プロローグ1
ひどい頭痛と喉の渇きで目を覚ますとそこは森の中だった。
何故自分がこんな場所にいるのか目を覚ます前のことは思い出せず、思考には靄がかかったようだ。
木々の隙間から満月が覗いており、どこかで梟のような鳥の鳴き声が聞こえるので考えるまでもなく現在の時刻は深夜だろう。
まともに二本の足で立ち上がる事は叶わず、耐え難い渇きを癒すためにわずかに聞こえる水の音を頼りに這いずって水場を探すことにする。
働かない頭でなんとか状況を整理しようとするが
自分の名前、かなり頭をひねったが思い出せない。
ここへ来る前の仕事の事、やはり思い出せない。そもそも年齢もわからないので学生だった可能性もある。
最後にいた場所、これも思い出せないが日本にいたということはわかる。
子供のころの記憶、友人と遊ん思い出がないわけではないが、どちらかと言えば一人で本を読んでいる方が好きだったような気がする。
最後の食事、オレンジの看板の牛丼。以前よく世話になったことは覚えている。
応援していた野球チーム、仙台の鷲のチーム……これは思い出せるのか。
少しでも気を紛らわせようと過去の事を思い出そうとしたが、重要な所はすっかり記憶が抜け落ちているようだ。しかし、目を覚ます以前の常識的な部分はおぼろげながら残っている。
思い通りにならない体のせいでかなりの時間を要したが何とか水場へたどり着き、水面をのぞき込むと月に照らされて映る己の姿を見て絶句した。
ーー俺はこんな悍ましい生き物を知らないーー
目が慣れるまでは卵のような球体かと思ったが、そうであればどれほどマシだったか。
百足や芋虫が絡まってできたボールから様々な虫の足や異様な数生えている。
更にまばらに蛇のような鱗が至る所に張り付いており、体の全体が粘膜に覆われている。
あまりの風体に声を上げようにも「ヒュウヒュウ」と体のどこかから空気が漏れるような音がしただけである。
これは何かの罰なのか?