いたましい飴
「実は・・・恵美ちゃんの席にあった飴 食べちゃった。」
しーちゃんが告白した。
「え?」
聞き返す恵美子。
「ここにあった飴を食べたの?」
念を押す恵美子。
「ごめんね〜いたましい飴だったのに・・・」
そう そこにあった飴は あのいたましい飴だったのだ。
先日 欲しいと言う恵美子の願いも空しく
しーちゃんの口に入ってしまった あれと同じ飴である。
私が恵美子に渡したあれである。
「気にしなくて良いよ〜♪」
妙に元気な恵美子の声だった。
「えぇ〜!?あんなに欲しがってた飴なのに〜
恵美ちゃん天使みたいだね!」
マサ子が口を出した。
「天使じゃなくて私 ティンカーベルなのよ」
今日の恵美子は妖精になっていた。
「飛べそうに無いティンカーベルだな・・」
そう思ったと同時に恵美子がジャンプした!跳ねた〜!?
正確には床から足がわずかな時間 離れた。
「ね・・! 飛べるでしょう〜!?」
私は返す言葉が見つからなかった。
「本当に食べてよかったの?」
しーちゃんが蒸し返す。
「まだ食べたかったの〜!?」と聞きながら恵美子が
ポケットに手を入れしーちゃんの前に差し出した。
その手に乗っていたのは新旧2つのいたましい飴だった。
「実は 私・・まだ持ってたの」
恵美子が言った。
なるほど〜
まだ持っていたから食べられても怒らなかったのか。
なんかあると思ったが・・・そういうことだったのか。
「欲しかったら分けてあげるよ!」
今日は最後まで天使なのか?
「1つ 1000円ね〜♪」
やっぱり意地悪なティンカーベルだった。
人に分け与える気など ないのである。