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終焉少女と時の魔法使いのマジカルライフ  作者: ラキューム
第一部
8/38

新たなる依頼(拒否権あり)

この世界の貨幣制度はこうなります

金貨一枚=10000円

銀貨一枚=1000円

銅貨一枚=100円

「サリア、君にギルドから手紙が来てるよ」

「ありがとうございます、グレースさん」

冒険者ギルドから私に手紙が届いていた。つい昨日メリッサさんとギルドに赴いた時には何のそぶりも無かったのにどうしたのだろうと思いつつも手紙を受け取って読んで見ることにした。

受け取って中身を読んでみる。内容を簡単にまとめるとこうだ。

【貴女に是非依頼を受けて欲しいと仰っている方がおられますので、一度ギルドまでお越しいただけるとありがたいです。】

 ということだった。先日冒険者になったばかりの人間に何を依頼するのかと思ったが、取り敢えず行ってみることにした。どのみち今日は何の予定も無かったから問題は無い。

「グレースさん、ちょっと私ギルドまで行ってきますね」

「ああ、行ってらっしゃい」

 ギルドに着いた。この前訪れた時と同じく、相変わらずの喧騒だ。まずは受付嬢に話を聞くことにした。向こうから手紙を出している以上、何かしら話は聞いているはずだ。

「すいませんアンナさん。手紙の差出人に会いに来たんですけど、どこにおられるんですか?」

 対応してくれたのはアンナさん。受付嬢の中でも新顔だが、明るい笑顔と親身な対応に、可愛らしい容貌でかなりの人気を誇っている人だ。普通こういう人は同僚から妬まれたりすると思っていたが、メリッサさん曰くそんなことは無く、同僚からも可愛がれているそうだ。

「こんにちは、サリアさん。では、依頼人の所まで案内しますね」

 依頼人がいる部屋に案内してもらっている最中にアンナさんが話しかけてきた。

「サリアさんって、確か魔法使いなんですよね?だからいきなりSランクなんだとか」

「ブッ! ゲホゲホ、いったいどこからその話を聞いたんですか?ギルドだとギルドマスターさんとミラさんしか知らないはずなのに」

 驚きのあまり吹き出してしまった。あの時、私の周りには間違いなくミラさんとマスターしかいなかったのに誰から聞いたのだろうかと思ったが、すぐにわかった。

「メリッサ様に聞いたんですよ。最初はいきなりSランクだなんてすごいなーってくらいの認識だったのに、メリッサ様が私を呼び出して話があるって言われた時点でもびっくりしたのに、貴女の事を聞いて二度びっくりしましたよ」

「やっぱりメリッサさんでしたか。確かお知り合いなんですよね?」

「はい。ついでにメリッサ様から貴女の担当をするように言われました。なんでもサリアさんは割と抜けているところがあって、ポロッと魔法の事を喋って周りを混乱させかねないからしっかり管理してくれって言われました」

 思い当たる節が無いわけでは無いため、何も言えなかったが、担当してくれる人が同じ人の方がやりやすそうだから特に困ることも無さそうだ。

「じゃあ、これからお願いしますね。アンナさん」

「いえいえ、こちらこそお願いします。それに、新しい英雄の冒険を近い位置で聞けるかもって内心わくわくしてるんですよ?」

「英雄なんて私のガラじゃ無いですよ。でも、土産話はちゃんと持ち帰ってきますから、期待しててくださいね?」

「ええ、もちろんですとも!あっこちらで待たれてますから、後はそちらと話されてください。それでは失礼します」

 部屋の前に到着した瞬間にそそくさと立ち去ってしまった。異様に早足だったし、去り際に耳元で

頑張ってくださいねと言われたので、どんな依頼主なのかと少し怖くなったが、行かないことには話が進まないし、何時までも待たせるのは失礼だと思い、意を決してドアを開いた。

「失礼します。貴女が依頼主様でしょうか?」

 舌を噛むことも、内心の緊張を表情に出すことも無く挨拶できた。まずは良しと安堵した矢先に声をかけられた。

「貴女がサリア? 私はクレア、クレア・ヴェルディ。この国の第一王女よ」

いきなり自己紹介をされてびっくりした。中にいたのは私と同じ金髪碧眼の少女。歳は私と同じくらいに見え、髪は肩にかからないくらいに伸ばしている。

「はい、私がサリア・レーギャルンです」

「わかった。まあ座りなさい。話があるから」

「わかりました。では、失礼します」

 一応依頼主なので、礼はちゃんと取っておかないと。それに相手は王族なので、あまり無礼な態度を取ったら不敬罪とかになりかねない。なったところでグレースさんかメリッサさんあたりがなんとかしてくれそうな気もするが。あの二人は引退している割には、国に対する影響力がかなりあるだろうからそこは問題ないだろう。と考えながらソファーの向かいに座る。この部屋は手続きや、こういったプライベートな依頼などの話をする時に使われる部屋である。

「あ、言っとくけど敬語とか使わなくていいわ。グレース様の養子なら私にとっても身内だし、折角の同い年の子だもの。仲良くしましょ」

「はぁ、でもこれがデフォルトですから」

「そうなの? ならいいわ」

 軽く自己紹介を済ませ、早速依頼の話を切り出すことにした。

「それで、何の依頼ですか?」

「受けてくれるのなら話すけど、受けてくれないのなら帰ってもいいわよ?」

・・・今ので受ける気が失せてきた。人を依頼したいって理由で呼んでおいて、依頼を受けないと内容を話さないなんてありえない。いや、王族だからって理由で押し切られてしまったらその時はグレースさんを頼ればいいし、

「じゃあ、私は帰らせて頂きます。失礼しました」

「わかった、私が悪かったから待ってちょうだい」

 帰っても良いなら帰らせて貰おう。こういうのにホイホイ乗っかってたらナメられるかも知れないし。ということでそのまま部屋を出て受付まで戻ろうとしたが、腕を掴まれて引き止められた。このパターンはアレだ、断ったら余計にしつこい奴だと悟ったので、再度着席した。

「わかりました。それで、なんの依頼ですか? 暗殺とかもいけますけど」

「そんなんじゃないわよ!始めて狩りに行くのに付き合って欲しいの」

「………は?えっと、ドラゴン殺したり、アークデーモンとかサイクロップスとかを仕留めてその首を持って来いとかでは無いんですか?」

 正直、拍子抜けした。内容を話さないってことは、何かとんでも無い無茶ぶりをされるのかと思っていたのだが。王女様だし、なんか偉そうだからてっきりそうだとばかり思っていたのだが。

「そんなわけないでしょ」

「じゃあ、一緒に狩りに行きますか?えーと、サイクロップス」

「私に死ねと?」

「いや、なんでもないです」

 結構本気で言ったんだけど、普通に拒否された。こっちは始めての依頼でいきなり龍と殺し合う羽目にあったのに。

「それでその、えと、あの」

「いいですよ。ちゃんと説明してくれたし、無茶しなくても良さそうですから」

「そう、ありがとう」

 こうして、クレアさんからの依頼をちゃんとした形で受けることになった。出発は明後日、今日と明日は離宮に泊まるみたいだ。既にメリッサさんの方に話は通してあるらしい。

「あと、私の友達になってくれない? 貴女、結構面白そうだし」

「わかりました。これからお願いします」

 こうして、私はクレアさんと友達になった。よく考えたら、人生初の友達かもしれない。

 クレアさんが帰った後、私はまた受付に立っていた。まだ時間にも余裕があるし、さっきの事についても聞きたいことがあったからだ。

「アンナさん、何か依頼はありませんか?」

「あれ? サリアさん。依頼はありますけど、クレア様から呼ばれていたはずでは?」

「いきなり王女様だなんてびっくりしましたよ。ていうか、把握してるんなら話してくださいよ」

「えへへ、その方が面白いかなって思ったんですけど困らせちゃったみたいですね。これからはもうしないようにしますね」

「是非ともそうしてください。その方が助かります」

 今回みたいなことが何度も続くのは勘弁なので、切実にそう願う。担当になったのだから報告と連絡はちゃんとして欲しい。

「でも、いいんですか?あまり遅く帰ると、中々厄介なことになると思いますよ?」

 アンナさんが話題を切り替えてそんなことを言ってきた。怒られると思ったが、ニヤニヤしていた。私の行動が楽しくてしょうがないという風にだ。ちょっとムッとして私は返す。

「門限とかは特に無いですから、別に大丈夫ですよ。それに、グレースさんの娘って事になっていますから、下手に手を出す輩もいないですし」

「そういえばそうでしたね。戸籍上もそう登録されていますし、そこらの悪党じゃサリアさんに敵いませんからね」

 そのことは朝からメリッサさんが伝えてくれた。手続きはもう全て完了しているらしく、ギルドにも提出し終わっているらしい。

「それに、ちゃんとクレアさんには伝えてますし、本人もいいって言ってましたから」

「まあ、王女様ご自身がいいっておっしゃったならいいんじゃないんですか?」

「ですよね。というわけで何か依頼はありますか?」

「はい。ランクのおかげでかなり上位の魔物の討伐依頼も来ていますね。リストに纏めてますので、こちらから選んでください」

 そう言って依頼が書かれたリストを差し出してくれた。リストに上がっている討伐依頼は、キメラにヒュドラ、ガーゴイルといった比較的有名な上位の魔物達だった。どうせなら王都近郊がいいから、ガーゴイルにしておこう。場所は王都の外れの廃教会だから、行くのも比較的簡単だ。

「じゃあ、このガーゴイル討伐でお願いします」

「了解しました。では、気を付けていってらっしゃいませ!」

アンナさんの声を背にギルドから出る。廃教会の場所自体はもうわかっているので一狩り行ってみよう。

  結論を先に言おう。ガーゴイルを倒すのは凄く簡単だった。ガーゴイルはいわば石化した悪魔みたいな物であり、近づかない限りは石像の状態から動くことは無い。それに加えて、教会にあったガーゴイルの石像は通常のガーゴイルと比べると優に三倍以上のサイズをしていたので、一個だけ凄く目立っていたのだ。だから、気づかれる前に遠距離から魔法をぶっ放して一瞬で終わらせたのだ。もちろん熱線を放つ範囲は絞ってあり、持っていた鎌以外を消し去った。そして、その鎌をそのままギルドに納品して、依頼を終わらせた。

「流石はグレースさんのお弟子さんですね。次は魔神でも行きますか?」

「結局私の名を上げたいだけじゃないですか。英雄なんてガラじゃないって言いましたよね?」

「ええ、聞きましたとも。でも、サリアさんがSランクの冒険者である以上相当な難度の依頼は舞い込んで来るのは必然ですし、それをこなす実力もある。まあ、英雄呼ばわりされるのも時間の問題だと思いますよ?」

「避けられないってことですか。そうですか」

「でも、サリアさんが魔法使いである以上、ある程度の名声はいると思うんですよ」

 はて、どういうことだろうか。理由がよくわからない。

「どういう事ですか?魔法使いと名声はあまり関係ないと思うんですけど」

「いいえ、関係ありすぎるくらいですよ。グレース様の例を見てもそうです。強大な力は、人のために使えるという事を証明し、信奉を集めておかないと、あらゆる人から恐れ疎まれるだけですよ。だから、英雄にでもなればそういう人も減るでしょうから、名声を上げようという事です」

 確かに、グレースさんが人から慕われているのはその力を国のために、人々のために使ったからだ。その事に気づかされ、私は少し反省し、アンナさんに対して感謝した。

「ありがとうございます。ちゃんと私のことを考えてくれてたのに駄々捏ねちゃって。これからはちゃんと頑張りますね」

「まあ、この英雄は私が育てたって言いたいってのが7割くらいなんですけどね!」

「なっ! もう、私の感謝を返して下さーい!」

「あはは!3割は本当ですってば!」

ひとしきり二人で笑い、アンナさんと少し仲良くなったところで、帰ることにした。外は大分暗くなってきており、街には風俗の呼び込みや出店などがちらほらと現れ始めている。しかし私は未成年なので、さっさと帰ることにした。

 帰宅して早々に怒っているメリッサさんにでくわした。ちょっと待って欲しい。私はこの人に怒られるようなことはしていないのに、なんでこの人は怒っているのだろうか?

「あの・・・私メリッサさんに怒られるようなことしましたっけ?」

「遅いですよ。貴女はまだ未成年なんです。いくら貴女が強くても言葉巧みに騙そうとしてくる人もいますから。まあ、貴女なら殺して解決しそうな気もしますが、あまり心配させないでください。夜遅くまでクエストに行くのならちゃんと連絡してください。約束ですよ?」

「はい、今度から気を付けます」

「あと、アルくんが今度王宮まで来るように言ってましたから、時間がある時にでも行ってくださいね」

やっぱり、あの時間帯に依頼を受けたのはマズかったみたいだ。次からはもっと考えなければ。     

 ちなみにアルくんというのは今の国王のアルバートさんの事らしい。

「ああ、クレアちゃんは貴女の部屋の隣に泊めてるから、行ってあげてくださいね」

「はーい」

 そういう事らしいので、クレアさんのところに行くことにした。コンコンとドアをノックしてから部屋に入る。

「あら、お帰りなさい。大分遅いお帰りね?」

「あの後軽くガーゴイルを狩りに行ってたんですよ。まあ、軽く買い食いして遅くなったのは事実ですが」

「そう、今度私も連れて行きなさい。あまり市勢の事は知らないから知っておきたいのよ。ついでに買い食いもしてみたいわ」

「わかりました、今度開いてるときにでも行きましょう」

 あまり街に行ったことは無いみたいで、浮かれた表情を浮かべている。私とは違って活発な子で、生き生きとしている。

「そうそう、サリアってどういう経緯でグレース様に拾われたの?面白そうだし、教えて?」

「そうですね、少々長い話になりますけど大丈夫ですか?」

「冒険譚ならいくらでも。それに、友達の事は知っておきたいわ。貴女って色々な事情を持ってそうだし、隠しておくのも面倒でしょう?」

 その言葉を聞き、私は話し始めた。グレースさんに出会う前の話と出会ってからの修行の日々、その中で出会った数々の人々の話を。

「わかりました。じゃあ、まずは・・・」




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