秋時雨
『秋の夜長の歌会』出品作第二弾です。
仕事を終えて気の合う仲間たちと鍋をつつきながら雑談の花が咲く。
上司の悪口や同僚の色恋沙汰など、ボクにとってはどうでもいい話で盛り上がる。
そろそろ電車の時間が気になり始める頃、誰からともなくお開きにしようと店を出た。
賑やかな飲み会ではあったのだけれど、ボクは静かなところで飲み直したくなった。
控えめなネオンに誘われて、ふと立ち寄ったバーのカウンター席でカクテルグラスを口に運ぶ。
隣に座っていた女性客と目が合う。
特に会話を交わすこともなく、グラスを空けたボクは店を出た。
雨が降っていた。
店の軒下でどうしたもんか悩んでいると、先ほどの彼女が出て来た。
「イヤだ、雨」
「雨ですね」
軒下で
肩を並べる
秋時雨
この後、二人はどうなったのか…。
それは二人だけの秘密。