43 告白
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12日の更新は夜になります(*´-`)
「……ん……」
言葉にし難い安心感に包まれて目が覚める。
ふと視線をずらして部屋の掛け時計を見ると22時を回っていた。
視界の中に黒いものが見える……とゆっくり頭を動かしていくと、自分の顔のすぐ傍で悠真が寝息を立てていた。
「悠真……、ずっと付いててくれたの……?」
思わず声に出す。
頭の上には悠真の大きい温かい手が置かれ、左手はぎゅっと握りしめられていた。
自分はなんて幸せ者なのだろう……と思った。
もう十分じゃない……そう言い聞かせてみる。
でも、心は悠真を独り占めしたくて、ずっと自分の方だけを見て欲しくて……。
好きだって伝えたら、兄妹のような関係すらも壊れてしまうかもしれない……
これまでの関係に二度と戻ることはできないんだ……そう思ったら、告白をしようと決意を固めた今になって尻込みしてしまう。
名残惜しさからか、悠真の寝顔をじっと見つめていると、今までの愛情に溢れた日々が記憶の中で鮮明に浮かび上がってくるようだ。
全てを失ってしまうかもしれないけれど……
目が覚めたら、ちゃんと伝えよう。
悠真のことが大好きだって。
体を起こし、悠真の髪を優しくなでた。
愛おしすぎて、涙が溢れた。
ぽとりと悠真の頬に零れ落ち、瞼がピクリと動く。
「……陽菜……? 具合……大丈夫か……?」
心配そうに覗き込んんだ悠真は私の涙に気づき、何も言わずにそっと拭う。
静かな時が流れる中、悠真は真剣な表情でずっと私から視線を外さない。
もう、今しかないと思った。
「……悠真……」
止まった時間を再び動かし、名前を呼んだ。
彼の吸い込まれそうな瞳を見つめると、鼓動が全速力で高鳴りだす。
「ん……?」
悠真の陽だまりのように暖かく包み込む視線に私は寄りかかりながら、口を開こうとした時だった。
ガラリと真剣な表情に変わった悠真。
「陽菜……」
突然、私の視線を力強くギュッと掴む。
固く静かな沈黙がしばらく流れ、ぎこちなく息を吸い込んだ悠真は、ゆっくりと口を開いた。
「好きだ……。もう……我慢できない」
「……悠真……??」
私は一生聞くことなどないだろうと思っていた言葉が優しく耳に触れ、何度も頭の中でこだました。
「陽菜がどんなに海斗のことを好きだって……もういいんだ。俺が陽菜を好きな気持ちはどんなに努力しても、消せないことに気づいたから……」
無意識に湧き上がり、頬を伝い流れ出す涙の温かさを感じて、今が夢じゃないと知る。
自分が伝えようと思っていた想い……、悠真も同じ気持ちでいてくれたことが嬉しすぎて、次第に震えに変わっていく。
とにかく早く自分の気持ちも伝えたい、伝えなきゃ……!!
それ一心なのに頭の中の整理がつけられない。
「……悠真……ごめんなさい……。私自分の事ばっかり考えてた……」
私の言葉を聞いて、悠真の顔が一瞬不安の色に変わる。
「悠真の事好きな気持ちから海斗に逃げて……。海斗も悠真もどっちも傷つけて……」
泣きすぎて上手くしゃべれないよ……
「……陽菜……? もう一度言って??」
悠真は一気に目を真っ赤にして、私を覗き込みながら肩を強く掴む。
「悠真の事ずっとずっと大好きだったの……」
一生懸命に呼吸を整えようとするけどうまくいかないよ……
「でも悠真には星宮先輩がいて……、だんだん私の入る隙間がなくなって、悠真の事忘れるために海斗に逃げて……最低なの!」
声が震えて……ちゃんと伝わってるかな……?
ぐしゃぐしゃの顔を見られたくなくて、両手で必死に涙を拭っていた時だった。
高速で動いた視界の先で待っていた、逞しい悠真の胸に包み込まれる。
「……ホントバカだな……。朱莉先輩は尊敬してるけどそんなんじゃない。陽菜への気持ちとは比べ物にならない」
夢じゃ……ないよね……?
頬を心臓に当てると、ドクドクと流れの速い悠真の鼓動が、私の身体に幸せを乗せて流れ込んでくる。
私は悠真の胸の中で、張り詰めていた緊張が安堵に変わり、うんうんと何度も頷いた。
「陽菜……、こっち向いて……?」
悠真は見上げる私の髪に指を滑り込ませた。
ゆっくりと近づいてきた悠真の顔に、今度こそ私は身を委ねる。
そっと触れ合った唇からお互いを感じ合い、引きあう様に深く深く重ねていった。
大好きな人にしてもらうキスは、こんなにも相手の心の中にある自分への愛情に触れることができるんだと体の芯まで沁みる思いだった。
そして、私が悠真を想う気持ちも唇を通じてきっと伝わっているよね……?
いつまでたっても離れられない。
何年分の想いが二人の間を行き来する。
微かに頬にかかる悠真の呼吸が擽ったくて、あぁ、夢ではないんだと思った。
離れていく唇から引き継ぐように、視線を絡ませる。
「悠真……。どうしよう、私一生悠真の事しかきっと好きになれないよ」
この幸せが永遠であればいいのに……そう願う。
「じゃあ……、ずっとずっと一緒に居よう。何年経っても、何十年経っても」
にっこり笑って、私を抱き寄せた。




