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ナディルの言った通り、光は徐々に弱くなっていった。そして彼の手の甲には、SとUを組み合わせた様な模様が浮かび上がった。
「ライナ、手袋を取って見せてくれる?」
ナディルは両手で優しく、ライナの手を包み込んだ。
ライナは黙って首を縦に振る。
彼女は手の甲だけ覆うタイプの、指の出た長いグローブをはめている。その布越しに、手の甲から薄ぼんやりとした光が漏れている。
中指に引っ掛けたリングを取り、手の甲に掛かった布を捲ってみると、RとSを組み合わせた様な模様が浮かび上がり、青白く光っていた。
初めて見る模様だった。
ただ、ナディルの模様とは違い、模様の上を黒い蔦の様なものがぐるぐると絡み付いていた。その所為でか、ライナの模様はナディルの模様の半分程しか光っていない。
ナディルは愛おしそうにライナの手の甲を撫でた後、その模様をまじまじと見つめて小さく呟いた。
「封印されている」
ーーだからこんなに近くにいても、触れるまで分からなかったんだ。でも、一体誰に……
訳が分からないライナは、自分の身体の異変に不安を感じながらも、どうしていいか分からずじっとしていたが、ナディルが自分の手をあまりに優しく撫でるので、恥ずかしくなった。
「あの、もう、いい……?」
そう言って手を引っ込めようとした。
考え込んでいたナディルは、その様子に気が付き、名残惜しそうに手を放した。
「ごめんね、もういいよ。ありがとう」
そう言って笑顔を作る。
そして少し困った様に頭を掻いた。
「急にびっくりしたよね。驚かせてごめん。
うーん、どこから話せばいいのかな……
そうだ、ライナ、昔の事って何か覚えてる?」
何の事を言っているのか分からず、ライナは首を横に振る。
確かに、ライナは昔の事を全然覚えていなかった。
ーーナディルは何か知っている……?
「そうだよね、まだライナは小さかったから覚えてないよね」
ナディルは残念そうに言う。
でも彼は、これだけは確信していた。
目の前にあるのはナディルの“探し物”。
導かれる様に出会った。
ナディルは慈愛に満ちた声で言った。
「君は僕の妹なんだ」