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NOISE.3  作者: 坂津狂鬼
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策略

全身が蒼い炎に呑まれると同時に腹部に衝撃が走る。

空気を吐き出すと共に地面に倒れ込んだ小月は、自身の体に馬乗りで跨がる少女に向けて暴言を叩きつける。

「このクソバカ女! 殺す気か!?」

「バーカ、殺す気だこのアホ小月! 乙女に向かって撃つなんて、傷でも残ったら責任取る覚悟はできてるのか!?」

蒼い炎に包まれる中、怒鳴り合う二人。

まるで押し倒されたようにシキに上をとられて身動きが取れない小月は、訳の分からないことを言う少女に向かってまた怒鳴る。

「責任取るも何も、俺は一回お前助けただろうが、バーカ!」

「一回? そんなので済むか! この駄犬!」

「誰もお前の犬じゃねぇーんだよ、スカポンタン!」

「とにかく後で責任取れ、小月。じゃないとアタシは……お前を殺す」

「後で責任取れば、殺さないのかよ」

「当たり前だ」

シキは未だ、動揺しているのかもしれない。

自分の敵として現れたはずの小月に命を助けられたことに。

一体、小月が何を企んでいるのか理解できない。ただもしかしたら目的とやらを達したのならまた自分の元に戻ってきてくれるかもしれない。

しかし今の自分は、小月を無償で信じられない。

故に、責任などと言っているのかもしれない。

「いいよ。責任取ってやる」

数秒の沈黙の後、小月はそう返答した。

いや、小月からしてみれば、そう嘘を吐いたと言ったほうが良いだろう。

「絶対だぞ」

信じるように、自分に信じ聞かせるようにシキは呟いた。

「それで小月。アタシはあの男を焼き尽くせばいいのか?」

「そう言いたいが、怪しい。アイツからして見れば、この状況から逃げ出すのが最善のはずなのにそうしていない。つまり」

「あの男にはアタシの炎への対策があると」

シキの言葉に小月は頷き、今度は自身の推論を述べ始める。

「隼綛の雑音拒絶は空間を裂いて歪める。だから炎への対策も大方検討がつく。だから、シキ。お前すら協力してくれれば一撃を入れることは可能だ。それが必殺になるかどうかは別にして」

「分かった。協力してやる。それでアタシは何をすればいい?」

「そうだな。まず―――俺の上からどけ。いい加減、重いんだよ」


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


周囲にいる敵を片付けたオトアはまず自らの雇い主である少女をこの場から逃がすことにした。

雇い主はオトアからの提案を素直に承諾し、《不可視の鎧》をまとわされ逃げ去った。

別れ際に特別な言葉を交わすわけでもなく、皮肉を言い合うわけでもなく、

「じゃあね、バイバイ」

「あァ、さよなら」

ただ質素な言葉で別れただけだった。

「あんなんでいいの、音にぃ」

「いィんだよ、これの方が」

下手な感傷でもあればオトアに迷いを生んでしまうから。

だからオトアは自らこういった別れを選んだ。

オトアにとってこの戦いは決別の為の戦いだ。自らの過去と、自らと、この世界と、あの宿敵と、今隣にいるバカな妹と、全てと決別するための戦いだ。

余計な迷いなど、有っても邪魔になるだけなのだから、それを増やす選択など不必要。


「オメェもそォ思わないか、張空陽介(,,,,)


オトアの呼び掛けと共に周囲から黒い虎のようなモノが四方八方から襲いかかってきたが、《異界区画》でそれら全てを叩き潰しオトアは襲撃者に対して話し掛ける。

「魔神と同じ反応が二つ出たから両方潰してしまおう。それが罠であろうとお前はそォしなければならなかッた。だから二手に分かれて潰しに来たんだろ」

応える声はない。

その代わり、無尽蔵に黒い虎が湧き、次々に襲いかかる。

無慈悲で機械的に《異界区画》によって次々と叩き伏せ、オトアは引き続き口を開く。

「解読者の力がどこまで有能かは知らねェが、【虚無の王】の力じャァ、オレの雑音拒絶には適わねェ。そのくらいはお前も解ってる(,,,,)はずだ」

オトアの雑音拒絶は空間を隔て歪める。

その応用で能力を極限まで使用して、音、光、空間、時間すらも隔て空間上に不干渉地域を作り出す。つまりは新たに世界を創り出すことすら可能なのである。

その能力に、たかが消し炭にする力が適うわけがない。

力自体は強力だ。しかし不干渉地域には為す術がない。

現に、おおよそ【虚無の王】の能力で作られたであろう黒い虎は一瞬にも満たないうちに叩き潰されてしまっている。

「だから張空陽介。お前がここに来た理由は一つ。足止めだ。張空小月が隼綛に殺されるまでのなァ」

黒い虎による攻撃が止み、一つ、オトアに問いかける声が響く。

「だとしたら、君はどう返す。そこまで予測推察できているんだ。どういう手が最善か、理解できているんだろ?」

「あァ。だから……出来ねェよ、それ」

姿を現した張空陽介に、オトアは単純な応えを返した。

書く気が無いんじゃない。書くのが面倒くさい

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