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閑話 とある茶会のご令嬢

 私はコーデリア・フェルレル。公爵家の長女として産まれました。

 我がフェルレル家もそれなりの地位にありますが、どうしてもサンティエール家には敵いませんの。

 女として産まれた私の使命はサンティエール家の長男であるジル様と婚姻関係を結ぶこと。

 見ていてくださいませ、お父様。




♢ ♢ ♢




 グラーツ伯爵のご子息主宰のお茶会に出席することになりました。こちらには恐らくジル様もいらっしゃるはずです。少しでも私のことを印象に残さねば。


 アーベル様にご挨拶を済ませ(あまり良い印象はございません)庭園で紅茶を楽しむことにしました。

 そこへサンティエールご兄妹がやって来られました。会場内はざわつき、あっという間に御二人に視線が集まります。

 確かに地位も素晴らしいのですけれど、御二人は本当にお美しいのです。輝いているようにさえ見えて…。

 御二人の仲睦まじいお姿も私達の間では有名でした。皆さん様子を伺っています。もちろん私も。

 ──と。

「っっっ!!」

 悲鳴にならない悲鳴をあげてしまいました。リリー様の口許を拭われるジル様の何と美しいこと!!リリー様は顔を赤らめております、愛らしい…。

 …あら。そういえばジル様、甘い物を召し上がっておられますね?




 私も周りに負けないようご挨拶に行かねばですわ。さぁ行きますわよ!

「ジルさまぁ」

 完璧ですわ。ジル様はこちらへ向いてくださいました。

「お久し振りです、コーデリア様。今日は髪型がいつもと違いますね。お召しのドレスと大変良く合っています」

 私は思わずポカンとしてしまいました。今までそのようにお声をかけていただいたことは無かったのです。

 戸惑っているとまたジル様がお声をかけてくださいました。

「…不躾でしたね」

 ジル様は私の手を取り、そして…手の甲に唇を寄せられ…!?何が起きておりますの!?

「本日もとてもお美しいです」

 目を合わせてにっこりと笑うジル様。私はもう何が何だかわからなくて、ただ狼狽えることしかできませんでした。どんどん顔が熱くなっている気がします。

「申し訳ございません、嘘がつけないもので」

 目を細めて笑われたジル様に、私はもうダメでした。直視ができません。

 一礼だけして(忘れなかったことを褒めていただきたいですわ)その場から立ち去ってしまいました。




 帰宅してから私は後悔ばかりしていました。どうしてもう少し気の利いた言葉が出てこなかったのかしら。あぁ何て美しいジル様。夢のような時間でした。

 思い出すのは胸の高鳴りばかり。

 お褒めいただいた髪型はこれからジル様にお会いする際には侍女に指定しなければ。ドレスはお色がお好きだったのかしら?形かしら?同じようなドレスをたくさん作らせましょう。


 私が悶々としているとお父様に呼び出されました。

「グラーツ伯爵子息主宰の茶会で、サンティエール家の子息に会ったらしいな?」

 さすがお父様、お見通しのようです。もしかして私の対応もお耳に入ってしまわれたのかしら。

「今すぐに手紙を書け。これを逃してどうする。あちらもお前に気がある、婚約まで持っていくぞ」

 お父様の言葉に驚いてしまいました。ジル様が私を?

「そ、そうなのでしょうか…」

「当たり前だ!こんなに可愛い娘に惹かれぬ男が居るか!」

 お父様は私の両肩をがしりと掴まれました。

「サンティエール家と婚姻関係を結べば我が家の地位も確固たるものになる。必ず籠絡しろ」

 籠絡、だなんて。そのようなことが出来るわけがありません。でもジル様が私の夫になってくださったら…。

「はい、私、必ずジル様と結婚いたします!」


 そして私はジル様へお手紙を送りました。たくさんの愛の言葉を添えて。

お読みいただきありがとうございました。

次はまた幼馴染みの2人になります。

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