遊園地デート
そして午後1時。俺たち二人は、刷毛山遊園地、その大観覧車のハコの中にいたってわけさ。いやもう、難なくカンタンに行き過ぎて、笑っちゃうしかない。
俺と陽菜、顔を血色よく上気させている。なぜなら、所謂ひとつの犯罪を、協力してやり遂げてしまったのだから。
その戦利品が、今。俺の手のひらに転がっていて。
しいたけ爺さんの、一本毛だった。
ついにやったのだ!
場所はここ、刷毛山遊園地。けっして小さくはない、されど巨大でもない都市の、それに見合った規模の遊園地。目玉はこの一周20分の大観覧車だけって遊園地。この遊園地を、リストの中に見つけたときの俺の心を察してくださいってもんだ、うっふっふ!
さっそく陽菜を誘い、入園。銅像を確認。あとは、古典的手法を繰り出すだけだった。
陽菜に、数十個もの風船を持たせ、目立つように歩かせる。
けつまずいたフリして、手を放つ。あーっという声をSEにして、空に舞い上がる、色とりどりの風船の群れ。
誰もが目を奪われたその瞬間に――
俺は――伝家のワザを発揮したってわけ。
あとは、二人別々に行動し、さきほど。ここの待ち行列にて落ち合った、てわけである。
「凄い!」
感極まって陽菜が叫ぶ。目の色が違う。彼女の心の中には、すでに一流エージェントと化した自分がいて、それが甘く自我をくすぐっているのだろう。
「フフン!」
それはこちらも同様で、どうかすると自己陶酔の海に溺れそうになるのがいかんともしがたい、ニヤケ顔。
そして、ああ――!
ここは。
そんな蜜の空気が充満するハコの中だったんである。
二人してワルいコトしたんだという共通意識。
大観覧車という高くて揺れる、吊り橋効果。
小さな個室に二人して体を密着させて座っていて。
気づいてみれば、誰に遠慮することあろう、自分たちは、ダンナとメカケという間柄。
陽菜が、とろんとロマンチックな目線をくれてきている。そして俺は、昨夜でレッスン済みだった。
ここは多少強引に行ってよし! むしろ行け!
ぐいと柔らかい体を抱き寄せて――くちびるを重ねた。
もうね、心臓がすごくて、破れるんじゃないかってホドだったよ!
いったん離れたものの、お互いに顔を見れないほど真っ赤で。でもすぐに。
またキスした。むさぼるように。そして俺の手は、急くように陽菜の体を這い回り――
もう今日は。
最後まで行く!
ヤリとげる!
そんなダイヤモンドのごとき固い決意のもとに、小娘らしいワンピースの裾の中に、手を滑らしたのだった――そのときだ。
そのときだった。
どこからか。
どこからか。
場違いなほど、荘厳なシンフォニーが、鳴りだしたんである。
……これ知ってる。映画、“グレイトファーザー”のテーマ曲だ。
音楽の出どころは、陽菜のスマホ――
がばっと、彼女が身をはがした。その顔は、目がまん丸、驚きの色に染まっていて。
メールだろう、それも大事な。画面を噛むように読む陽菜の顔が、それこそみるみるうちに歓喜の輝きに満ちてくる――
ああ……。
俺は額に手をやる。
ほとんど確信的に、勘が働いた。これは――
少なくとも今日は、いやおそらくは、このあと連休中は――
ヤれんだろうな……。




