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NOISE.3  作者: 坂津狂鬼
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提案

シキ。黒髪のストレートに蒼い瞳の少女。別名【蒼い死神】。

彼女がそう呼ばれる理由は、彼女が死を司る力を持つこととその力が蒼い炎の形で現れることの二つだと俺は思っている。

彼女は自分自身で発生させた蒼い炎を手繰り、相手の生命を自在に燃やすことができる。

命を蘇らせたり、逆に命を奪ったりすることのできる力。

その力を持つが故に、シキは【蒼い死神】と呼ばれる。

そして俺はその蒼い炎によって殺され、生き返らされた経験がこの世で最もある人間だと自負している。

死んでは生き返り、死んでは生き返り。多分わりとゾンビより酷い人生を送ってるかもしれない。

今回もそれに燃やされ、殺されたかまでは分からないが気絶させられたみたいだ。

本人にも注意してるけど、こう、理由も分からずに燃やしてくるのを止めて欲しい。気分的に何か悪くなるから。

「…………っぅ」

「……あ、起きた」

そういえば死ぬのもキツイが、死んだあともキツイことが極稀にある。

例えば、そう、椅子にロープで縛りつけられて猿轡をされた状態で起きるとか。

そういった時は大概、秋音が傍にいてよからぬ事を企んでいる時なんだけど。

「んんぅ、ンんンんん……っんん、んぅうんぅぅんんんっ」

「……猿轡を外せ? どうせロクな事を言わない口なんだから塞いでおいても構わないじゃない」

「……んんぅっ?」

「アタシならここにいるぞ小月」

まず椅子にロープで縛られてる状態やら猿轡をされてる状態やら、俺の背後にシキがいる不気味さやらを問い掛けたいが、それよりもまず、何で猿轡した状態なのに会話が成立してんだよ。

「……クリスマスパーティーをしようと思う。賛成? 大賛成?」

「小月はクリスマスパーティー、協力してくれるよな? それとも主催を務めるのか?」

あ、もう開催は決定してるんだ。クリスマスパーティー。この二人で、俺も巻き添えにして。

っていうか反対も不参加も存在しないんだ、俺の選択肢の中に。

せめて回答拒否くらいはあってもいい気がするんだけど……きっとないよな。最悪だ。

「ンんン、んぅんんんぅ」

「……よかった。買い出し係を確保できた」

「アタシも嬉しいぞ、小月」

いや嬉しいとかどうでもいいんで、シキはとりあえず抱き着く前に猿轡外してくれませんかね。

っていうか買い出し係って、それってもろここで、この家でやるって事じゃん。

俺の平穏で平凡で平和で惨めで冷酷なクリスマスの時にどこに居ればいいのさ?

「……当然、協力するからには当日参加もするよね」

その脅迫じみたお誘いは何なんですか。

いや、というか秋音から誘ってくるなどおかしい。

可愛げのある義妹ならばいざ知らず、血の繋がりがない兄に精神的暴力を振るうのが習慣であり当然であり日常である我が義妹秋音から誘うなど……もしや俺は毒を盛られるのか?

「……解答は?」

回答ではなく解答なんですか。自分の意思を口にするのではなく、この状況で一番適した言葉を発しろということですか。

「んんっ、んんっぅぅうん」

「……え? 何言ってるか聞こえない」

今頃かよ!?

本当によくこれまで会話が続いてたな! ほぼ強制的に答えさせられてたのばっかりだったけど!

っていうか最初から猿轡なんてやるなよ! ややこしいんだよ!

「……仕方ない、取るか」

「んん……っは…………そんな仕方ないとか言うなら最初からつけるなよ」

義妹の慈悲により猿轡をようやく取られた俺は、義妹の質問に対する解答を口にする。

「参加します、参加しますよ。当日参加しなきゃ殺されるんだろ。なら仕方が無いから参加しますよ」

「……それで参加するの?」

「何で問い直した!?」

「……涙を流しながら、鼻水を垂らしながら、声が嗄れるまで額から血が出るほど地に頭をこすり付けて。そんな醜い土下座をするほどに参加したいの?」

「あぁー、はい、そーですね。参加したいですね。めっちゃ参加したいなー」

「……シキ。とりあえずもう一回地獄に叩き落として」

「ふざけるな! 一体俺の答えのどこに不満があるんだよ! 俺は正解を口にしただろ!?」

「……まず存在してることが不満なんだけど」

あ、はいそうですか。死ねと。参加するかどうか聞いといて死ねと。そう仰られますか。

何なんだこの義妹は。いつになく毒を吐きやがって。一発ぶん殴ってやりたい。

そうは思っても、体は椅子に縛り付けられてて動かない。だから義妹も暴言を吐きたいだけ吐いてるのだろう。俺はサンドバックか何かか?

「秋音! アタシは小月が居る事に不満なんてないぞ!」

シキはシキで、そんな事言ってくれるのは嬉しいんだけど抱き着いてる腕に力を入れるのをやめてほしい。体が分裂する。

なにも義妹も本気で言ってるわけではない。本気で俺に消えて欲しいと思っていたらC4爆弾でも持ってきて完膚なきまでに木端微塵に俺の体を粉砕するだろうから。いや、爆砕か?

「……分かったから、そろそろ離して上げないと死ぬよソレ」

義理の兄だからってソレ呼ばわりは無いだろ。ソレ呼ばわりは。

結局秋音の忠告を聞かなかったシキに骨をグキッとやられてもう一度地獄巡りをすることになったのは、まあ想定通りだった。

我、神の敵なる身の者なり

ならば我は聖なる夜を破壊する者なり

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