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ライハルト学園 イグニスの思惑

「やることは分かりやすく空を飛ぶ魔法。派手なのは出来ないけど、これなら普通の人間には出来ないことだから、インパクトは大きいはずよ」


ランとエルミーに対してヒソヒソ話で今回使う魔法の説明をイグニスが始める。エルミーもこの輪に加わっていることに少し疑問を感じるが、何か考えがあるのだろうか…。


「それで、ランくんにもちろんやってもらうんだけど、エルミーちゃん、今回はランくんと一緒に空を飛ぶ魔法を使ってもらうわ」


それを聞いてエルミーは驚きの表情を浮かべ、首を横にブンブン振った。

「自分に出来る訳がない」と思ったのだろうか。顔色も緊張からかどんどん悪くなっているように見える。

そんなエルミーをイグニスは、笑顔で「大丈夫」と優しく励ました。


「もちろん、今のエルミーちゃんの魔力量じゃ、少しの時間宙に浮くことが出来るかどうか。でも、安心して。今回はランくんが一緒に飛ぶから。師匠が一緒なら安心でしょ」


エルミー表情、顔色に変化はない。いくらイグニスが出来ると言っても、ランと一緒だといえど、まだ1度も挑戦したことの魔法なのだ。

イグニスはエルミーに話しかけるのを1度やめ、ランの方に具体的な方法を話し始めた。


「ランくんが初めて魔法を使った時に、魔力不足になっちゃって、私が魔力をあげたことがあったでしょ。あの要領で、ランくんからエルミーちゃんに少しずつ魔力を回してあげて。手をつなぎながらがいいかな。空を飛ぶだけなら、ランくんはかなり余裕があるだろうから」


確かにただ飛ぶだけなら、ランの魔力が枯渇することはないのでエルミーに回す余裕も十分にある。

しかし、サリフォスに魔法を見せるだけなら、エルミーと一緒にやる意味は何なのか…。


「今回の目標は3つ。1つ目はこの特別魔法教室の存在意義を王族に再認識してもらうこと。2つ目はエルミーちゃんとプリウスとの関係を修復するために、エルミーが既に魔法を使えるレベルだと知ってもらうこと」


なるほど、意外にもイグニスは今後の特別魔法教室のこと、エルミーのことをよく考えているようだ。

ランだけがやっても、昨日から続くエルミーの問題は解決しないわけだから、この機会に一緒に解決してしまおうということか。

だが、イグニスは3つの目標があると言ったが、残り1つは果たして…。

そうランがイグニスの次の発言を待っていると、「で、3つ目がある意味1番重要なんだけど」と続けた。


「エルミーちゃんが魔法を使えるところを特別魔法教室の他の生徒に見てもらって、自分もああなれるって自信をつけてもらうことかな。この教室、ランくんが飛び抜け過ぎてて、皆、ランくんを目標に出来ないんだよね。でも、同じ位置からスタートしたエルミーちゃんが、ランくんと一緒に空を飛ぶ魔法を使えたら、それを目標に出来ると思うの。3ヶ月、ずっと単語だなんだ、基礎の勉強ばかりだから、モチベーションが低下していると感じてね…。これを機会にやる気を出させたいの」


今まで、ただただランにべったりくっついてるだけかと思いきや、ちゃんと生徒のことも見ていたらしい。

今後のことも考えた上での、エルミーとの空中飛行。リスクは多少なりともあるが、ランはそのリスクは背負う価値のあるものだと、イグニスの考えを聞いて納得した。

あとはエルミーの気持ち次第だ。

ランがエルミーの方に顔向けると、エルミーもちょうどランの方を向いた直後で、2人の目があった。先程より顔色はよくなったが、目にはまだ不安の色が残っていた。

ランはエルミーの両手を強く握り、「大丈夫」と頷く。


「エルミー自身と、師匠の僕を信じれば大丈夫。心配はいりませんよ」


その言葉は、無理強いをするわけでなく、かといって、甘やかすものではなかった。エルミーなら大丈夫。そうランが強く思っての言葉だった。

エルミーにもランの気持ちが伝わったのだろう。

目に残っていた不安の色はなくなり、いつもの、冷静なエルミーがそこにはいた。


「出来ます。私にもやらせて下さい」


そして、ランの手を握り返した。


「よろしくお願いします、ラン師匠!」

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