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セブンス エッダ  作者: りん
少女が小さな世界の殻を破る音
12/118

1

 パラスロットの街に着いたのは、薄明の頃だった。

街に入ると、真っ直ぐな大通りが奥まで続いていて、その先に大きな教会が見える。この街のどこに居ても目に入ってくる高い尖塔を持つ教会は、オレンジ色の光を燈して、幻想的に照らされている。


「戻ってきましたね……」

「……戻ってきたね」


 カハクとライナは教会を仰ぎながら、お互いに呟く。

 まるで計画が白紙に戻った様な落胆ぶりをみせる2人にナディルは同情する。


「以前この街に来たの?」


 ナディルの質問にカハクは眉端を下げて答える。

「はい、私はここの教会に勤めております」


 カハクとライナはこの街で出会い、一緒に街を出たのだった。

 正に、振り出しに戻ってしまった。


「……私は一度教会に戻ります」


 何かを決心した様に、カハクはきっぱりと言った。

 何か言いたそうに、真顔で見つめてくるライナに、優しく微笑む。


「この鳥の怪我も手当てしたいですし……

 御二人には申し訳ないのですが、街の宿に泊って頂けますか?

 教会は正式に登録を行った信者しか泊められないんです」


 カハクはすまなそうに言う。


「信者の方が商っている宿がありますので、口利きをしておきます。

 よろしかったらそこに泊って下さい」

「そうだな……もうこんな時間だし。

 お言葉に甘えようかな」


 ナディルはカハクの申し出を快く受け入れた。

 ライナは焦ってカハクとナディルを交互に見上げる。


 ーー何で話が纏まってるの?


 ライナにとって、ナディルは“兄”とはいえ、出会ったばかりの見ず知らずの男性だ。

 置き去りにしないでほしい、と不安を目で訴えるが、カハクはそれをにっこりと一掃した。


「明日の朝、教会にいらして下さい。

 宜しかったら御案内致します」


 兄妹水入らずで話をした方がいいだろう、というカハクの配慮だった。


 ーーナディルさんも悪い人では無さそうですし。

 カハクは沢山の信者の告解を聞き、助言をしてきたので、多少なりとも人を見る目はあると自負している。

 悪い人では無さそうだが……腹の奥は決して見せないタイプの、頭のキレる人だろうな、と心の中で思った。


 戸惑うライナを置いて、2人は太陽の残り日に煌めく石畳を歩き出した。

 足早に家路へ急ぐ者があちらこちらで見られる。街にはひっそりと夜の帳が下りようとしている。

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