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049.住人曰く「やることがあるというのは幸せなことである」

 

「カーラ、ちょこっとだけ吹いてくれ」


『ガウ』


 俺の合図とともに、目の前に火の槍が突き刺さる。

 かなり手加減に手加減を重ねた、カーラのドラゴンブレスだ。

 それは職人の待ち構えている作業場へと降り注ぎ、狙い通りに魔鉄となる物を加熱し始めた。


「おお……あっという間に溶けおる。素晴らしいな」


 いつもなら、汗だくになりながら炭を燃やし、魔法の炎も足しての作業だ。

 それが見る間に溶けていくのだから感動的と言える。

 俺が合図として手をあげると、ブレスはピタッと止まる。


「よし、これをこうして……ふんっ」


 そして赤くなった魔鉄が職人の手で素早く形作られ、鍛える音が建物に響きわたる。

 何度目かのブレスの後、魔鉄の地金が出来上がる。確かに元々と比べると何か、気配が違う。


「実験はこれで終了じゃな。竜よ、感謝するぞ」


「終わりだってさ。またよろしくな」


『ガウガウ!』


 まったねーと陽気な感情を魔法で伝えつつ、カーラが去って行く。

 ちなみにカーラが顔を突っ込んでいたのは屋根だ。元々そこは穴が開いてしまっていたのをカーラが顔を突っ込めるようにしているのだ。

 普段は雨が張ってこないように皮を張るし、いつもの作業場所は別の場所。

 ここはカーラの協力の下で作業をするための特別な場所なのだ。

 なのでカーラが大きくなっても大丈夫なように街の端にある。さて、実験の結果だが……。


「思ったより良好じゃな。何度もブレスをもらわなくても結果は変わらんようじゃ」


 見てみいと手渡された地金からは明らかに火の力を感じる。

 これで武具を作れば防具であれば火に強く、武器であれば本人の気合と共に魔力を消費して火の力が纏えそうだ。


「杖の軸にしたら魔法の媒体になりそうか?」


「そうじゃな……祈りやすくはなるじゃろうな。杖と行かなくても手に持てるぐらいの小さいのでも十分かもしれん」


 魔法は海辺や砂漠、山の中、空に浮いているとき、といった状況によって祈りの難易度というか、魔法への結びつきが変わってくる。

 火山で氷の魔法を使おうとしても神様まで届かない魔法使いだっていると思う。

 まあ、俺は……強引に魔力で道を作って呼びかけたり、中には駆けつけてくれる神様もいそうだけど。


 なんだったかな、勇者や魔王の魔力は神様としては非常にごちそうらしく、それ目当てに祈った時に力を貸してくれる神様がいつの間にか変わっているときもある。

 特に上位神ほどその傾向が強く、人でいうとお腹がすいた状態になると魔法使わない?等と干渉があるほどだ。

 ミィにも気を付けないといけない。そろそろ、そのぐらいの魔力量になってきてるからな。


「だったら魔鉄で装飾品を作るとかどうだろう?」


「装飾品……盲点だったな。武具に良い素材だからその考えはなかった」


 お守り代わりに、魔法を使える面々が持っていればいざという時に魔法の発動に助けになるかもしれない。

 カーラにずっとブレスを吐いてもらうわけにもいかないだろうから、この炎魔鉄というべき物の生産量は限られる。

 であれば武具に使った余りなどは装飾品に回すことも考えてよさそうだ。


「その予定じゃなかったから武器を置いてきたということはあっても装飾具なら荷物に入れたまま、とか身に着けたまま、ということもありそうだな……ふむ」


 考え込み始めた職人に後は任せて俺は外に出る。

 雨期も終わり、後に押された分短くなった夏の日差しに目を細める。

 もしこれで海岸での戦いがもっと遅れていたらどうなっていたか、考えたくない暑さだ。

 よくもまあ、職人たちはずっとあの中で作業できるものだ。

 噂通り、ドワーフの血が混じってるんだろうか?……ひげもじゃだしな。


 出自を本人に聞くのはやはりあまり良くないことなので面と向かっては聞いていないけど、パンサーケイブにいる職人の多くが魔族としてみるとやや小柄というかずんぐりむっくりとしている。

 どちらにせよ、彼らの作る武具はテイシアでもいい値段で取引される予定らしいので今後の財政に大きな影響を与えることだろう。


 そのまま俺は街を歩き、冒険団の様子を見に向かう。

 一部が集団生活をしている冒険団は事務所のように建物を借り、そこで寝起きしながら仕事を受けたり、あるいは獲物の分配などをしているようだった。

 人間のそれと比べ、魔族達の生き方に一般人、はほとんどない。

 税金がほとんどないので、住むだけならなんとかなりそうだが生きていくにはそれだけでは足りない。


 それはパンサーケイブに引っ越してきた面々も同じで、採掘に参加したり、護衛をしたり。

 そして周囲の開墾や畑仕事、あるいは魔物の討伐などに従事している。

 そんな彼らの中にあって、冒険団の役割は徐々に変化していっている。

 いつしか少年少女だけでなく、大人たちの間でも今までの様な数名の集まりではなく、地域ごとに活動をまとめるようになっていったのだ。


 これが進むといわゆる自警団だとか、あるいは軍になるのかもしれないな。

 冒険団はそんな中でも別格だ。大人になって独り立ちした時には、実戦経験も十分。

 協力し合うことも覚えているので優秀、というわけだ。

 俺もヴァズもそこまでは意識していないし、フロルに残って指導を続けているロランもそうだろうと思う。


「あ、たいちょー!」


 朝森で仕留めたのか、大き目の猪を解体していた魔族の少女がこちらに気が付いて笑う。

 それはいいのだけど、血まみれで微笑む少女ってちょっとびっくりするよな。


「でっかいのが出たんだな」


 魔法で氷漬けにすることを覚えている彼らの仕留めた獲物はここまで運んでも新鮮なまま。

 安全にここで解体することも可能なわけだ。


「そーなのー。フロルより下手すると大量じゃないかってみんな言ってるよ」


「ほほう……それはいいことだな」


 このあたりは魔力が通っている土地だからか、確かに木々も生い茂り、動物が食べるような草ももさもさっと元気よく生えている。

 鉱床部分と作業のために切り開いた場所を除けば、すぐに森だからな……。


「たいちょー、足持ってー」


「お、良いぞ」


 内臓をいつの間にか取り終わり、さあ後は皮か?というところでお声がかかり、後ろ足を持って少し持ち上げると、そのまま少女は手に持った鉈で後ろ足の付け根付近からばっさりと切り落としにかかった。

 どうやらそのままだと足が動いてしまうので切りにくかったらしい。


「男の子とか大人は―、このほうが焼いたときにおいしいんだってー」


「そうか、偉いな」


 そういって褒めると、にへら-と笑顔になる少女。

 確かのこの子は母親が病気で亡くなり、父親は仕事として掘りに行っているはずだ。

 一緒に狩りに出たであろう子達もすぐそばで別の獲物を捌いている。

 危険はあるだろうけど、こうして暮らせそうだというのはとてもいいことで、守ってあげないといけないなと思う。

 ミィ達も、そのために今日も道を切り開きにいっているのだから。


「あ、ミィちゃんたちだ」


 少女の言葉に振り返り、見えてきた人影に俺も手を振る。

 それにしても、暑い……なんとかしたいな。

 空を恨めしい思いで見上げるも、雲1つ無い空には影響はなさそうだった。

真面目な話をもっと少なくして

禁断のイチャイチャを増量すべきか悩みます。


ブクマ、感想やポイントはいつでも歓迎です。

増えると次への意欲が倍プッシュです。


リクエスト的にこんなシチュ良いよね!とかは

R18じゃないようになっていれば……何とか考えます。



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