ライハルト学園 対策会議
「とりあえず、私とランくんあたりでその王様の息子をぎゃふんと言わせる?それぐらいなら楽勝だよ」
イグニスが気のぬけるぐらい軽い調子でそんな提案をした。
エルミーの話を一通り聞き終え、とりあえず皆で晩ごはんを、各自でお風呂に入り、一段落したところで、エルミーが眠そうにしていたので、先にベットで寝かせてあげることにした。
エルミーからすれば、今日は色んなことがありすぎて、気を張っていた部分もあったのであろう。素直にベットに入ると数分しないうちに規則正しい寝息をたてて眠ってしまった。
ちなみに、エルミーがランの部屋のベットを使っているので、現在ランはイグニスの部屋にいる。
一応、エルミーの今後の話をしようと思うのだが、どうにも今まで経験したことのない事態なので、ランもすぐにはいい考えが浮かばなかった。
イグニスの方は、とにかく思いついたことを口にしているようで、先程の提案もその1つであった。
「その息子が、特別魔法教室を単純に馬鹿にしているのか、エルミーちゃんが魔法を使えるのに嫉妬しているのかは分からないけどさ。ようは、今まで自分より下だと思ってたエルミーちゃんが気に入らないわけでしょ。それならいっそ何も言えないぐらい私達の魔法を披露しちゃえばいいんじゃない?」
イグニスの力技に近い提案も、ありといえばありだとは思う。中途半端な力の差だから、嫉妬心は大きくなる。自分だってもう少し頑張れば、環境が良ければああなれたと考える。だが、圧倒的に力の差を見せつけてしまえば、そんなことを思う気持ちも萎えてしまう。ランやイグニスがやってももちろんのこと、エルミーだって特別魔法教室内では優秀な生徒で、魔力量も人族の中では高い部類と鑑定されている。もう少し鍛錬すれば、その力量は大きく伸び、その息子が何も言えないレベルに達することであろう。
しかし、今回のエルミーの問題はそんな簡単にはいかない。なにせ代々王族の教育係、お目付け役を担う家の子なのである。これからもそれはついて回ることであると考えると、あまり力技に頼りすぎて、息子とエルミーの関係が破綻するようでは本末転倒である。
あまり力技に頼らず、息子の考え方を少し軟化させ、そして、エルミーとの関係を修復する。そんな理想的に良い案がないものか…。
そうランが考えていると、隣にいたイグニスが「ねえねえ、ランくん」と話しかけてきた。
「2人だけじゃ考え浮かばないし、とりあえず、エルミーちゃんとその息子の間に入ってくれそうな人に相談しようよ。私、心当たりがあるしね」
なるほど、それは建設的な提案だ。先程までギャフンと言わせる方法を考えていた人物とは思えない程に。
しかし、その心当たりとは一体…。
ランが疑問に思っていると、イグニスは憎たらしいほどのドヤ顔をしながら答えた。
「その息子の親。王様だよ、王様。」