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僕(私)と彼女  作者: 日比谷計五
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プロローグ【微熱と葛藤】

 高校一年生、5月の連休前のとある日の放課後。

 帰省の予定を立てている人もいれば、部活に行く準備をしている人もいる。

 私はどちらでもなく、同じく生徒会の会計である同学年も風見有紗かざみありささんに相談をしています。その内容というのも、


「男性から女性に性転換をした人って、有紗さんはどう思いますか?」


 他人が体験したことを話している、というような話し方ですが、これは私、真田裕香さなだゆうかの体験談。つまり、私は去年の夏まで男の子でした。

 このことはまだクラスの誰にも打ち明けていません。でも、なぜでしょうか。出会って一ヶ月にも満たない、他のみんなと条件はさほど変わらないであろう彼女に話してみたい、受け入れてもらいたい。そんな気持ちがいつの間にか芽生えていて。


 そして今日、私は勇気を出して有紗さんに相談がある、と言ってこの場を設けさせてもらっています。幸い今日は、生徒会は仕事もないためお休みです。他の誰もここに来ることはないでしょう。


 ですが、さすがに予想していた相談内容とは全く違ったようで彼女も驚いているようです。無理もありません。

 この話題はまだ早すぎたかしら。そう思って、この生徒会室に漂う形容のしがたい雰囲気をかき消そうと代わりになるような話題を考えます。


「私は、その人を尊敬するわ」


「へっ?」


 ウンウンと思考を巡らせていたところに有紗さんから言葉が返ってきて、他所を向いていた視線を有紗さんへと焦点を合わせると、彼女は柔らかい笑みを浮かべて私を見ています。

 あぁ、有紗さんの声もそうだけど、顔も、髪もスタイルも、相変わらず全てが綺麗で羨ましい。それに比べて私は素っ頓狂な声を上げちゃってみっともない。すぐに挽回しなければなりません。


「尊敬する、ですか。……そう思った理由を聞いてもいいでしょうか?」


「だって、その人は自身が抱えている悩みと真っ向から向き合ったんでしょ?悩みぬくことって、とても大変で、とても辛いことだと思うもの。それでも逃げ出さずに、きちんと答えを出したその人は凄いと思う」


 ……その答えは、ずるい。私がずっと誰かに言ってほしかった言葉を、今一番言ってほしかったあなたから聞けるなんて。

 悲しかったこと、辛かったこと全てがあなたのおかげで報われた気がします。


 この言葉を聞いた瞬間、私の顔が熱くなって、鼓動が速くなっていくのを感じます。

 それと同時に、彼女に抱いていた感情がいったい何なのか、ようやくわかったのです。


 私は、彼女に、恋をしているのだと。


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