ライハルト学園 ランとエルミー
次の日から本格的に特別魔法教室の活動が始まったのだが、まずは基本中の基本である魔法単語、制御単語の暗記となるので、正直ランが今更やる必要がないことであった。
一応、復習程度に教科書を一通り目を通すが、目新しいものもない。イグニス監修のもと、エルフ族が使う単語がズラッと書き連ねられているとても優秀な教科書でなので、ラン以外の特別魔法教室の生徒には大変貴重なものであるのだが…。
そんな感じで自分自身のことについては若干手持ち無沙汰な状態のランであったが、幸いにも…と言うべきか、今日はエルミーがランの隣に陣取り、「この単語の意味は…」「これはどのようなアクセントで…」と熱心に質問してくるので、思いの外退屈はしていなかった。
昨日ランに弟子入りしたエルミーは、かなり真面目な性格なようで、ライハルト学園に来る際も、どのように住所を調べたか分からないが、ランの家までランを迎えに来て荷物持ちをしようとしたのだ。ちょうど一緒に出てきたイグニスとランは驚きを隠せなかったが、その申し出は丁重に断った。自分よりも学年が上の人間に荷物持ちをさせる程、ランの精神は図太くない。むしろ、生前運動部に所属し、考え方がどちらかと言えば体育会系よりのランからしたらありえないことである。
断られたエルミーは「そうですか…。なら、何かあった時は遠慮なく言ってください。ラン師匠」とそのままランの隣にくっついた。イグニスとエルミーによるサンドイッチ状態である。
そのまま、ライハルト学園まで一緒に登校し、授業中は流石に来なかったが、授業が終わり、特別魔法教室へ行こう、教室を出たら、廊下に既にエルミーが待っており、「授業お疲れ様です。ご一緒に行ってもよろしいでしょうか」と訪ねてきた。
という訳で、授業の時間を除き、ほとんどの時間をエルミーと過ごすこととなっている。
ランとしては、イグニスみたいに無茶振りをしてこない、ベタベタ引っ付いてこない分、楽といえば楽なのだが、年上の少女にこうもかしこまられるとそれはそれで落ち着かない。
それとなく、こちらの方が年下だし敬語はやめてくれないかとお願いしてみるも、「普段からこうなので。それに師匠にタメ口は失礼にあたりますし」と取り付く間もなかった。
普段からその話し方なら仕方ないかもしれないが、一緒にいる時間が長くなるなら、もう少し打ち解けたいものである。これからの課題として、どのように解決していこうか…。ランは教科書の内容そっちのけで、いい方法はないかと考えるのであった。