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109.成長した仲間たち


「こうして飛ぶのも久しぶりだな」


『ガウ!』


 首筋を撫でながら言ってやると、カーラからも楽しそうな返事が返ってくる。

 前を向けば地平線の広がる空間。高い山も、低い山もあるけど遠くになればそれも一緒。


 雲が点在する空を、俺達は飛ぶ。風を切る感じが何とも言えない。

 この大地は広い……ダンドラン大陸だっていくつもある大陸の1つだ。


 この世界の果て……いつか行ってみたいものだ。


「ずうっと向こうには何があるのかな。お兄ちゃん知ってる?」


「俺も知らないな。平和になったら、行けるだけ行ってみようか」


 きっと、俺やミィ、みんなとなら何が起きても平気だ。そう思わせるだけの絆と強さが俺達にはあるのだから。


 ふと、眼下の景色はもう間もなくフロルだということを示している。

 やはり、地形を無視して進めるというのは強みだな。


『あっちじゃドワーフを気にして飛べなかったものね』


「火竜は恐怖の象徴だった。無理もない」


 2人の言うように、パラケルン大陸では溶岩竜と火竜はどこでも恐怖の代名詞である。

 とても元の大きさで暴れてもらう訳にもいかなかった……あの大きさでもだいぶ混乱は招いたのも確かなのだが。


 パンサーケイブに滞在して3日後、俺達は自警旅団と別れて南下していた。

 元々自警旅団とは、危険度の高い道筋には付き合うという約束だったのでまた戻っていく彼らとは別の旅となったのだ。


 フロルにも最近戻ってないしな、ちょうどよかった。

 上から見る景色はやはり、変わってるように見えるな……。


 少し寂しい気持ちもあるけれど、逆に変わってないと街として成長していないってことだもんな、そっちの方が問題だ。

 脅かさないように郊外にゆっくりと降りてもらい、手乗りぐらいの大きさに戻ってもらう。


「みんな、カーラちゃんを見たら驚くかなあ?」


「別の個体だって思うかも……」


『子供達には人気が出そうね。今のうちに覚悟しておかなくちゃ』


 そんな風に騒ぎながら歩いていたからだろうか?

 フロルの方から覚えのある気配が走ってくるのを感じる。


 見れば、片腕の無い獣人、ロランがその片腕を振りながら駆け寄ってくるところだった。

 狼種の獣人である彼が走ってくると何やら狩りの途中のように見えるな。


「誰かと思ったが、火竜に乗ってくるなんてのはラディぐらいだったな。

 無事で……ん? 妹が増えたのか」


「色々あってな。……ロラン、強くなったな」


 握手を交わし、軽く抱き合って再会を喜んでいると、その体と内包している魔力の成長具合に驚いた。

 相当過酷な訓練をしたか、実戦を繰り返したに違いない。


「ははは。冒険団のつきそいを毎日していれば自然とそうなるさ。

 最初に冒険団に入った子達は、大人顔負けにあちこちで暴れているぞ?

 みんな、ラディ達の背中に追いつくんだって必死さ」


 ロランに遅れていくつもの気配。その主は……件の子供達だと思う。

 思うというのは……。


「わっ、みんな大きくなってる!」


『それはそうよ。ミィだって成長してるんだもの』


「子供はすぐに大きくなる……あれ、ルリアは違う……?」


 そう、見違えるほど大きくなっているのだ。

 体格だけじゃなく、気配というか強さという点で。

 かろうじて、双子の子達や覚えのある髪の毛の色などから感じるぐらいだ。


「「「先生だー!」」」


ミィちゃんたちも一緒だ!と子供たちは騒ぎ、3人と1匹を囲んでわいわいと騒ぎ始める。

楽しそうで何よりだ。それに、欠員がいなさそうというのがもっといい。


「全員、無事なんだな」


「ああ。おかげ様でな。危険には踏み込み過ぎないというのを徹底させているよ」


自信満々に言い切るロランに俺は微笑み、改めて固く握手を交わした。


案の定、小さいカーラは格好の遊び相手となったようだけど、迷惑そうな感じではなく、遊び相手が増えたとご満悦な様子だ。


 カーラもまだまだ産まれて何年もたったわけじゃないからな。

 そういう気持ちもいっぱい抱えてるに違いない。


「ラディ達の家はまだそのままだ。掃除は適当にしてるが」


「ありがとう。助かるよ」


 ミィ達に家に行くことを告げ、子供たちごと家へと歩き出す。

 街並みは大きく変わっており、建築中だった場所にも建物がいくつも立てられ、綺麗な通りに建物が立ち並んでいる。


 商店のような場所も結構あるようだ。


「すごいだろう? 最近じゃ北の村とも定期便を走らせている」


「驚いたよ。それだけ平和ってことだな……よかった」


 歩きながら、俺はふと思い出して影袋から1振りの剣を取り出した。打ち直してもらった魔鉄剣だ。

 竜牙剣を使うことにした都合上、予備武器として持っているのだがちょうどいい。


「よかったらこれを」


「いいのか? 業物に見えるが」


 頷きだけを返し、鞘ごと魔鉄剣をロランに譲り渡した。

 子供たちを守り、結果として街も守っている彼へのささやかなお礼だ。


 家が近くなったのでロランとは別れ、懐かしい家へとたどり着いた。

 見た感じは出ていった時と同じ具合だ。これならしっかり掃除する必要はないかなとも思う。


「お兄ちゃん、ちょっと行ってくるね!」


「ああ。遅くならないようにな」


 出会った時の勢いそのまま、遊びにいってしまったミィ達に残されて俺は一人家の掃除をすることにした。

 といっても、ミィたちが遊びに行けたように綺麗なままだ。よほどこまめに掃除をしてくれたに違いない。

 いつ戻ってくるかもわからないのに、感謝しかないな。

 竈に火を起こし、食事の準備を始める。


 段々と泡の出る水を眺めつつ、今後の予定を考える。ロランによると、遺跡の修復にも手がつけられてるそうなのだ。


 遺跡とは、アーケイオンの神託を受けることができたあの遺跡だ。


 ヴィレルの大陸への宣言は少なからず巡礼者のような人を産んだそうだ。

 そのため、いつまでも瓦礫で魔物が住み着くような場所ではよろしくない。そう考えて整備と修復が入った。


 今では食事はともかく、寝泊りが出来るだけの場所は確保できているそうだ。

 結果として祈りを捧げに行く人も増えているとのこと。


(俺達も一度顔を出さないとな)


 聞きたいこともあった。勇者の事、魔王の事、竜の事。


 そして、今後の事。

 神様だからこそ知っていそうで、逆に教えてくれるのか不安になることばかりだ。


 例えば、勇者の力と聖剣の力はそのまま同じではない。

 一緒に扱われやすいのはすごくよくわかるが、全くの別物なのだ。


 たまたま青く光り、人間側に出やすいらしいから勇者と呼ばれるのであって、正義の力という訳じゃあない。

 聖剣もその意味では同じだ。

 きっと魔族側で産まれていたら魔剣等と呼ばれたのではないだろうか?

 ただまあ、聖剣の場合は神様の考え自体が少々物騒だが。

 敵を斬りつくすまで、力を放出するのを止めない、なんてのは危なすぎる。


 そう考えると、勇者と魔王とは何がどう違うのか。そもそも2種の力はどうして誰かに宿るのか。

 聞けるのもなら、知っていそうな神様に聞いてみたいと思うのは道理だと思うのだ。


「っと、吹いてきたな」


 聞けばわかるか、と思い直してミィたちが戻ってきた時のために簡単な食事を用意するのだった。

ブクマ、感想やポイントはいつでも歓迎です。

増えると次への意欲が倍プッシュです。


リクエスト的にこんなシチュ良いよね!とかは

R18じゃないようになっていれば……何とか考えます。

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