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014.兄妹DASH!

 


「さ、開拓の時間だ!」


「お兄ちゃん、どうしたの? お疲れ?」


『最近動いてなかったから溜まってるのよ、きっと』


 さんさんと輝く太陽。その光の下、俺が農具を片手に叫んでいると妹2人は何やらひどいことを言いだした。

 俺は首輪のおかげで青白い肌のまま、肩に農具を担いで振り返る。


 そばに広がるのは森、森、森、そして時々広場。

 振り返れば遠くには虫食いの様な街並み。建築途中の建物も多く、防壁となる物も木の杭による物や、土壁等様々でまさに開拓中、といった様相だ。


 新しくたどり着いた街、名前をフロルという。

 そんな街にたどり着いた俺達は、さっそく選択を迫られていた。己で開拓した場所に住むか、既に開拓されたところに住処を探すか、だ。

 人間の世界ではどちらかと言えば土地は限られていたように思う。


 ところがこの街……いや、ダンドラン大陸では魔族の力と協力者である獣人などの力でも全部の解放には至っていないようで、彼らの住んでいる場所と言うのはかなり限られているようだった。

 街の間には街道らしい道もなんとかあるが、まだまだ整備されているとは言い難く、魔物もあちこちに出てくる危険な土地のまま。

 故に、開拓そのものは全体的に推奨されており、土地もその開拓者の物という考えが強いようだ。


 となれば選択は1つ。己の開拓により、住処を得るのだ。

 決して、イアやミィと何かあった時に兵士の様な相手を呼ばれたら困らないようにと言う訳ではない。そうではないのだ、うん。


 ともあれ、今3人がいるのはそのそばの森だ。幸い、街から出てすぐのところにまだ手付かずの森はいくらでも広がっているようで、俺達以外にも開拓を進めている面々は数多い。


『それにしても、よかったわね』


「ああ。すごい助かった」


 不意にかけられたイアの言葉。一見すると開拓の許可がもらえてよかった、といったように聞こえるであろう。

 だけど、2人、いやミィも入れて3人にとっては少し違う。義身の首輪による変装がばれなくてよかった、という話だ。


 人間との戦いで大怪我を負い、なんとか逃げてきた、というのが俺の設定だ。

 翼は治ったが飛ぶことは出来なくなった、ということにすることでまともに動かせないことを誤魔化すことにした。

 良いのか悪いのか、同じように怪我を負って片羽が無かったりしている魔族は多少いるようで、すんなり受け入れられた。


 ミィ達もまた、イアは魔力を隠し、ミィも意識しなければまだ表に出てこない力なので

 3人兄妹として無事にここまでやってきたのだ。と、いうわけで開拓である。

 一緒に来た獣人の皆もほとんどが開拓を選んでおり、共に森を切りだし、材木として仮の家を組み……といったところだ。


『下位なら結構魔法使ってる人もいたから、それぐらいならいいんじゃないかしら』


「ではさっそく」


 他に聞こえない様、囁くように言うイアに頷き、不慣れではあるが上位神ではなく下位神に祈りをささげ、力を借りる。

 どうも、俺が苦手というよりは力を借りる先の神様が上の神様に遠慮してという感じがするんだけどな……。

 今回もまた、いつもより何拍かおいて手のひらから風の刃が飛び出して木々を切り裂いていく。

 俺の胴体ほどの太さもある木々なので、切り出して材木にするには十分だ。


『応えよ。大地を進む盲目の従者……アンピラー!』


 その後をイアが付いてくる形で、土の魔法を繰り出す。

 俺の腕ほどの太さの土の杭が1本ないし2本程飛び出す攻撃魔法。

 威力や範囲は非常に小さく、見ての通り切り株を掘り起こすぐらいにしか使えない。

 まあ、狭い場所なら当てられるし、相手の足場を崩すという点ではなんら問題は無い。

 確かにイアの言うように、上位神による魔法を手加減するのもありだけど、こういう小技も身に着けておくといざという時いいのかもな、と思う。


「よいしょっと」


 さらにその後ろをミィが続き、他の獣人の子たちと一緒に切り株を一か所に集めていく。

 最終的には水気を抜いて薪の1部になるのだ。貴重な資源である。

 ま、森は広く、他にも広がっているから後何十年も薪に困ることは無いだろうけども……。


 人間の国であればこれから家を作ろうということで動いても出来上がるまでには相応に時間がかかるはずだ。

 ただ、悲しいことに獣人や、追われた経験のある魔族と言うのはその場、その時で何とかする術を自然と身に着けてしまっている。

 結果として、人間側と比較して大よそ3分の1程度の時間で簡単な家というか屋根付き休憩所、と言うべき簡易な物が出来上がることになる。

 しばらくは竈は外になるが、寝泊りには十分だ。水が欲しければ俺が生み出すなり、水場に行けばいいことだしな。


「ミィ、イア。しばらくは不便だと思うが大丈夫か?」


 俺自身は小さいころからあちこち戦いに赴き、時には山中で木の上で寝る、なんてことも多かったのでこういった生活には慣れている。

 2人はどうだろうかと聞いてみると、何故か2人して見つめ合い、ニコッと笑う。


(ミィはともかく、イアも……ちゃんと笑えるようになったな)


 いつもの様なからかいのある笑顔ではなく、自然な表情のイアに俺は心が温かくなるのを感じた。


「ミィは大丈夫だよ。木の匂いも大好きだし、それに、みんないるもん!」


 ミィはそう叫び、俺のお腹付近に突撃してくる。

 ぐりぐりと、自分の匂いをこすりつけるようにするミィを俺は笑顔で撫でる。

 時折耳に指があたると、ミィはぴくんと震えながらも喜んでいるのが尻尾でわかる。


 そんなミィをイアは何やら羨ましそうに見ている。最近は前のように吸っていないし、吸わせるには場所が悪い。

 だからか、イアも最近は度々ミィのように俺の手を取ったり、気が付けばそばにくっついているような気がする。そんなイアがそばに寄ってこずにいる。


『お兄様、私も翼を撫でてみてほしいのだけど』


 そのことに口を開こうとすると、イアが先手を打ってきた。

 恐る恐ると言う様子で俺に近づき、背中を向けてくる。そこにあるのは一対の黒い翼。

 黒は濃い物だ。ただ、近くで見ると光沢があるようには見えないのに妙に目を引く色に思う。

 繊細だというその翼にそっと手を乗せ、まだ抱き付いたままのミィを撫でるようにさわさわと手を滑らす。


『ふぅっっ!  はふっ、さすがお兄様ね』


「え? 何がだよ」


 幸いにも既に一室だが家の中。多少は外に音が漏れにくいとはいえ、イアの吐息に一瞬焦ったのは内緒だ。


「えへへー、お兄ちゃんが撫でる時、気持ちいいんだよ。ミィもね、髪の毛がさらさらーってなる時、ふわーってなるの」


 ミィの独特の説明とイアの補足によると、どうやら俺は撫でる時に手のひらに何か魔法らしきものが発動してるというか、出ているらしい。

 感じからして回復魔法の系統に思えるそうだが、自覚して使ってないのでさっぱりだ。

 害はないようなので特に気にしないでおこうと思う。


 幼い少女2人が顔を赤くしているのは大丈夫なのかどうかは……。

 多分、他の人に見せなきゃ大丈夫なんじゃないかな?

 3人とみんなによる開拓はこうして順調な滑り出しを迎えるのだった。


感想やポイントはいつでも歓迎です。


リクエスト的にこんなシチュ良いよね!とかは

R18じゃないようになっていれば……何とか考えます。



誤字脱字や矛盾点なんかはこーっそりとお願いします。

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