心臓麻痺一歩前
施設の中にとりさんが迷い込んだ。
年に数回 そのようなことが起きるが
今回は異常である。
逃がしたはずなのに「チュンチュン」鳴いている。
3羽は迷い込んでいるようである。
何処から〜!?
大きな疑問である。
特別隙間風が感じられる場所も無い。
だが・・・何処か入り込める場所があるようである。
何処から〜!?
なぞは解明されていない。
この建物は中央が吹き抜けで体育館状態の広場のようになっていて
壁2面は総ガラス張り・・天井の一部もガラス張りである。
この壁目掛けて鳥が激突
中庭では激突した鳥が息絶えていることがよくある。
そういうときは丁重に葬るのであるが・・
施設の中で放し飼いと言うわけには行かない。
この体育館状の建物の吹き抜けの部分に作られた渡り廊下で
居住棟と管理棟とを結んでいる。
網をもって開けた窓の方に追い込む作業をしていたんだけど〜
なかなか上手くいかないの。
それ見てて ちょっと面白かったよ!
職員のおじさんたちはあっちにこっちに走り回ってるからフラフラなの。
まぁ〜私たちには初めっから無理な作業なんだけどね!
追いかけて走るなんて無理だもの。
努力はしない主義なのよ〜♪
この捕獲作戦は失敗に終ってしまった。
体力が続かなかったようである。
天井を眺めながら
「すずめかなぁ〜!?」と恵美子が聞く。
「どうだろうねぇ〜すずめなら寒すずめ?」と私。
寒すずめは旨いと昔から言われている。
勿論 食べたことは無い。
冬のすずめは油が乗っていて旨いと言われているのだ。
「そんなに口あけて↑を見てたら お土産が落ちてくるよ!」
としーちゃんから注意をうけた。
おぉ〜お土産が口に入るのは絶対に避けたい。
私たちはしーちゃんの指示に即座に従った。
3階で渡り廊下向こうのベランダを開けて置いたら
一羽逃げた!と話題になってた。
でも〜開けっ放しにしておくわけにはいかない。
さらに進入させるわけには行かないのだ。
誰かが見張っていなければ・・・
と話し合っているうちに
また一羽が3階の渡り廊下に舞い降りてきた。
チョンチョンと飛びながら渡り廊下を渡り
ベランダの前で止まった。
・・・・・・なのにそれ以上動かない。
もう少しなのに!
ベランダが開いているのに!
誰もが歯がゆい気持ちでとりさんを見つめていた。
「誰か走っていってぼえば〜!?」
マサ子が言い出した。
「え?誰が走るの?」
誰の顔にも<私は嫌>と書いてある。
渡り廊下は結構長い。
私には距離感がないので何メートル位とは言えないが
なんせちょっとした体育館の広さがあるのだから
想像してもらいたい。
勿論 縦・横・・短いほうではあるが・・
それでも
その渡り廊下を渡りその奥の管理棟のベランダまでというと
走りたい距離ではない。
しかも重要な任務なのだ。
だが・・<私は嫌>の顔文字が<お前が行け!>に塗り替えられていた。
私に視線が突き刺さった。
こういう役目は いつも私に回ってくる。
<そういうときのあきちゃんじゃないのか?>
私は顔にそう文字を書いてみたが
<あきちゃんじゃ おとなしすぎて無理>
あきちゃん以外の顔には そう書いてあった。
さらに視線が奥深くまで刺さる。
<早くしないと間に合わないぞ!>
顔文字は変わっていた。
仕方が無いので走った。
全速力でとりさんに近づいた。
途中 気が付いたとりさんがベランダから少し外れてしまった。
「間に合わなかったか〜!?」
と立ち止まって見つめたが
私と目が合ったとりさん・・・←確かにそう感じた。
またベランダの方に歩き出してくれた。
そこで一気に猛ダッシュして追い込んだ。
作戦成功!
とりさんは無事帰宅した。
私はベランダの閉め鍵をかけ みんなのいるところに戻った。
「おぉ〜偉かったぞ!」と口々に褒めてくれたが・・
「まぁ〜走っているようには見えなかったけどね!」
とママに言われた。
「あんたのドタバタした足音でビックリしたんだね」
とママは続けた。
「可哀想に怪獣にでも襲われる気分だっただろうに・・」
と続け
「折角 逃げたのに 今頃心臓麻痺起こしていたりして・・」
ととりさんを心配している。
心臓麻痺を起こしそうなのはとりさんじゃなくて
全力疾走の私じゃないか!?
ゼイゼイゼイ・・・。
と思ったが口には出さないで置いた。
どうせ口では敵わない。。。
黙っていることにしよう〜♪
1階に降りる途中
「1羽逃がすことに成功した!」と聞いたので
これで3羽逃げた計算になる。
「万歳!」と思ったのもつかの間。
「今のは何〜!?」
何かが頭の上を通り過ぎた気がして一同目を向けたその先には
2羽のとりさんが優雅に飛んでいた。
何処から来たの〜!?
いったい何羽いるの〜!?
私たちは見なかったことにした。
目を瞑りその場を離れた。
チュンチュン鳴くとりさんの声も聞こえない・・聞こえない・・・。
耳も目も無い無い無い!
私たちに必要なものは口だけなのだ!
さぁ〜お茶飲みの時間である。