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020.行け行け! 獣魔少年少女冒険団!

ロリショタ分補給のために設立したわけではありません。

ありませんよ?

「よし、構えろ!」


「「「はい!」」」


 晴れた空の元、号令と共に甲高い声がいくつも響き渡る。

 それは男の子の物もあり、女の子の物もある。まだまだ幼女の様な声もあれば、そろそろ一人前だなと思う声も。声の主それぞれの目に宿る光に満足し、俺は頷く。


「詠唱!」


 俺とは違う声、ヴァズの合図に従ってそれぞれの口から神への祈りの言葉が響き渡る。

 今回唱えるのは風の下位神への祈りの言葉だ。借り受ける力と効果も単純。

 手の先から腕1本程の幅の風の刃を生み出すための物。


「撃て!」


 三度の号令。


 さすがにバラバラにではあるが、子供たちの手から確実に力は放たれていく。

 それは目標として作った人形に次々と衝突し、えぐるように効力を発揮し、最後には人形は崩れ落ちる。


「よし、休憩だ」


 その俺の言葉を合図に、一列に並んでいた子供たちはきびきびとした動きでそれぞれに塊を作り出す。


(なんだ、まだまだ元気だな)


 子供は回復も早いんだな、などと考えていると横にヴァズが歩いてくる。

 腰には背中には得手らしい槍を背負ったままだが、防具は特に身に着けていない。

 そういう俺も木剣1振りを腰に下げているだけだ。


「まずは、といったところか」


「ああ。力の生み出し方、使い方を覚えるのが先決だからな」


 確かめるような言葉に頷き返し、談笑している子供たちを見る。

 彼らは俺とヴァズの募集に集まった魔族と獣人の子供達だ。

 領主がおり、例えば兵士もいるのにこういった集まりを作ることに文句が来るかと思ったが、逆に推奨された。

 そのこと自体がもう驚きなのだが、思ったより人が集まったのだ。


 今のところ、兵士を育成するような集まりはあっても子供たちに自衛程度の訓練を行うのは家庭ごとぐらいなものでまとまっての集まりという物は特になかったらしい。

 珍しさなのか、大人……まあ俺とヴァズだが、がちゃんと見るというのが効いたのか、なんと20人以上も集まった。

 町はずれの広間に集まり、早速の訓練というわけだ。


 彼らは初対面の俺達に最初はやはり戸惑っていたのだけど、試しにミィとイアの模擬戦や俺とヴァズの実演により、自分にもこんなことができるかもしれないという気持ちを持ってくれたらしい。


「お兄ちゃん、この後は?」


『できれば獣人と魔族の2人組がいいのだけど、まだ誰がいいのかわからないわよね』


 この集まり、獣魔少年少女冒険団でやろうとすることを多少先行して覚えているミィとイアは彼らのお手本のような物だ。

 先ほどの魔法訓練も、2人は少し横で別の的に撃ってもらっている。

 その威力、精度の違いを感じてもらうためだ。

 その試みは成功しているようで、彼らの話し合いもどうやったらいいのか、と熱心な物になっている。


「そうだな……ヴァズ、手ごろな依頼はあるかな?」


「ふむ……我々がついていけば大体は良いと思うが……確か近くに猪の群れが住み着いているという話と、砦跡をゴブリン共がうろついているという話があったな」


 隊長、副隊長のような立場になっている俺とヴァズはこうして話すことが増えた。

 話せば話すほど、魔族の事への理解が深まるし、ちょうどいい。


 ヴァズはどこかいいところの出のようで、博識な上に頭もやはり、良い。

 実力も確かで、なんでここにいるんだろうというぐらいだ。

 そんな彼の言う話だ、恐らくどちらでも構わないだろう。


 となると、だ。俺は腕組みしながらトントンと指で腕を叩きながらちらりと話を続けている少年少女らを見る。

 食べ盛り、育ちざかりしかいない。彼らの親の中には片親で苦労してる子もいると聞いている。


「じゃあ飯にもなる猪だな。皮をはぐ経験にもなるし」


 中には食欲をなくす子もいるかもしれないが、それはそれ。

 そうと決まれば話は早い。目的地を告げ、すぐさま出発する。


 総勢30人規模の大所帯だ。

 切り倒され、切り株も抜かれた林は自然と道となる。

 そこを俺達は意気揚々と進む。戦闘は俺、一番後ろはヴァズ。

 真ん中にミィとイア、としている。

 どこかで不慮の事態が起きてもなんとか支援し合える布陣だ。


 が、幸運なことに目的地までは特に問題なく進むことが出来た。

 敢えて言えばおしゃべりが多いことぐらいだが。

 そこは俺かヴァズがちゃんと緊張感を言葉に込めて注意すれば一発だ。

 そうして風下から目標を伺っているのが今の俺達だ。少し下がったところで子供達を集め、作戦を説明していく。


 2手に別れ、片方が追い込むように魔法を放ち、もう片方が群れから漏れてきた相手を倒す、という物。

 何人かは疑問が顔に出ていたが、大半は頷いてそれぞれの立ち位置へ移動しだした。


(ふむ……カンの良い奴がいるな)


 俺とヴァズが今回、数を倒させるのが目的じゃないことに気が付いた子が何人かいた。

 こういう子は鍛えればきっと指揮に向いていることだろう。行動開始の合図とともに、それぞれが動き出す。


「よし、そこだ。そうそう……いいぞ」


「初めての集団戦にしては十分か……」


 少し離れたところから見守り、やや興奮気味に声を上げる俺に冷静さを失わないヴァズ。

 なんというか、ヴァズは好青年が似合いすぎて逆に怖い気がするな。

 そうこうしているうちに、予定通りに猪が何頭か彼らの魔法の餌食となっていく。

 それでも最初の群れでいえば半分以上はあちこちに逃げようと散らばっている。


 その一角に襲い掛かるミィとイア。イアによる森を利用した魔法で足を取られ、止まったところをミィの手にしたショートソードが的確に切り裂いていく。

 瞬く間に予定通りの猪が仕留められることとなった。


「隊長、お……重いです」


「頑張れ。いざとなったら仲間を抱えて逃げることもある!」


 報告と一緒にということで猪を引っ張ってくる子供たちが同じような言葉を口にするが、当然の事だろう。

 だが、俺も同じように返してなんとか決まった場所まで運ばせる。

 そこでは手の空いた面々により魔法で地面に穴が掘られ、解体時の処分する物を放り込む予定なのだ。


「よーし、じゃあご飯のために捌くぞ。ミィ、イア。最初にやってみてくれ」


「ごっはーんの準備!」


 俺に言われ、ミィは手早く各所に切り込みを入れ、猪を解体していく。

 イアが補助に回り、1頭の猪はあっという間に肉塊へと変貌していく。

 牙や毛皮は元より、油も何かに使うからと取り分けて手際の良さを感じさせる。

 子供たちはそれを感心した面持ちで見守っている。


(うんうん。さすがだな、2人とも)


 俺はなんだか自分が褒められているような気分になり、大げさに頷いてしまうのだが許してほしい。

 汗をかきながらも、手を緩めないミィの姿は可愛さ満載なのだから。

 真剣な表情で支援するイアも珍しい物が見れて満足である。


「次は皆の番だよ?」


 はい、っと近くにいた1人に解体用ナイフを手渡し、場所をあけるミィとイア。

 子供たちは最初は戸惑いながらも、最後にはみんなお肉と毛皮、牙と化していた。

 これが出来るようになれば、自分たちの食い扶持は自分で確保できるようになる。


 ある程度形になるまで、同行しながら色々な経験を積ませたいなと考えるのだった。

 獣人も、魔族も協力し合うべきという考えが広がっていくことを誰ともわからない神に祈りながら……。

感想やポイントはいつでも歓迎です。

入ると踊って喜びます。


こんなシチュ良いよね!とかは

R18じゃないようになっていれば……何とか考えます。



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