ライハルト学園 サリフォス·ブルグラス
プリウス·ブルグラス。
ブルグラス王国現王の一人息子であり、今年12歳になるのでランからは6歳、エルミーからは2歳年が離れている。
金色の髪は肩に届くくらいの長さでそれを後ろに1つに纏めている。眼光が鋭く、相手に威圧感を与える容姿であるが、その容姿事態は整っている部類である。
身長は170cmほどとこの年の少年としては高く、ランは首を上に上げて、自然見上げる姿勢になっていた。
プリウスは少し顎を上げて、ランとエルミーとを見下すように言った。
「父上肝いりの魔法教室と聞いて来てみれば、貧相な施設に質の悪い教師、そして出来の悪い生徒。これが貴様の大切な特別魔法教室か。聞いて呆れるわ」
「…お言葉ですが、内情も知らずにそのような発言をするのは、ブルグラス王国の王族の品格が疑われてしまうのではありませんか」
プリウスの発言にエルミーは明らかに喧嘩腰で対応していた。いつのも冷静さはない。
プリウスはエルミーを見下ろしながら、さらに睨めつけた。
「ただのお目付け役がよく言うわ」と前置きした後、プリウスはランとエルミー以外の生徒が魔法単語、制御単語を学んでいる教室を指差す。
「今、ガキ共が必死こいて単語だなんだを覚えているところを見てきた。もうここが開いて3ヶ月以上たってまだ基礎も出来ないのか。これなら、我も在席している王国直轄教育機関にいる上流階級の子供に魔法を学ばせた方がよっぽど効果がある。この教室を開くのもタダではないのだからな」
王国直轄教育機関。確か王都で生活をしている王族、及び貴族階級の子供か通う教育機関だ。ただ、通う条件がある程度の資産をその機関に提供出来るかどうかで、レベルはあまり高くないと評判だが。
「こっちで教室を作れば、ここよりもっといい施設を作ることが出来る。結果が出ないものは早々にこちらに明け渡して欲しいものだ」
「この特別魔法教室は、今までの人族の魔法教育とは違い、エルフ族の魔法を取り扱っています。前例がないことに取り組んでいる分、長い目で見ていただかないと困ります」
「フン、どこの馬の骨か知らないが、そのエルフ様はどこにいる。どこぞでサボっているか知れたものでもないわ。そもそも父上も、エルフなぞに頼る必要はないというのに」
どうやら、このプリウス、エルフ族のこともかなり下に見ている節にある。
文明の進行度でいえば、人族と同レベルであるが、こと魔法に関してはエルフ族の方が圧倒的に上であることは、少し調べれば分かること。だから、現王もエルフ族のイグニスをわざわざこちらに呼び、特別魔法教室を開いたのだ。
このバカ息子、それさえ分からないぐらいに能力不足なのだろうか。
ランが心の中で呆れていると、それに気づいたわけではないだろうが、プリウスがランの方を睨めつけた。
「そもそも、この子供はなんだ。エルミー、お前の子供の保護者になったつもりか」
「ラン師匠のことを悪く言わないで下さい。そのお方はこの教室で最も魔法に長けるお方です」
「師匠…?ハッ!こんなガキがこの教室のトップだと!ほれみたことか。こんなちびっ子がトップの集団なんぞ、程度が知れるというものよ。このことは父上にしっかり話しておくぞ。ここの教室は必要ないともな」
プリウスがお供の2人を連れて去ろうとする。
しかし、数歩歩いたところでその足が止まる。
不思議に思ったランはその原因を知ろうと後ろを振り向く。
そこに立っていたのはイグニスと、初めて会う40代ぐらいの男であった。
「あれ?ランくんにエルミーちゃん、どうしたの?こんな入り口で。あとそこに立っている少年は誰?」
イグニスがラン、エルミー、プリウスに問いかける。
ランとエルミーが状況を説明しようとする前に、プリウスがイグニスの隣にいる男に問いかけた。
「父上!なぜこのような場所に?」
「それはこちらのセリフだ。王都で授業を受けてるはずのお前が、何故ここにいる?」
そうプリウスに返すその男こそ、ブルグラス王国現王、サリフォス·ブルグラスであった。