ライハルト学園 汚名返上名誉挽回
エルミーの発言を受け、「うーん、それじゃ、見てもらった方が早いから、皆で外に行こっか」とイグニスが提案し、グランヴェットら教師陣、エルミーら生徒陣、それにイグニスとラン全員が広場へと移動した。
ランとしては、この場にいる生徒、教師陣共に敵に回したいわけではなく、出来れば良好な関係を築いていきたいと思っている。なので、自分の実力を証明させてもらえる場を作ってもらえるのはありがたい。しかし、元はといえばイグニスが暴走し、本来ランが受けるはずだった鑑定を免除し、教師陣になんの説明をしていなかったからこのような事態になっているわけで、この状況を作り出した犯人は「ちょっと準備するね〜」と陽気に魔法で何かしら作り始めたイグニスである。ランからすれば、イグニスの暴走の後始末をするわけで…これからのこの特別魔法教室、イグニスに振り回され続けるのではと、考えるだけで疲れてしまっていた。
さて、その間にも準備を進めていたイグニスが「こんなもんかな」とこちらに戻ってきた。
イグニスがいた方向には、巨大な壁が作られており、ちょうど日が傾き始めた時間ということもあり、巨大な壁によって大きな影ができていた。
「あちらにありますは、だいたい厚さ1m、高さ5mの的になります。ちょっとやそっとじゃ倒れないし、道具を使っても削ったり出来ない強度になっています」
イグニスがいつになく真面目な口調で説明を始めた。
「今回は、ランくんに、魔法を使ってあれを破壊してもらいます。ではではランくん、方法は任せるから出来るだけ派手にあの壁を壊してね」
もう少し穏便な方法はなかったのかとランは頭を抱えた。しかもどんな魔法を使うかはこちら任せである。
流石に少し苛立ったランがイグニスの方を見ると、「ランくんなら楽勝楽勝」とでも言いたげにウインクをしてきた。
エルミーたちはといえば、「あんな分厚い壁、壊せるはずがない」と疑惑の視線。
その両方にランはさらにフラストレーションをためた。
あの壁には悪いが、メッタメタのボッコボコに壊してやろうと、頭の中で方法を考え、数秒後、1つの方法に辿り着いた。
ランは腰のベルトのホルダーに入れていた、ラン専用の黒い杖を取り出し、早口で術式を唱え、空へと飛んでいった。
地上には、空いた口が塞がらないエルミーら生徒、教師陣と、「どうするのかな〜、楽しみ〜」とただただ楽しそうにしているイグニスが取り残された。