普段からの感謝
俺は尾崎悠希今年の春から高校1年になったただのメガネのオタクだ
俺は今まで恋愛なんてものには縁が無かった
中学生の頃オタクというステータスを周りに知られてからは中学のやつらは誰も寄り付かなくなっていた
最終的には先生にまで少し避けられていた感じもした
俺はそんな事があってろくに友達も多い訳ではなかった
でもオタクというステータスも認めてくれて、仲良くしてくれる、そんな親友がいた
荒川誠人、それはイケメンで学校のアイドルの様なもので関わりにくい存在でもあった
それでものけものにされている俺に誠人は手を差し伸べてくれた
俺も誠人にすごく助けられたと思っている
俺は中学の頃誠人のみんなからの好感度を下げないためにもこっそり会っていた
俺は誠人には非の打ち所がないと思っていたけど
少し女子に自分の学力をバカにされた時は俺に泣きついて来たこともあったっけな
意外とあぁ見えて好きな人の前では情けなかったり、メンタルが弱かったりすんだよな
そして俺は今誠人と同じ高校にいる
どちらかと言えば中学と逆で俺が誠人を助けてる事が多いかな
すごく話がズレたが俺の生活はこの高校生活で変わった
もし俺を中学で避けてたやつらに今の俺を見せたら相当驚くと思うな
俺は今まさにリア充!そう!リアルに充実した人生を送っているのだ!
「おい、尾崎早くしろ」
俺は誰かに呼ばれている
「ふぇ?」
「なぁに腑抜けた声を出している、78ページの5行目を読みなさい」
あ、やべ、完成に俺、回想に浸ってたわ
そういや今って授業中だったな…
俺はすばやく文を読み席に座った
「悠くん?大丈夫?寝不足なの?」
横から小さく声を掛けてきたのは水川恵、今は俺の彼女だ
「いいや、そんなんじゃないぜ、大丈夫だ心配してくれてありがとな」
俺は小声で自分の彼女に礼をした
恵は俺と同じ部活、文芸部に所属している
少し天然の所があって心配になる事が多い
俺の人生を少し、いや大きく変えさせてくれた大切な人だ
俺は初めて"好き"という感情を持った
普通なら小学生とかであるかもだが俺はそんなんじゃ無かった
恵はまるで幼馴染みの様ですごく馴染みやすかった
こんな無愛想な俺に「一緒に帰ろ」そう言ってくれた
俺はもう恵に感謝しかないな
もちろん文芸部のみんなも大切な仲間達だ
りみ先輩なんかは最近俺の親友、誠人とイイ感じな雰囲気だしな
俺の内心は「早く付き合え、このラブ充」なんだが
俺はまだ始まって間もない高校生活でいろんな事を知れた、すごく嬉しくって楽しかったな
俺はそんなまだ短い高校生活を回想しながら授業を無視して過ごしてしまった
放課後俺は恵と一緒に部活に向かっていた
「悠くん大丈夫〜?今日の授業全然聞いてなかった感じしたよ?重要な内容だったよ〜」
恵は俺の横から俺の瞳を覗き込んでくる
「そ、そうなのか…まぁ分からなくなったらまた恵教えてくれな」
俺は頭を少し掻きながら答えた
「学力学年順位1桁の私にお任せだよ〜えへへ」
そう言って恵は天使のような微笑みを俺にした
そんな事を話している内に部室に着いた
「「こんにちはー」」
俺と恵は声を合わせて言った
「お、仲良しカップルさんたちがきたねー」
りみ先輩はいつも通りのからかいだ
「だから付き合ってませんって」
まだ俺は誠人以外には付き合っていることを話していない
俺達の行動からして付き合ってるって思われても仕方ないんだけどな…
正直俺はりみ先輩と誠人が付き合ってるのかが気になるとこだがな
文芸部は特に活動する事無く、どちらかと言えば雑談部的なものだ
俺はそのアットホームな雰囲気がすごく好きなんだがな
そしていつも通り雑談をして部活を終えた
その日恵と俺は一緒に帰っていた
「もうそろそろ夏休みかぁー楽しみだなー」
俺は頭の後ろで手を組みそう言った
「そうだね〜夏休みには新入部員歓迎会もあるからね〜」
「泊まりだろ?晴れてくれれば綺麗に星とかも見れるんじゃねぇか?山奥だし」
「そうだね、あのさ…もし晴れたら一緒に星見ない?」
恵は少し顔を赤くして恥ずかしそうに聞いてきた
「ん?俺は元々そのつもりだぞ?」
「良かった…」
恵はホッとしていた
「悠くんって夏休み中忙しかったりするの?」
「いやぁ、特にこれと言った用は無いかな」
俺は何気なく答えた
「ほんと?あの花火とか一緒に見に行かない?」
おぉ、花火か…カップルの定番みたいなやつなんじゃないか?よく分からんが
「いいな!花火!行こうぜ!」
いやぁ彼女からデートの誘いされるとか本当に嬉しいわ…やべぇ、夏休み楽しみすぎるんだけど!
そこからまた雑談をして俺と恵はいつもの別れ道で別れた(帰り道的な別れで振られた訳ではない)
その後は家に帰り恵と電話をしている
帰り道や学校だけじゃ恵と話足りないんだよな
いつもの電話で恵の色々なことを知ることが出来る
驚くこともあるし、おもしろいこともある
俺は恵のことを知れてまた好きになれるぜ
1学期最終日、俺は終業式で校長の話を聞いていた
「皆さん、新しい学年、新しいクラスでの2ヶ月どうでした?有意義に過ごせましたか?」
あぁ、はい、もう楽しさしか無かったぜ
この2ヶ月で俺はすごく変わることが出来たよ
今まで自分から変わろうとなんてしてこなかったしな
でも自分で変わったとも言い難いよな
周りのやつらに助けられたのかもな
もしこの高校生活で出会った人達と出会わなかったとしたら俺はどうなってたんだろうな
中学と変わらずクラスで浮いていて誠人に泣きついてたかもな
いい区切りだしあいつらにも感謝の言葉ぐらいしてやらなきゃな
そして終業式が終わり夏休みの課題がどっぷり出され俺は誠人と下校していた
1学期最終日なので昼頃に帰ることが出来た
「そうだよ!悠希久しぶりに遊ぼうぜ!」
誠人はケロッとした顔で言った
「いやお前夏休みの課題の量見たか…?あんなんで遊ぶ余裕無いだろ…」
俺は絶望しながら誠人に言った
「夏休みの課題?あぁ、ちょっと何のことか分かんないなぁ〜俺はサマーバケーションを楽しもうとしてるんだよ〜」
今にも失神しそうな勢いで誠人はフラついている
「誠人おおおおお!!戻ってこい!現実を見ろおおお!!」
俺は大声で叫び誠人の肩を揺すっている
「ぐっ…そんなことは知らない…夏休みの課題…俺はそんなもの…」
そこで俺は無理矢理にでも戻そうと誠人に平手打ちをした
「んな!?いってぇよ!?冗談なのにマジで殴るなよ!?」
誠人は平手打ちを食らった頬を撫でながら言った
「お前の冗談は付き合ってるのめんどいんだよ…」
俺は呆れた顔で誠人を睨んだ
「でも課題たって遊べはするだろ、お前だってどうせ恵さんとデートすんだろ?」
当たり前の様に平然と誠人は聞いてくる
「んな…!ま、まぁそうだがな…」
何こいつ平然と聞いてんの?また殴られたいわけ?それとも鈍すぎるの?
「お?先約があるのか?今日恵さんとデートなのか?」
耐えろ、耐えるんだ、こいつをまた殴ったら煽りが悪化しそうだ
そうだやり返せばいい
「それよりお前はりみ先輩とどうなったんだよ」
俺は無表情で聞いた
「がっ…!そその話題は…やめないか…?」
結構誠人は焦っている様子だった
「なんだ?振られたりでもしたのかな〜?誠人くん〜?」
よし、これで無理矢理にでも話題を変えるぞ!そして煽り返す!
「くっそ…!リア充め!調子に乗りやがって!振られてなんかいねぇよ!」
誠人は俺が煽ると対抗する様に言うがすぐ自分のことを話してしまう
まじでこいつチョロすぎかよ
「ほぉ…?振られてない?じゃあ告ったのかな〜?ほぉら、現リア充の俺に言ってみ?誠人くん〜相談あるなら言ってみ?」
これは完全に乗せることができたぜ
そう思ったのもつかの間、俺は誠人にヘッドロックされてしまった
「うぉあ…わ、分かったって!首締めるのは反則だろ!悪かったって!煽りすぎた!」
俺は半泣きで誠人に抵抗した
「お前だって殺す勢いでいつも殴ってくるだろうが!」
そう言って誠人は俺を離した
「あぁ…ごめんて…でも、真面目にりみ先輩とのことは聞いてやるぜ?」
まぁ俺も中学の時世話になったしなんかは助けになる事ぐらいしてやりてぇよな
「あぁ、まだ告ったりもしてないけど一緒に出かけたりはしてるよ」
お、意外とやるじゃんこっちは恵がガンガン予定組んでくれるからあんまり誘う必要が無いんだよな
「そのデートとかでりみ先輩はどうなんだ?脈ありか?」
「んな!まだ付き合ってもないんだからデートとか言うな!」
あ、やべ、やり過ぎるとまたヘッドロックされるからやめとこ
「まぁ順調って事だな…良かったじゃねぇか」
「お前何でそんな嬉しそうなんだよ…少しキモいぞ…」
俺は誠人に横目で睨まれた
「ハハハ、まぁ応援してるってことだよ、頑張れよな」
そこで誠人の恋愛相談は終わり、そのままいつも通り俺らは帰っていた