ナンパの成果
北刷毛山駅前では1時間がんばっただろうか。計6回のチャンスが到来して、全滅。このころになると俺はもう疲労困憊、くたくたに疲れ果てていた。
地域に響く夕方5時の時報チャイムを聞いて、ついに音を上げた。
店じまいだ店じまい!
そんな都合よくいくはずなかった――!
意気込んでいただけに、ゼロという結果は無念に思ったし、ちょっとイヤかなり、悔しくも感じた。
自ら導き出した“式”に、その素人たる自らが導いたという点をもって、式の正しさに疑問を抱いたりした。
花壇のブロックに腰を下ろした。座るとドッとばかりに疲労が覆い被さる。
「あーあー……」
ヤケぎみなため息だ。
頑張れば報われるというけどさ。
頑張ったって報われないんだよ。頑張んなきゃ、そもそも報われるチャンスがない、というけどさ。
チャンスがあるんなら、頑張りなんか関係ないんだよ。
神様はこういってるぜ? 人間、あきらめが肝心だ、と──
いやウソだけどさ。
ちょっとフザけんとやってられん精神のくたびれ具合だった。
「……」
明日はどうしようか、とぼんやり思った。
額に手をやる。休憩したおかげで疲労感も幾分うすれ、少し落ち着く。すると、意識の隙間から、ころりと、一つの反省点がまろび出たのだった。
母数が少ない、という事実だ。
今日、頑張ったとはいえ、数にしたら20人(組)。さらに、そのうち半数が対象外のアダルトだった。つまり、有効数はたったの10人だったのだ。これで効果に疑いを持っちゃあ、せっかく導き出した式が泣く。可哀想というものだ。せめて1000人は試したい──
「……」
いや、すまん、100人で……。コホン、咳払い。
「……」
また、一ヶ所で長時間ねばるのもまずいよな。今日のように警戒され、こちらの顔を憶えられて、今後に悪影響があるように思える。こまめに場所を替え、つねにフレッシュな環境を保つべきだろう。
あとは、時間帯もだろう。本来なら、金がらみのナンパは、いまからの時間の方がより相応しいのだろうと思う。だけど、俺の場合は家に帰ってお袋のメシを食わんとならんし。善良なる青少年としては無茶できない。この点に関しては、幸い連休、祝日だから、昼の時間帯でもよしとできる。今日みたいにそこそこ数が見込めるだろう──
そんなこんなを反省し、ようやく。やれやれと、腰を上げたのだった。
「帰ろう……」
つい気が緩み、声に出してしまった。
──ところがだ。
ヒロインが最後に登場して、それまでヒーローが積み重ねた全てをかっさらう。そんなマンガのような展開が、このあと俺を待っていた。