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セブンス エッダ  作者: りん
運命の女神《ノルン》の紡ぎ糸
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 とにかく此処がどの辺りかを確認したかった。

ライナは周りを見渡すが、何の目印も無い大きな木々に囲まれているばかりで、途方にくれそうになる。ポケットから飾り気のない小さなコンパスを取り出して、今の太陽の位置から方角を照らし合わせてみる。コンパスは狂っていない様だから、方角は間違っていないはず。

 この森は南北に長く広がっているが、東西に横切ればすぐ出られるはずだった。

 一体どこ間違えて迷い込んでしまったのだろう。泉の 近くで休憩した時に、進む道を取り違えたのだろうか。歩いて来た道を振り返ってみる。人に踏み鳴らされて剥き出しになった黄土色の埃っぽい土が、蛇行しながらも長く長く続いている。


 長い間握られて、しわしわになった日焼けした紙を広げると、ガサガサと乾いた音がした。

 何度も見返して道などとっくに暗記してしまっていたが、地図にもう一度目を遣り、簡単な線で描かれた道を確認する。

 ヴィートグードの森と書かれた、縦に長い歪な楕円形の中を南北に太めの線が二本走っていて、所々細い線がうねりながらその線を横断している。楕円の右上の方に赤い丸があり、ブロフォーレスと文字がある。今朝ライナ達が旅立った街だ。街からは太い線が何本も出ていて、東西南北に走っている。森を横断する線を辿っていくと、何度か枝分かれしながら左上の方に続いていく。そのまま森を抜けた先にも丸がありフスト=フェルトと書かれている。目的の街の名前だった。

 地図を買った店の主人には2時間もすれば森を抜けられると言われたのに。

 こんなに歩いてもどこにも出られないなんて、この地図が間違っているとしか思えない。街を出る時にもう一度だけ確認しておけばよかったと後悔して、居たたまれない気持ちになる。


 自分がこんなにも方向音痴だったなんて。


 ライナは住んでいた村からあまり出た事がなかった。遠出といっても村の外れの湖に行く位。

 自分がこんなに方角に弱いなんて思いもしなかった。地図を眺めて色々な場所を思い描くのと、実際に自分の足で歩くのとではこんなにも違うのかと痛感する。

 空の上から眺められたらいいのにと思い、上を仰ぎ見る。しかし天井の様に覆い尽くす青々しい葉の隙間からほんの少し見える空は遠い。木々は微風に気持ちよさそうに葉を揺らしている。まるで穏やかな鳥籠に知らない内に捉えられてしまった様だ。


 暫く歩いていると分かれ道に出くわした。今までも何度かあったが、真っ直ぐに続く太い道を選んできた。真っ直ぐ進めばすぐに出られるはずだったから。

ライナは思い立って、左に逸れる細い道を指差して言った。


「カハク、こっちに進んでみよう」


 カハクと呼ばれた青年は考える様に右手を口元に持っていき、ライナの持つ地図を覗き込んだ。そして少し悩んだ後に、小さく頷いて言った。


「そうですね、そうしてみましょう」


 二人は目配せをした後、覚悟を決めた様に深い緑の続く細い道へ足を踏み入れていった。

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