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2度目の振り直し 魔力量

アルジャーシュの港は、ブルグラスの港の中で最も大きな港であり、他種族との貿易の窓口となっている。

漁業も盛んであり、水揚げ量はニュートラル大陸一である。その海産物は他種族との交易品としても人気で、今回訪れているエルフ族の定期貿易船においても例外ではない。もちろん既に用意してある交易品にもアルジャーシュの港で取れた海産物は含まれているだろうが、船員たちが各自自由に参加する明日の港の競りでは、エルフ族vs人族の激しい攻防が見られることだろう。


ちなみに、エルフ族が持ってくる交易品は、化粧品や香辛料、魔法具などがある。特に化粧品と魔法具は、エルフ族の職人が魔法を付与しており、ニュートラル大陸にあるものより効果が高いとされている。値段も張るので、一般市民には出回りにくいが、富裕層に大層人気であるらしい。


ランは、図書館の本で読んだ、それらの知識を頭の中で復習しながら、エルフ族の男2人とセレスの4人で歩いていた。

道中、エルフ族の男たちは、スペイシア、アルファドと名乗り、魔力鑑定を再度行ってくれるエルフについて教えてくれた。


曰く、エルフ族の一部族長の娘であること。

曰く、人族でなら18才ぐらいであること。

曰く、年若くして魔法の才に溢れ、エルフ族の中でも指折りの使い手であること。

曰く、今回初めて、ニュートラル大陸に来たとのこと。

曰く、他種族との交流を強く望んでいるとのこと。etc…


スペイシアとアルファドは、港につくまで、そのエルフについて熱く語ってくれた。

よほど人気と人望があるのだろう。2人の話から、そのエルフについて悪印象を抱かさせるエピソードは1つもあがらなかった。

親の七光ではない、本当の才女なのであろう。

ランは幾ばくかの期待に胸を膨らませ、港までの残りわずかな道のりも2人の熱弁に耳を傾けるのであった。


しばらくして、スペイシア、アルファド、セレス、そしてランは港に到着した。

船着き場の方では、荷卸が一段落したのであろう。船員らしきエルフ族数人と、港の管理者らしきスーツを来た男、見るからに漁師であるという風体の男数人で談笑しているところであった。

その中にいたエルフ族の1人がこちらに気づき、声をかけてきた。


「スペイシア、アルファド、もう戻ったのか。今夜行く美味そうな酒屋は見つかったのか?」


どうやら、スペイシアとアルファドは仕事終わりに行く酒屋を探しに街の方へ来ていたようだ。


「いや、酒屋探しはひとまず中断だ。ちょっとイグニスさんに魔力鑑定してもらいたい子供がいてな。連れてきたんだ」


とスペイシアが返した。


「イグニスさんに?スペイシア、お前だって魔力鑑定は出来るだろう。なんでわざわざイグニスさんにやってもらうんだ」

「それが…俺の魔力鑑定が悪いのか、この子の魔力量がよく分からないんだ。今回来ている中だと、イグニスさんが1番の魔力鑑定の精度がいいだろう。だからお願いしようと思うんだが…今どこにいるか分かるか?」


スペイシアがそう訪ねた時、ランたちの後ろから、誰かが走ってくる気配がした。ランが振り返ると、目の前に、エルフ族の女性か座り込んで、ランの顔をじーと見つめていた。

流石のランもびっくりし、目を見開く。

そんなランをエルフの女性はギュッと抱きしめた。


「ん〜!何、この子!凄く可愛いんだけど!」


背丈は170cmぐらい、他のエルフと同じサラサラの金髪は腰まで伸びており、これまた顔は美形である。ただ、まだエルフ族の中でも若いほうなのか、顔には幼さが残っていた。


「イグニスさん、ちょうど探していたところでした。実は…」


スペイシアはエルフ族の女性…イグニスにことの顛末を話し始めた。その間もランはイグニスに抱きしめられ続け、どういう雰囲気になっているか把握出来なかったが。


「へー。そういうことなら私が見てあげるよ。坊や、お名前は?」


ランはイグニスにそう尋ねられ、名前を教えた。

イグニスは「ランくんね〜、分かった〜」と頷くと、手をランの顔の前にかざして、呪文を唱えた。スペイシアが鑑定した時に出た霧のようなものはイグニスから発生せず、薄い光がランの顔を覆うだけであった。

しばらくするとイグニスは「むむむ!」とうなり、続いて「フムフム」「なるほどなるほど」と頷き、ランの顔の前にかざしていた手を頭の上に移動させた。

まだ、何かあるのかと思ったら、イグニスはランの頭がを撫でて「君、すごいね!」といきなり褒めてきた。

そして、辺りを見渡し、その視線がセレスのところで止まった。


「あなたが、ランくんのお母さん?」


いきなり話しかけられてびっくりしたのであろう。

セレスは、「はい!そうですけど…」と珍しく緊張気味に応えた。

イグニスは、ランの頭を撫で続けながら、言葉を続けた。

その言葉は、2回目のステータス振り直しが成功したことを意味していた。


「この子、すごいですよ!人族とは思えない魔力量!エルフ族でもこれまでの魔力量はなかなかいませんよ!私よりはちょーと少ないけど、頑張り次第で凄い魔法使いになるかもですよ!」

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