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07話 「やばいと思ったが性欲を抑えきれなかった」

ー宇宙空母ヴィズィオネーア 自室


 宇宙空間に朝などと言う概念はないが、時間はヴィズィオネーア内で管理されており、光量の調整が行われていた。


 朝、薫は身体が激しい”衝撃”を感じ、驚いて飛び起きる。

 ”衝撃”の正体は”粒子ベッド”の目覚まし機能による、”ウェーブ”だった。”粒子ベッド”はタイマーセットでき、セットした時間になるとベッド全体が動き出し”ウェーブ”して起こしてくれるのだ。


 そしてそれとほぼ同時に”メイド服姿”のノインが入って来る。


「おはようございます、”ご主人様”。

 ”粒子ベッド”のご加減は如何ですか?」


「ちょっと驚きましたが、とても気持ち良かったです!

 それより、どうしたんですか...その格好?それにご主人様と言うのは?」


「昨日は失礼致しました。私は薫様専用のメイドだと言うのにあの様な格好を...地球の礼儀作法の理解が不十分でした。

 本日からは薫様に合わせた”日本”の礼儀作法及び適切な装いにてメイドを務めさせて頂きます。

 それともこういった格好はお嫌いでしょうか...?」


 ノインは少し悲しそうに問いかける。


「嫌いなんてとんでもないっ!とてもよく似合ってますよ!」


 (確かに”日本”の礼儀作法?なのかも知れないけど、かなり偏った”日本”の知識な気が...。)


 ”ロボットメイドにメイド服”そんな夢にまで見た王道を、機械娘好きの薫が嫌う訳が無かった。

 むしろ大好物だった。


「そうですか。それは安心しました。

 それでは朝食の後、本日は座学が御座いますので、学習ルームの案内をさせて頂きます。」


 ノインは顔を綻ばせながら、今日のスケジュールを薫に伝えた。





ー宇宙空母ヴィズィオネーア 学習ルーム


 薫はノインに連れられ、学習ルームへとやって来た。


「あなたが薫君?

 私は演算能力特化型ガイノイドA2-0301-OR5、専門は研究職員で兼任で講師をやってる。

 特技は演算による暗号解読。私に突破出来ないRSA暗号はない。よろしく。」


 赤いショートヘアーの小柄な白衣を纏った少女は、薫を見て淡々と自己紹介をする。


 ”人間”の講師だったら若干引きそうな自己紹介だが、ヴィズィオネーアに来てからあまりロボロボした女の子と遭遇していない薫は、彼女の”ロボさ”を見て少し興奮していた。

 

「よ、よろしくお願いします!」


「先ずは私に”ニックネーム”を付けて。」


「ミレイ...とかどうですか?」


 ここまでの人造人間(ガイノイド)のパターンで、薫は自己紹介を受けた時からニックネームを考えていた。


「中々の演算速度。恐れ入った。

 うん、それでいい。

 じゃあ、授業を始める。」


 授業は黒板とチョークを使ったもので、地球でも馴染みある形式だった。

 この様に敢えて古い人類の文化を使う事は、”クラシック”と呼ばれ、人造人間(ガイノイド)の間で流行っていたのであった。




 暫くヴィズィオネーアの全体的な話から、戦争の歴史、そしてガイノイドの話へとさしかかっていった。


人造人間(ガイノイド)には戦闘能力特化型、指揮能力特化型、演算能力特化型、家事能力特化型、医療特化型、そして特別任務用にオーダーメイドされる特型の6種類が存在する。

 その中で戦闘能力特化型ガイノイドは、人型機動兵器メッサーのGに耐える為に、内部に強化骨格が入っている。

 ここで問題。この事による”繁殖活動”への影響は、どんな事が考えられる?」


 いきなりの”繁殖活動”についての質問で、薫は戸惑う。


「え、えっと...強化骨格って事は...体重が増加する...ですか?」


「確かに約1.5倍になる。だけど、答えになってない。

 体重が増えるとどう”繁殖活動”に影響が出るの?」


 ミレイは続けて質問責めにする。


「お、女の子なので気遣ってあげないといけません...!デリカシーとか...!」


 薫が何とか躱そうとする。

 だが、ミレイは許さない。


「どう気遣うの?”繁殖活動”と言う言葉を使って、正確に。」


「えっ...?”繁殖活動”をする時の...姿勢に...気を配ったり...。」

 

 薫が顔を赤らめながら小さく答える。


「どういう姿勢で?

 先生を戦闘能力特化型ガイノイドと思って実演して。」


 そう言ってミレイが近付いて、薫の机の上に腰掛ける。


 (えぇ...!何だこれ!?もう何かおかしいよね?コレ逆セクハラなんじゃ...。でもこの子無表情で何考えてるか分からないし、ツッコミにくいよ...。)


「出来ないの?だったら先生が...」


 ミレイはそう言うと薫の腰に手を回して、机から薫の腰に滑り落ちる。

 対面座位の様な姿勢になり、薫は顔を真っ赤にする。

 ミレイは想像通り軽かったが、問題は座っている位置だった。ミレイは今、薫のモノ(・・)の上に座っているのだ。


「こう?」


 そう言ってミレイは身体を揺する。

 すると薫のモノは刺激を受け、ミレイを押し上げる。


「いや...あの...ミレイさん...?

 その...色々当たって...るんですが...!」


「あててる。」


 薫の必死の抗弁もミレイにより却下される。


「いや...あの...本当まずいので...。」


 そう言って薫はミレイの肩に手をあてて引き剥がそうとする。

 

「何がまずい?」


 しかし、ミレイは縮こまって薫の手を躱し、薫に抱きつき、足を薫の座っている椅子に巻く。

 所謂だいしゅきホールドの形に持っていかれてしまい、薫は完全にロックされてしまう。


 (ちょっ...力強っ...!)


 それもその筈である。本気を出したミレイは薫の3倍程度の力を持っていたのだ。

 薫に抜け出す術は無かった。




 そして、薫が諦めてなすがままになっていると、突然学習ルームの扉が勢いよく開く。


「A2-0301!何をやっているんですか!?」


 それは珍しく慌てた様子のノインだった。


「やばいと思ったが性欲を抑えきれなかった。」


 (何か性犯罪者見たいな事を言い出した!)




 その後、ノイン監修の元授業が再開され、薫は”無事に”座学を終える。

 そして、薫は今初めて”ボディガードの必要性”を感じ、安心した様な、ちょっと残念な様な、そんな気持ちで学習ルームを出るのであった。


 次回は明日投稿予定です。

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