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終焉少女と時の魔法使いのマジカルライフ  作者: ラキューム
第一部
3/38

修行の日々と今後の指針

 あの後聞いた話だと、私を攫ったのは奴隷商人だったらしい。私が夕飯にするための獣を狩りに行ったところを襲って、それで捕まえた私を森の中を運んでる最中に『味見』しようとした奴がいたそうだ。そいつが私に触れたところ防衛本能で勝手に魔法が発動し、さっきまで奴隷商人達だったものが辺り一面に転がるどころか周囲の木々ごと焼き尽くしてしまったのだそうだ。まぁ、奴隷商人も強姦魔も殺したところで心は痛まない。そんなこんなで一日がたち、グレースさんと出会ったあの元拠点でグレースさんと向き合っていた。

「ここで修行といっても何をするんですか?」

「魔法を無意識じゃなくて任意で発動できるようにしたいんだ。とりあえず、ちょっとやって見てくれないかい?」

「そう言われましてもどうやるのかなんて分かりません。魔術師みたいに詠唱したらいいんですか?」

 正直恥ずかしくてやってられないがやるしかないのだろうか。我が右手に宿りし者よ!みたいなノリを?魔法使いとは中二病患者ばかりなのだろうか。

「いや、基本は自分の魔法で可能な事をイメージするって感じかな。とにかく大切なのは自分にはできて当然だと思う事だね」

  かなりアバウトな事を言われたが、取り敢えずやるだけやって見よう。でもイメージか。終焉の魔法なんだから、私の命が終わりそうになった時の事でも思い出してみよう。直近だとクロさんに食べられそうになった時と森林火災で炎に焼かれそうになった時だ。この中でもイメージしやすいのは当然炎だ。それを思い浮かべてみると、手の上にゆらゆらと揺れる炎が現れていた。

「わっ!本当に出た!」

 しかし、出た次の瞬間には消えてしまった。まだまだ維持はできない様だ。

「おー、一応形にはできるみたいだね」

 グレースさんはパチパチと手を叩いて褒めてくれているようだ。その間にも何度か出したり消したりを繰り返し練習してみる。段々と慣れてきたところでグレースさんに質問した。

「でも、本当にこんなのでいいんですか?終焉って言うぐらいだからもっと派手な物だと思ってたんですけど」

 なんか物凄いエネルギーの塊がどーんと出たりするのを期待というか予想していたが、かなり拍子抜けした。この方が扱いやすいかもしれないが、火属性魔術とあまりやってることが変わらなくて華が無い。どうせなら派手な物が良かった。

「いや、それは炎の形を取っているだけの終焉の概念そのものだから、炎の形に出来ただけでも十分なんだ」

 訂正、やってることは派手だったし、物凄いエネルギーの塊として出したら大惨事になるところだった。

「グレースさん、次は何をすればいいんですか?」

「次は出せる範囲のコントロールだ。小さい範囲なら出せるようになっただろう? なら、もっと広い範囲でできるようにならないとね」

「でも、ここでやったら危険じゃないですか?」

 私の魔法は危険性が高いから、こんな場所で使っても大丈夫なのかと一応聞いてみる。帰って来たのは当然斜め上、私の予想外の回答だったが。

「いや、今から別の空間を作るから大丈夫だよ」

 手を軽く振るだけで風景が森の中から殺風景な真っ白な場所に切り替わった。一瞬ガラスが砕け散る音がしたが、その時に転移したのだろうか。

「ここはどこですか?何にも無いですけど」

 何処までも真っ白な空間、どれだけ歩いても終わりがなさそうで、距離感が狂いそうになる。もしかしたら時間の流れすらも狂っているのかもしれない。

「安全に修行ができるように時間の流れの遅い空間を作ったんだ。距離の制限も無いからどれだけデカいエネルギーを放出してもいいよ」

「なんか、本当になんでもありですよね」

 もうツッコむ気力すら失せてきた。私の魔法も危険だと思うが、彼女の方が存在を許されない域に達しているのでは無いだろうか。

「それで、どのくらいまで修行すればいいんですか?発動は出来ますし、暴走はそうそうしないと思いますけど」

「完璧に使いこなせるようになって貰う。当然暴走した状態でもコントロールできるように」

 そういうわけで始まった訳だが、控えめに言って地獄だった。いや、魔法の修行自体はサクサク進んだのだ。時間的には一年ぐらいで完璧にできたと思う。修行空間から出た時に外では一ヶ月経っていたが、当然私の体は成長しているわけだ。しかし、問題はその後のグレースさんの発言だった。

「せっかくだから、体術も覚えないかい?」

その発言に対して私は、

「はい、是非ともお願いします」

 私のテンションもかなりハイになっていたのだろう。よりによって満面の笑顔でそう答えてしまったのだ。そして今、ノリノリのグレースさんに再び修行空間にぶち込まれた私はひたすらにボコボコにされていた。私もかなり身体能力は高いはずなのだが、この人はそんな次元じゃなかった。クロさんのドラゴンモードを拳一発で沈めてた時は腕がグチャグチャになっていたけれど、あれは普通のパンチを加速しただけらしい。『あれはこんなこともできるってデモンストレーションがしたかった。本気でやるならあれ以上の威力を魔法無し、負担なしでできる』とは本人の談。長い年月を生きているため、そろそろ新しい事をやって見ようかなって感じのノリで剣術、弓術、槍術など、大体の武術は極めてしまったらしく、それらを私に叩きこむつもりだと言っていた。

「ほらほら、さっさと立って構える。戦いじゃ相手は待ってくれないぞ」

 露出の多い武闘家のような服を着たグレースさんが呼んでいる。

「わかりましたけど、私までこの格好をする必要ってありますか?結構恥ずかしいし、私なんかには似合わないと思うんですけど」

 そして、何故か私までこの大胆な格好をさせられていた。うん、普通に恥ずかしい。太ももも胸元も大胆に露出している。この格好で町を歩いたら普通に逮捕されそうだ。

「そんなことないさ。金髪紅眼の美少女がこの格好をしてる時点で需要はあるし、スタイルだって十分に素晴らしいってのに、私なんかに似合わないとか言ったら他の女性から殺されてもおかしくないと思うよ?」

「それってグレースさんもですか?」

冗談めかして言ってみるが、返ってくる答えはもうわかりきっていた。

「私? 私は自分が綺麗ってことは知ってるから」

 自分は美しいという絶対的な自信を持って、こう堂々と言えるのはいっそカッコいいと思う。私にはどう転んでもできそうに無いけど。

「まあ、実際グレースさんって綺麗ですもんね」

「ふふん、もっと褒めてくれたっていいんだよ?」

 調子に乗ったらしく、今なら聞いてもらえると思ってこんな事を言ってみた。

「褒めてあげたら、少し修行を楽にしてくれますか?」

「調子に乗るな。そんなの聞いてもらえるとでも思ったのかい?」

 駄目だったみたいだ。グレースさんだし割と行けると思っていたが、そんなに物事は都合よく言ってはくれないみたいだ。

「いやー、結構調子に乗ってたし、今ならノリと勢いで聞いてくれるかなぁって・・・」

「それはそれだよ。てなわけで修行再開だ、いつもの倍で行くから覚悟するように」

ニッコリと黒い笑顔で言ってくるグレースさん。目は全く笑って無いぶん迫力と怖さが増している。これでも本気じゃないだろうから恐ろしい。

「ほらいくぞ!」

「いや、それって不意打ちじゃっ!!」

当然私が対応できるわけも無く、鳩尾に綺麗に刺さった蹴りはそのまま私の意識を刈り取るのだった。そこからの修行は簡単に言うとこんな感じだ。まずは筋トレ、走り込みなどの基礎訓練。ここまでは楽勝だった、元から体力はあったがそれが一段とレベルアップしたと思うと達成感もあるが、地獄はここから。ひたすらにグレースさんと組手をしては吹っ飛ばされ、剣の試合をすれば叩き切られ、弓で射抜かれ、槍で貫かれる。心が折れる暇すら与えてくれないほどのスパルタ。

 一ヶ月それが続くと多少は避けれるようになったが、それでも私から攻撃をする暇を与えてはくれず、隙を見せた瞬間にやられる。三ヶ月目でようやく一発当てることができたが、それが精一杯だった。二年間経ったころにはある程度打ち合えるようになっていた。そして三年目、ついに一本取ることが出来たのだ。その後一回だけ本気のグレースさんと戦う機会があったのだが、当然勝てなかった。普通の人で言うなら千回殺して余りあるくらい死んでると思う。

「うんうん、よくぞここまで強くなった。私は嬉しいよ」

 疲労のあまり動けないため抵抗することもできずに、私はそのまま抱き締められる。

「まったくですよ、何回死にかけたと思うんですか」

 そもそもこの人の全力の半分と同レベルで戦える戦闘能力を手に入れたわけだが、それを使う機会なんて来るのだろうか?など、色々なことが心をよぎったが、私に出来ることは一つだけだった。

「でもまあ、ありがとうございました」

腕を離し、そのまま穴を開けて戻ろうとするグレースさん。彼女が後ろを向いた瞬間を私は見逃さずに、後ろから抱き着き、しっかりと抱き締める。

「いきなり抱き着くなんて、そんなに甘えたかったのかい?」

 そんなことをほざいているが、無視してそのまま持ち上げる。

「いや、ちがうなこれ。恨まれてもしょうがないとはいえ、不意打ちは良くないんじゃないかなサリア」

ブリッジの要領で相手を地面に放り投げる!

「これでも喰らって反省してください!」

「ああああああああああ!」

途中でひねりも加えて威力を増せるようにしておいた。穴を通り抜けて外に出る。見上げた夜空は澄み渡り、煌めく星は美しかった。

「ふう、これでよし」

「酷いよサリア・・・ああ、背中が痛い」

気絶などはしていなかったらしく、意外と早く復活したグレースさんに頼み、帰宅する。

「それでグレースさん、一個お願いがあるんですけど」

「なぁに?別にいいけど」

 その日の夕食の時、私は一つ頼みごとをしていた。

「学校に行ってみたいんですけど、いいですか?」

「ああ、良いよ。調度コネがあるところがあるし、今度行ってみようか」

 なんか即効でOKもらえたみたいだ。

「そんなに即決でいいんですか?いや、私としてはありがたいんですけど、グレースさんの都合もありますし」

 もっとちゃんと話し合う必要があると思っていたところにこの返答だったので、当然それでいいのか聞く。

「今は私が保護者なんだし、それぐらいは当然だろう?それに、学力は無いと困るからね」

こう言うことをサラッと言う人だった。

「ありがとうございます。大好きですよ」

 感謝と親愛を満面の笑顔とともに送る。向こうが私を家族だと思って接し、私の事を考えて動いてくれるのならその思いに答えないといけない。それに、私の面倒を何年も見てくれたのだ。そんな人に好意を抱かないなんてあり得ないのだ。





ちなみにルナは魂の魔法使いの名前です。見た目は黒髪のロリ、髪型はセミロングみたいな感じでお願いします。

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