振り直し後 家族会議
「父様、母様、少しお話よろしいでしょうか?」
その日、家で晩ごはんを家族皆で食べ、食後のデザートが並べ始めた頃合いでランは目の前座っている父…ウォーク·フォスタリアと、ケーキの乗ったお皿を両手に持った母…セレス·フォスタリアに声を話を切り出した。
「どうした、急に改まって」
と父ウォークは不思議そうに返し、
「まぁまぁ何かしら。ケーキを食べながらゆっくり聞かせて」
と母セレスは好奇心から話の続きを促した。
基本的にこの父と母はランに対して甘く、なかなかの親ばかである。
そうは言っても、しつけはちゃんとしており、常識的にダメなことをしたらちゃんと叱る。その上で、ランがやりたいと言ったことはある程度尊重してやらせてくれている。
本来なら、1人だと危ないから…と判断に迷う図書館通いも、許すぐらいである。
まぁ、年の割に明瞭に喋り、誰に対しても丁寧な態度をとるランのお願いは、可愛らしい容姿も相まって、必死に頼み事をしているようで断りづらいというのもあるが。
「それで、どうしたんだい、ラン。図書館の本を読み切って、別のことしたくなったか」
ウォークはセレスが席についたタイミングで話を進めた。
「はい、父様、母様、僕は魔法が使えるようになりたいです。その為に父様が先生をしている初等学校の魔法科の飛び級入学試験を受けたいのです」
てランははっきりとした口調で訴えかけた。
そんなランのお願いを、ウォークは嬉しさ半分不安半分で聞いていた。
この国での初等学校は7歳から始まるが、それよりも前に入学する方法もある。毎年2月に各初等学校にて開催される飛び級入学試験に合格すれば、7歳に達していなくても入学が許されるのである。
ウォークから見ても、ランは同じ年の子よりも頭が良く、その知識欲からくる知識量は一般的な10代半ばの少年少女よりも豊富であるかもしれない。飛び級入学試験には苦なく合格することが出来るであろう。
ただ、ウォークとしては、無理に飛び級で入学せずに、7歳になってからでも遅くはないと思っていた。
初等学校で教壇にたっている経験から、飛び級入学した子が孤立しやすいという現状を知っているというのもあった。
ウォークが、どうやってランを説得しようか考えていると、
「あらあら、いいじゃない、飛び級入学。ランなら合格間違いなしなんだし」
ケーキを食べ終え、満足そうにしながらセレスが割って入ってきた。
ウォークは飛び級入学の負の面を説明しようとしたが、セレスはそれを察してか先んじて続ける。
「それにランなら、可愛いから、年上のお兄さん、お姉さんもほっとかないわよ」
と、何も考えていないのかセレスはのんびりした口調。
「何なら、入学する前に魔法も教えてあげちゃおう。お母さん、お父さんと違って魔法大得意だし」
「ホントですか!母様!」
セレスの提案に、ランは目を輝かせた。願ってもない提案だ。
「それじゃ、早速明日から魔法のお勉強をしようかしら。ランの先生になるの、楽しみだわぁ。もちろん飛び級入学試験の申し込みもしなきゃだわ」
「よろしくお願いします!母様」
と、ウォークを取り残して、セレスとラン2人でどんどん話が進んでいってしまった。
ウォークが「いや、ちょっと、待って…」と静止しようとしても、盛り上がる2人の耳にはまったく聞こえていなかった。