プロローグ2
ひとしきり現状に絶望した後に力尽きて眠っていたようだ。
悪い夢であることを祈って水面に映る姿を確認したがそこには不格好な化け物が映っているだけである。
こんな体でも腹は減るようだ。しかし、這いずるような移動しかできない今の体で食料を得ることは難しそうだ。
そして這いずり回ることしかできない速度では動物を捕まえられる可能性はゼロに等しい。
一応木に赤い果実が生っていることは確認できるが今の姿では木に登ることはできそうにない。
どうしたものかと頭を悩ませていたが、どこに鼻があるのかもわからない体だが嗅覚はあるらしく、空腹が限界を迎えた時に風に乗って漂う食欲をそそる匂いに気が付いた。
やっとのことで匂いの元へたどり着くと、そこにあったのは既に食い荒らされた大型の犬か狼のような四足獣の死骸だ。
何かの間違いであることを祈ったがやはり獣の死骸から匂いはしている。
そればかり、理性では腐りかけた死体だとわかっているのに本能は目の前の肉を食らいつけと命令している。
もはやここまで元々の姿からかけ離れてしまったかと悲しくなるが空腹は限界で死肉を啜る以外の選択肢は存在しなかった。
摂食部から血肉を食らうと一瞬にして躊躇いは砕け散った。
野ざらしにされた獣の死体の肉が、血がこれほどまでに濃厚で香しいとは思わなかった。比喩でもなくいくらでも食べられそうだ。
『食事』を終えると欠けた部分が埋まったような充足感を覚えたが、一息つくまでもなく獣の唸り声が近づいてくることに気づいた。
獲物を横取りされたと思っているのか狼のような獣が俺の事を威嚇している……それも一匹や二匹ではない。
逃げ切るのは絶望的でありいっそのことこのまま食い殺されてしまえば今の姿とオサラバできるとも思ったが、それ以上に強い衝動が体を支配した。
ーー食い足りないーー