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セブンス エッダ  作者: りん
少女が小さな世界の殻を破る音
14/118

3

 ナディルとライナは広場の近くの食堂で食事をとっていた。

 この辺りの大きな街は、教会を中心に街づくりがされている。パラスロットはとても分かりやすい例で、街の中心に広場と教会が設けられ、四方に大きな通りが伸びている。教会の正面にある広場と、そこから伸びる大通りには多くの店が立ち並ぶ。

 この街は、この辺りでは一番大きく栄えているため、夕食時にはどの店も人でいっぱいになった。

 ナディルは宿の主人から、街の中でも比較的上品で、個室のある店を教えてもらっていた。居酒屋(ターベン)の様な賑やかな店ではうるさすぎるので、落ち着いて話ができないと思ったからだ。


 主人に教えてもらった店は、要望通りの、落ち着いた雰囲気の店だった。ダークブラウンの木板が壁から天井へとアーチを描いていて、木板の間からやんわりと灯りが漏れる。床は真っ白な漆喰で塗り固められている。余分な飾りのない、シンプルだけど品のある内装だ。

 入り口に薄い布の垂れ下がる、小ぢんまりとした部屋に通される。


「何か嫌いなものとか、食べれない物はある?」


 メニューに目を落としながらナディルが尋ねる。


「……獣の肉」


 メニューを開きながら、ライナは答える。

 鹿肉(シュヴルイユ)猪肉(サングリエ)熊肉(ウルス)は野生的の味がするので苦手だ。羊や兎もあまり好きではない。本当は牛や豚も。独特の臭みを感じるし、血の味がする。

 でもそんな事を言っていたら、選べるものがほんの少しになってしまうし、男の人は肉が好き、と聞いた事があるので黙っておく。

 ちらりとメニューを見ると、ライナの見たこともない文字が並んでいた。

 牛肉(ストルフェ)のドープ、パケット・ド・野兎(ラパン)、アイゴ・ビイルド、メスクランのサラダ、フリュイ・ラーグレ……

 この地方の伝統料理の様だが、ライナに全く想像がつかなかった。


「適当に頼んじゃってもいいかな?」


 固まったライナに気が付いてか、ナディルが申し出た。

 ライナは2回首を縦に振る。


「サラダは頼んで」


 見た事のないメニューに、食べられるものが無かったら困る、と早口で付け足した。

 ナディルはその姿を微笑ましそうに見つめながら答える。


「了解」



 程なくして幾つかの料理が運ばれてくる。

 ギザギザした瑞々しい葉に、真っ赤な果実と鮮やかな黄と紫の花びらが散らされたサラダ。一口大に切られた色とりどりの野菜の煮込まれたスープ。オーブンでこんがりと焼かれ、赤いソースを纏った白身魚。レモンとハーブをたっぷり使って蒸し焼きにされた鶏肉。表面がほんのり焦げた焼きたての丸いパン……

 どれも色鮮やかで、白磁の皿に美しく盛り付けられている。スパイスとハーブの良い匂いがした。


 量は少し多い気がするが、どれも食べられそうだ。

 ライナは胸を撫で下ろした。


 ナディルはライナの安堵した様子を確かめてから、黄金色の林檎酒を口に運んだ。

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