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ライハルト学園 グスタフ家

ランが部屋の扉を閉め、エルミーと二人だけに…なったはずなのだが、そこにはイグニスの姿もあった。

流石にランもイグニスが後ろからついて来ていたのには気付いていたが、てっきり隣の自分の部屋に向かうものだと思い放っておいたのだが…。

ランは「何故ここにいる?」という意味を込めて、イグニスの方に視線を移す。


「いや〜、状況は分かんないけど、エルミーちゃんがここにいるってことだけで、大変なことが起こったってわかるじゃん。ならなら、私も先生として、エルミーちゃんの話を聞きたいな〜と…」


教師として生徒を思いやってのことなのか、それともただ単純な好奇心からなのか、とりあえずエルミーの話をイグニスも聞きたいらしい。

それに関して、ランから言えることはなく、エルミー次第な訳だが。

ランはイグニスもいていいか、エルミーに尋ねた。


「構いません。むしろイグニス先生にも聞いてもらいたいと。もしご迷惑じゃなければ」

「迷惑なんてとんでもない!ささ、立ち話もなんだし、そこのソファに座ろう」


エルミーの許可をとったイグニスは、部屋の中央にある二人がけのソファへとエルミーを座らせ、その隣に自分も座った。

この部屋で座れる場所は、そのソファと勉強机のイスだけなので、必然的にランはそこに座ることになった。


「それでそれで。追われてたところを逃げていたみたいだけど、その人たちは何者なの?」


イグニスがド直球な質問をエルミーに浴びせる。

ランとしては少し雑談をしながら、落ち着いてきたら話を振ろうと思っていたので、イグニスの発言にかなり焦った。

しかし、エルミーは気にした様子もなく、「そうですね…」と口を開いた。


「その前に、お二人はグスタフ家をご存知ですか?」


そう問いかけられ、ランとイグニスはお互い目を合わせ、同時に首を横に振った。

エルフ族であるイグニスが、人族の名前等多く知っているわけもないし、ランにしても、その名前を聞いたのはエルミーと出会った時が初めてで、特別な名前とは思っていなかった。

そんなランとイグニスの反応をエルミーは確認し話を続けた。


「グスタフ家は、代々ブルグラス王族一家の教育係、それにお目付け役を担ってきた一族です。現王のサリフォス·ブルグラス様の教育係を務めたのが私の祖父にあたる人物で、今はもう退任していますが、お目付け役を担ったのが私の父になります。代々、王族の子供には、同年齢のグスタフ家の子供がお目付け役として、その親が教育係を任されることになっています」


王族の教育係を担う一家…。エルミーが年齢に似合わない、丁寧な言葉づかいや雰囲気をしていたのは、小さい頃からそういう風に教育されていた結果だったのか。


「ねえねえ。それじゃ、エルミーちゃんは貴族とかそういう上流階級の子なの?」

「いえ、そういうわけでは。王族よりある程度の信頼と信用を得て代々続いている家ではありますが、爵位等は受けていません。むしろ、王族の皆様が、市井の感覚も学びたいということで、あえて貴族とかではないグスタフ家を重宝しているようです」


イグニスは「ヘ〜、面白い王族さんなんだね〜」と軽い感じで返答した。

エルミーが話やすいようにそのノリでいるならありがたいが、そうじゃなければ、ただ空気の読めない調子である。


「それで、今日の出来事にそのグスタフって家のことが絡んでくるの?」

「はい…。ご存知かもしれませんが、現王と后との間には12歳となる子供がいます。年が最も近いということもあり、私がお目付け役となっているのですが、その、なんというか、少々気難しい方で…。私のこともあまり良くは思っていないみたいなのです」


現王の子供は、その1人のはずと流石のランも知っていた。このままいけば、その子供が次期王となるわけだ。

ただ、気難しいその子供と今回のエルミーの逃走劇にどんな関係があるのか。

そう考えていると、イグニスも同じ疑問を抱いたのであろう。エルミーにその疑問をぶつけていた。軽いノリのような調子で。


「えっと、それで、その気難しくて扱いにくい王様の子供と今日の出来事、何か関係があるのかな?」

「扱いにくいというわけでは…。いえ、話を戻します。現王の子供…プリウス·ブルグラス様というですが、私がライハルト学園で魔法を学んでいるとどこからか耳にしたようで、自分も魔法を使いたいと言ってこられたのです。しかし、そもそも魔力がないと使えるものではないですし、その鑑定を私がすることが出来ないので、その旨を伝えると、機嫌を損ねてしまわれたようで…。色々と不平不満を私にぶつけてこられて…。それだけなら時々あることなのでなんとも思わなかったんですが、時間がたつにつれ、特別魔法教室のことまで口に出してきたんです。それで、私、その、頭に来てしまって、プリウス様を叩いてしまったんです」


それにはランとイグニスも驚いた。普段、あまり感情を面に出さず、冷静な態度を崩さないエルミーがそこまで怒ることがあるのかと。それが特別魔法教室について悪く言われたのが原因とは。エルミーにとって、特別魔法教室はそこまで大切なものだったとは。


「特別魔法教室…特にラン師匠とイグニス先生は私の価値観を大きく変えてくれた存在です。それをプリウス様とはいえ、特別魔法教室とお二人のことをよく知らない人間に悪く言われるのが我慢ならなくて。それでこんな状況に…」


そういうとエルミーは黙ってしまった。

イグニスもこの雰囲気を打破するほど空気が読めないわけではなく、ランも黙ったまま重い空気が流れ続けた。

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