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終焉少女と時の魔法使いのマジカルライフ  作者: ラキューム
第一部
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はじめてのぼうけん

 翌日、グレースさんとメリッサさんに見送られた私はラツィオを出て、依頼を出していたオンドゥ村に向かっていた。馬車で行こうかとも考えたが、せっかくだから歩いて行くことにした。

服装は動きやすいような格好で、武器は普通のロングソードだ。一応予備の剣も持ってきているが使う事は多分無いだろう。食料と野営道具も持ってきている。

「このペースだと、今日中には着きますね」

 目の前に広がる草原を駆け抜けて、目的地に向かっている。馬車で行かなかった理由は単純で馬車よりも走ったほうが速いのだ。そんなわけで今私は走っている。ヴェルディの地形は、大体がこんな感じの平原らしい。

 例外なのは魔族やドワーフなどの他種族の支配地だ。エルフや妖精は森に囲まれた土地に住み、魔族やドワーフは谷や山などの僻地、獣人は集落を作って住んでいるが、この国では争うことなく共存している。例えば、王都の武器屋の店主がドワーフ、宿屋の主人が獣人というように人間の都市で働いているパターンもあれば、エルフや魔族の里、妖精の森にある冒険者ギルドには普通に人間の職員が常駐しており、移住した人間が飲食店などの店を開いているパターンもある。

 昔は争っていたそうだが、グレースさん夫妻が統一していく過程で争う事や差別意識は段々と薄れていったみたいだ。歴史では話し合いで平和に解決したと書かれているが、グレースさんの性格上絶対にそんなことあり得ないと分かっているので聞いてみたところ真実はこうだったらしい。

『まずはランが交渉する。自分達は他種族国家を作るために各地を転々としてきた。様々な種族がもう争わないでいい国を作りたいから協力して欲しいってね。妖精とドワーフはそれで上手くいったんだ。お互いに長い争いで疲弊してたみたいで、もうさっさと終わらせたかったみたいだから、一発で交渉に成功した』

『それだと、エルフと魔族と獣人は交渉失敗したんですよね?それならどうやって引き入れたんですか?』

『エルフや魔族には美人さんが多いんだ。そして、魔族の王は女王だった。それもサキュバスのだ。

エルフは長老が一番の権力者だったけど、たまたまその孫娘を窮地から助けてね。魔族の女王は私を利用して人間を家畜にしようとしてた。彼女はサキュバスらしく性的に私に襲い掛かって来たわけだが、返り討ちにしてやった。もちろん性的な意味でね。その後に交渉して傘下に加わって貰った。こっちはまともな交渉だから誤解しないで欲しい。エルフは孫娘を助けた恩で交渉の席を設けて欲しいって持ちかけても全部突っ撥ねられたから、私が正面からエルフの里に突撃、孫娘を誘拐し、それを追ってくる兵たちを一人残さず死なない程度にボコボコにする。それで改めて交渉したってわけだ。』

『どっちもとんでもなく捻じ曲がった歴史が伝わってるんですね。』

『魔族に関しては猥談になるし、エルフに関しては、誘拐に暴行に脅迫の犯罪のパレードだからしょうがない」

『獣人は?』

『あそこは一番強い奴に主導権があるって社会だから一番簡単だった。普通に当時のリーダーをボコって言うこと聞かせた」

『とてもじゃないけどそのまんま歴史書に載せれませんね」

『だから書き換えたんだ。それぞれの種族のリーダーが口裏合わせてね』

 そう言う事らしい。ちなみに魔族の女王はちょくちょく夢の中に入ってくるらしいが、必ずしもエロい事をするのではなくて大体が世間話をするくらいなんだとか。孫娘さんとは文通をしていると本人が言っていた。そのうち王都を訪れるかも知れないとも言っていたが。

 さて、そんなことを思い出しているうちに村が見えてきた。懐中時計を取り出して時刻を確認すると、ちょうど昼に差し掛かったところ。このまま村の飲食店によって腹ごしらえをしてからゴブリン退治に行こう。

 長い事走ったので結構腹が減っていた。昼はかなりガッツリ食べて、ついでに宿の部屋も取ってから向かうことにした。少し値は張ったが、しっかり鍵がかかる部屋である。仮に部屋に入ってこられたとしても嬲り殺しにできるけどそれをやったら犯罪だ。つまり、これは自分だけでなく相手も守ることに繋がるのだ。

 ゴブリンの巣穴は、この村を出て北西にある洞窟だ。人が連れ去られたとかの被害は出ていないが、農作物が荒らされたり、家畜を攫われるなどの被害は出ていると聞いた。

 

 洞窟に着いた。もう面倒くさいので入口に炎を放って中のゴブリンごと焼き払うことにしよう。

気合を入れて手から火を放った。五分ほど続けてから中に入った。

「松明は持ってきてますけど・・・よく考えたら自分で明かり出せましたね」

そう考えると、松明を始めとする火に関連する道具は必要無いし、そもそも炎の形状変化で大抵の武器は作れるので剣を買うことも無かった・・・というより魔法を使いながら剣を振っても、剣の方が溶けて使い物になら無くなることを完全に失念していた。

 洞窟内をしばらく探索しているが、ゴブリンらしい影は無い。地面に落ちている灰が恐らくゴブリンだった物だろう。とはいえ、何かしら討伐した証拠を持って行かないと依頼達成が認められないかもしれないから、体の一部分でもいいから見つけないと。

「しっかし見つかんないですね。これどうしましょう・・・あった。耳だけだけど」

洞窟の隅の方に耳の一部分だけ残っていた。まあ、これで何とかなると思う・・・多分。

「・・・取り敢えず帰りましょうか」

洞窟を出ると、ゴブリンの群れがいた。

なるほど、人を攫ってはいない、か。中は焼き払ったので見てはいないが、実際はあの中に人の死体が転がっていたのかもしれない。

つまり、人を襲わないのではなく、こうやって巣に入り込んできた人間を出てきたタイミングで集団で一斉に襲っていたというわけだ。そこそこの知恵はあると言う事なのだろう。

「よっと」

炎を太刀の形に収束させて、ちょうど相手の胴体を狙って切り払う。

ゴブリンの頭を残して体は綺麗さっぱり消え去っている。

「そういえば・・・この洞窟って森にあるんでした」

その炎はちょうど燃え移っていた。つい最近もこんなことがあったような気がする。

解決法は・・・

「ああ、燃え広がる前にそれ以上の火力で焼き払ってしまえば問題ないですね」

 そういう事で焼くことにした。大火力で魔法を放つ。そのまま左右に開き、今燃えている範囲を全て、灰も残らない様に念入りに燃やしていく。

「ふぅ、これでこれ以上被害は防げましたか」

目の前に広がるのは焼け野原。自分より後ろはそのまま森が広がっているが、前方は無くなっていた。取り敢えずこれはゴブリンが火を放ったという事にしておこう。そう決意した私はそのまま村に戻っていった。そろそろ夕方だし、宿では食事も出るそうだ。体中が煤塗れになってしまったので、早いところ風呂にも入りたい。




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