの」


「はい」


「あのこれって、事故じゃないんですか?」


「なんでですか?」


少し不思議そうに私を見ている。まるでなんでそんな質問をするのみたいな感じで見てくるため、ちょっと慌てながら


「あっいや。まるでアリバイみたいに聞くんで気になって」


「あぁ。いやそんな感じで聞いた方初めてだったので」


しまった。今のは完全に失敗だった。改めて後悔の念が自分を包み込んだ。完全に今のは聞かなくてもいい質問だ。まさかこの刑事、私をハメた?と頭がパニック状態になりながらも


「そうなんですか?つい気になってしまって」


それしか言えなかった、いや逆にそれしか言えない。余計な一言を言って疑われるよりかは妥当だと思っていると


「えぇ。実はこれは殺人です」


「え?」


つい開いた口が塞がらなかった。計画だとこのまま警察は事故のまま片付ける、いや片付けるしかないと思っていたからだ。それどころか今この女刑事から出た言葉はまさかの殺人。いやもうそこまでたどり着いている。そう思いながらつい


「えっと。事故って担任の先生から聞きましたけど」


「実は私たちも本当は事故として処理するはずでした」


だったらそうしろよ。なんで余計なことするんだよ。ついキレそうになったが何とか堪えて


「ではなぜ殺人だと」


「実は亡くなった松山先生を爆発直前に目撃している人がいます」


「え?」


まさかだと思った。でも話を聞かなきゃ何も始まらないと思い聞いていると


「この学校の管理をされている男性がですね。偶然爆発直前に現場の理科室の近くを通ったみたいなんですよ。しかし、その時に遠くからですが、窓側で座って寝ている松山先生を見たと」


「寝ている松山先生?」


「はい。ですからおかしいと思いました。原因はガスが充満したことによる爆発でしたが、何故か全部のガス栓が抜かれていました。それで何らかの方法で火をつけて爆発した。もし事故だとしても眠ったまま火を付けられません。そのため殺人だと思いました」


確かにこの女刑事の推理通りだ。しまった、まさか松山を爆発直前に目撃している人間がいるなんて。恐らく私がこの部屋に帰ってくる間に目撃したのだろう。そしたら私はその男性を見ているはず。その男性が憎くてしょうがなかった。でも何かを発言しようと思い


「なるほど」


単純な言葉しか出なかった。それは考えて出た言葉じゃない。単純に慌てているからだ。すると岡部が


「あの。ちょっと私にも気になる点がありまして」


「気になる点?」


そう言い岡部は写真ケースから、一枚の写真を取り出してそれを自分に見せてきた。それは黒焦げになっている理科室の窓の写真だった。一体これが何だと思い


「これがどうかしたんですか?」


「分かりませんか?」


「えぇ」


私はあんたみたいに天才ではない。その怒りもありながら言うと、岡部が一部に指を置きながら


「実は運良く、理科室の窓の側面が残っていたのですけど、ここ見てください」


岡部が指を置いた先は少し幅の開いた窓の側面だった。岡部は続けて


「ここがどうも幅が開いている。それが気になるんですよね」


「なんでですか?」


「つまり爆発直前する前に、窓は開いていたいと言うことになります。なぜ開いていたのでしょうか。でもそうなるともう一つの疑問も出てきます」


「疑問?」


この刑事どんだけ疑問が出てくるんだよと、つい愚痴りたくなるほどの感じだった。もう少しイライラしていたが、もう限界に近かったが焦りが勝ったのか、すぐに怒りは収まった。岡部は続けて


「それはですね。どうやって火をつけたかってことですよね。これは事件・事故両方を考えても、どうしても考え付かなくて」


そのまま負けろ。そう願いながらもただ刑事を見つめていた。すると岡部が


「あの。もう一度お聞きするんですが、爆発時間はそちらの執務席で作業をやっていたと」


「はい」


またその質問かと思いながらいると岡部が


「あの。失礼ですが証明する人は」


さっき一人でしてたって言ったじゃん。やっぱりこの刑事は何かを睨んでいると思い、でも何かを思い出した。それは野球部の喧嘩だ。それは重要なアリバイだと思い


「あっそういえば。野球部の人が喧嘩してました」


「本当ですか?!」


「えぇ」


「それは、小城さんはどこで聞いてました?」


凄く食いついている岡部。自分の心の中は微笑みしかなかった。勝ったとそう思っていながら、執務席を指さして


「そこの執務席から聞こえて、何事かなと思ってたら爆発が起きたんです」


まだ岡部は食いつきながら


「つまり、爆発の直前に喧嘩を聞いたんですね」


「えぇ。なんかお前そろそろいい加減にしないと野球部クビにするぞとか言っていて」


岡部が悩み始める。でも先ほどから思っている事一つ、さっさとこの部屋から出ていけ。そう思ったのか、少し本音が口から出てしまって


「あの。そろそろ私片付けがあるので。いいですか?」


すると岡部が笑顔で


「あっ分かりました。それではまた何かあったら私にお願いします。片付け頑張ってくださいね」


そう言って部屋から出ていった。もう二度と来てほしくないし会いたくもない、そう思いながら片づけを始めるのであった。


しばらくして第一部活室が気になり、外にある実技室などに行くとそこに、弓道を他の部員に教えてもらってる岡部の姿があった。またこいつかと思うと同時に、なんでいるんだと思いながら、岡部に近づき


「岡部さん。何してるんですか?」


突然のことに少し戸惑い始めた岡部は


「すいません。ちょっと謎が解けて、小城さんに伝えようかなと思ったのですがいなかったので、ちょっと他の部員さんに教えて貰ってました。それと」


「はい?」


急に岡部が目の前にまで近づいてきて


「小城さん。部長さんだったのですね」


「え、えぇ」


「言ってくださいよ。そしたらもっと弓について聞きたかったのに。私こう見えて元弓道部だったので。中学の時に」


本当か?そう疑ったがそんなのどうでもいいと思いながら


「そうだったのですか」


つい笑顔で言った。でも謎が解けたという意味が分からずについ


「あっあの。謎が解けたってどういう意味ですか?」


少し岡部が離れて、どこか遠くに行った。そしてそこから持ってきたのは弓だった。一瞬背筋が凍った。まさかかと思ったが岡部が


「実は、この弓が鍵なんです」


つい黙り込んでしまった。本当は難癖付けて反論したいが、その気力ももうさっきので無くなっていた。岡部は続けて


「この弓の先端に紙を付ける。そして火をつけて飛ばせば、理科室の中に入った弓はガスに引火して爆発します」


この女刑事何もなの。私の殺害方法を完璧に見破った。周りの人間はあまりにも衝撃的な話に驚いて黙り込みながら聞いている。でもこれは何とか反論しなきゃと思い


「もし岡部さんの言う通りだとしたら、犯人は弓道部の中にいるってことですか?」


岡部は少し真顔になり


「そうとは言ってません。ですが犯人は弓道に詳しい、それかその界隈の人間です。それでは」


岡部はその場を後にする。でも自分には最大のアリバイがある。絶対に捕まりはしない。そう確信していた。


しかし放課後近くに全てが崩されるまでは…






~第2話終わり~


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