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096.白蛇様が見守る地で

 

「よっ!」


「そりゃ!」


 威勢よく掛け声と、それに続いて音が鳴り響く。

 そう広くない部屋というか建物を、その2つの音、そして火の燃える音が占領していた。

 時折、どこからか吹き込む風が熱を運び、俺達の肌を焼く。


「うわー」


『さすがよね』


 2人のつぶやきに、俺達が見学に来ている工房の主であるドワーフの男達が動きはそのままに、微笑んだ気がした。

 そう、俺達が今いるのは街のあちこちにあるドワーフの鍛冶場の1つだ。3つほどの炉、そして壁には多くの棚と、道具たち。

 あちこちに材料が詰まった木箱が転がっており、一見無造作ながら使いやすさを重視していることを感じさせる。

 熱を逃がしにくい構造をしているのか、ルリアは中に入るのを嫌がるぐらいではあったが……。


「見事な物だが、見せてもらってもよかったのか?」


 それが俺の正直な気持ちでもあった。

 秘匿、とまではいかないかもしれないが、鍛冶の技術という物は伝承と蓄積だ。

 そう他人に見せていいものではないとは思うのだが……。

 すると、ドワーフたちはにやりと笑い、自身の力こぶを叩いて見せた。


「なあに、ちょっと見ただけじゃ真似できねえのが鍛冶ってもんよ。

 それに、真似されたからといってどうにかなるもんでもねえ。同じ思いの仲間が増えるだけよ、なあ?」


「まったくだ。出来た物を見りゃわかる。こいつは良い奴かってな」


 思ったよりも豪快な返事に、自然と俺も頬が緩む。

 見学を続ける中、ふと気になる物があった。

 壁に立てかけてある、白蛇を模したであろう柱だ。上に向かって口を向け、まっすぐ伸びている。

 わざわざ白い塗料で塗っているのだから間違いはないと思う。


「なあ、これは?」


「んん? ああ、白蛇様の守り柱さ。これだけじゃなく、街中にあるぞ」


 言われて、ゆっくり思い出してみるとそういえば、こういのがあちこちにあった気がする。

 ほとんどが薄汚れていたから、気が付かなかったみたいだ。


「この前兄ちゃんたちが見つけてくれた像のおかげで白蛇様への祈りも増えると思う。

 そうすりゃ、いざという時の守りも完璧さ」


 そういって胸を張るドワーフによると、この柱にはちゃんと能力があるらしい。

 街を守るための大きな障壁。それがこの柱の能力だそうだ。

 正確には、こういった柱をあちこちに立てておくことで、一種の魔法陣と化して増幅する仕組みなのだそうだ。

 なんでも、白蛇様自身から術を授かたっというのだから一体どんな姿で降臨していたのかが気になる。


『ねえ、白蛇様って人型だったの? 最初は蛇だったの?』


「どうだろうなあ。大事な話だと大体人型だから、人型だと思うけどよ……。この大陸の歴史と同じぐらい昔の話だからな……」


 一体何年前のことか、わかるやつはいないだろうとのこと。

 そりゃそうだよな、そんな昔では……。

 一応、ドワーフ以外でも祈っていいらしいことは聞いているので、せっかくだからと脇に飾られていた小さな像に祈ってみることにした。

 特にお願いはなく、挨拶みたいなものだけどな。


 俺が片膝をつくと、何故だかミィ達も真似しだした。工房のドワーフたちも、俺達が祈るための準備をしたのを見て、見つけた物よりかなり小さい像へと向き直るのだった。

 若干びっくりしつつも祈りのために魔力を練りだす。さすがにアーケイオンと交信した時ほど遠くは無いと思いたいけど……。

 その願いは、半分当たり、半分外れた。


(つながった!? 速いな)


 あっさりと、それらしき何かの存在に祈りはつながったのがわかる。本当であればこの辺でお願い事を祈ったり、話をするように続けるのだが……。

 今回は、そこに至ることがなかなかできない。

 言うなれば、玄関についたのはいいけど、家自体が遠い、という感じだ。仕方がないので、もう少し魔力を練り上げて祈りを続ける。


 後で知ったのだが、白蛇様への祈りは皆で行うもので、一人で行うものではなかったらしい。

 そんなことは知らず、俺は他の神様と同じように一人で祈りを捧げてしまう。

 結果として、注ぎ過ぎじゃないか?と自分でも思うほどに魔力を注いだ祈りの果てに、白蛇様を感じた。


(なんという……)


 その姿に、俺は目を開くこともなく驚愕していた。

 実在は疑っていなかったが、明らかに大きかった。

 なんと、白蛇様自身はこのパラケラン大陸そのものとほぼ同じ大きさを誇り、地下にいるというのだ。

 この大きさと比べたら、溶岩竜だって大岩と砂粒のような物。


(ああ……だからか)


 俺はあることを直感し、そしてそれは正しいのだと思う。白蛇様が、この世界に降臨……昇ってくるから逆か。

 ともあれ、出てくるためにはその大きさをなんとかしないといけないのだと。

 だからこその、人型。分身とは少し違う形で、力を使おうとしたんだと思う。

 横に逸れ始めた意識を元に戻し、白蛇様に思念を送る。

 よかったらドワーフを笑顔にしたいのでいざとなったら力を貸してくださいね、と。


 瞬間、俺は自分がどこか知らない場所に浮いているかのような感じを受けた。

 地面も何もない、うつろな空間。上下すらわからない感覚に焦りを覚えるが、どこか安心した気持ちもあった。

 ここが、神の領域だと感じていたのだ。

 俺を丸呑みにしても余りそうな口を開けて、白蛇様らしきものが足元の方向から迫ってくる。

 なぜかそれを避けようともせず、俺は受け入れた。

 衝撃もなく、通り過ぎていく白蛇様。しかし、確かな意志を感じた。


(任せておけ)


 色々考えて、それだけを心でつぶやいて俺はその空間からどこかへと浮き上がるようにして浮上していった。

 気が付けば、祈りの姿勢からみんな変わっていない。俺だけが、あの変な場所で白蛇様に出会ったのだろうか。


「お兄ちゃん、何かいなかった? 白っぽいの。ぐわーって感じでこっちに来た気がするの」


『たぶんあれが白蛇様なんじゃないかしら』


「大きかった……」


 と思いきや3人も違いはあれど見えたようだ。

 それぞれの感想を聞きながら、少しほんわかとした空気になった時の事。騒々しい足音が外から近付いてくる。

 その足音の主は工房の前にやってくると、そのままの勢いで飛び込んできた。

 随分と走り回っていたのか、汗だくなドワーフの男だ。


「どうした?」


「はぁはぁ……大変だ、またウィンスの奴がいなくなった!」


「なんだと、またか!」


 ドワーフたちは呆れたような、怒ったような、そんな表情だ。一体何が……誰かがいなくなったようだが。


「ああ、ウィンスっていう若いドワーフがいるんだが、こいつが研究熱心というか、伝言を聞かずに走っていくやつというか、要は朝起きたら研究のために外に出て帰ってこない、ってのが多いんだ。

 危ないからしばらく家にいろって言ってあっても無駄」


「そうそう。探し回った挙句に、家の裏にいたりするめんどくさい奴なんだ」


 つまるところ、そういうことらしかった。一応探すか、とドワーフたちが話してるところを見ると、そう悪い奴ってことではないらしい。


「それでよく生きてるな?」


 本心から、そう思った。

 外には魔物だっているし、地形的にも危ない場所は多そうなのだが……。


「運が良いのか悪いのか、こけて穴の中で気絶してたり、まあ色々だな。

 発見も多いから放っておけなくって……よし、行くぞ!」


 揃って駆け出すドワーフたち。後ろを見ればミィ達はしっかりと頷いている。

 そうだよな、俺達はこういう時に首を突っ込むのがいつものことだよな。


「ちょっと待った! 俺達も行く。手が多い方が良いだろう?」


「……助かる!」


 色々と考えることがあったのだろうけど、頷いたドワーフに従って俺達は外へと駆けだした。






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リクエスト的にこんなシチュ良いよね!とかは

R18じゃないようになっていれば……何とか考えます。

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