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NOISE.3  作者: 坂津狂鬼
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解放

襲撃作戦から30分後、さっそくシキに仕事が舞い込んだ。

仕事内容は、全滅した襲撃部隊の回収と蘇生。および偵察。

簡単に言ってしまえば、襲撃部隊の全員を蘇生させた後、そのまま進撃しろということだ。

シキとしてはありがたい命令だが、問題は誰が襲撃部隊を全滅させたのかにある。

こちらの策はすでに読まれており首輪を外されたオトアが迎撃したのか。

こちらの策は読まれておらず、急襲に対して仕方なく魔神が対応したのか。

それとも他の誰かが全滅させたのか。

そんな事は、現場に着けば分かること。

そして願うはその襲撃部隊を全滅させた人物がその場から立ち去っていること。

幸いにして、シキのその願いは受け入れられていた。

大量の鉄骨。

その鉄骨に潰された肉塊。

体から血液を流しながら横たわる屍。

それと意識を失った人間。

散らばる薬莢。

それ以外の物は現場には残っていなかった。

(……大きさの違う薬莢が二つ…………襲撃班員以外にも銃を使った奴がいた……?)

大量の鉄骨を見る限り、オトアの犯行ではない。

彼の力はそんな物理的なものに頼らなくとも十分な火力を保持している。

となれば当然、未だにオトアは雑音拒絶が使えない状態。

直前までこちらの奇襲に気付いていなかったと考えられる。

そうなれば犯人は魔神となるのだが、それでは大きさの違う薬莢が二つもあることがおかしくなってしまう。

襲撃班に配給された装備はアサルトライフルのみ。個人で装備を強化する者もいただろう。

だが、誰もアサルトライフル以外の武器を落としていない。

おおよそ装備を変える暇が無かったのだろう。その武器を手に持つ時間を与えないほどに敵は強かったのだ。

つまり発砲したのは、発砲できたのはアサルトライフルのみ。それ以外の薬莢が残っているのだとしたらそれは敵が持っていた武器もまた銃の類のものだからなのだろう。

唐突に、シキの脳裏にある出来事が思い浮かんだ。

夏の出来事。ある少年と共に、鑑優斗の家を訪れた出来事を。

「……おい、起きろ」

気絶していた一人を蒼い炎で燃やし、意識を強制的に戻させる。

相手が咳き込んでいるのにも構わず、シキは一つだけ問いかける。

「どんな奴にやられた?」

「コートを着た……変な髪の少年です…………」

「変な髪?」

「黒と白が混じったような……とにかく奇妙な雰囲気の少年でした」

「そうか、分かった」

その一言が終わると共に、シキを中心として波のように蒼い炎が渦巻き始めた。

数秒経つと炎は揺らめきながら消え、血も鉄骨も消失し、数名の人間が横たわっていた。

「お前はこいつら連れて戻れ。アタシはそいつを叩きに行く」

少年がどこへ消えたのか。それは襲撃班の人間も、誰も知るわけがなかった。

シキもそう。襲撃班を全滅させた少年がどこへ行ったのか、どこへ消えたのかは検討もつかない。

それでも前へ歩き出す。

直感と言っていい『何か』がその少年の居場所を教えてくれるのだから。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


同時刻。

二人の少女をそれぞれ抱えながら、オトアは地を駆けていた。

未だに首輪による能力抑制は解けていない。

故に自力で、自分の足で移動しなければならないのだ。

それも二人の少女を連れて。

「小月君、上手くやり過ごしたかなぁ」

オトアに片腕で抱えられながら魔神が問いかける。

「どう思う、音にぃ?」

「やり過ごしてるだろォさ。でなきャ、アイツが納得できないだろォさ」

「ふーん。ところでさ音にぃは小月君がやること知ってるの?」

「オレに害は無いッてことくらいはな」

「止めなかったんだ。意外」

「止めるも何も、オレの選択よりも上等だろォが。怪物のままのオレよりも」

オトアの回答に唯音は不満そうな顔を向けた。

正直な話、唯音にとってはオトアが何に責任を感じていようがどうでもよかった。

唯音にとってはオトアと一緒にいれるのならば、それでよかった。

どんな関係であろうと。兄と妹という関係でなくても、神と怪物という関係でもよかった。

とにかく敵対しようと愛し合おうと信頼し合おうと裏切り合おうと、一緒に居られればそれでよかった。

8年前の夏の頃の気持ちから変わっていないのだ、彼女の心の中は。

だが彼はきっと違う。それがもう言葉に表れている。

オトアは自分のことを怪物と言っているのだ。ある人物に近づいた証として。

きっとオトアは隼綛との決着をつけるつもりでいる。今更、魔神が何を言おうとも何をしようとも誰に何を縛られても、彼は隼綛と殺し合う。

もしオトアと隼綛が殺し合えば、今度は必ずどちらかが死ぬ。最悪はどちらも死ぬ。

オトアに死んで欲しくはない。だから止めたい。だけどオトアはそれを望まない。

だとしたら自分は、自分の意思よりも彼の意思を優先するべきなのか。

唯音が珍しく悩んでいると、唐突にオトアが駆けていた足を止めた。

「……随分と早いなァ、おい」

まだ姿は見えていないが、オトアは敵の気配を感じ取った。

数は数十名。先程の襲撃班がオトアたちを追いかけてきたのだろうか。

……いや、それはない。

小月を信頼してその可能性を断ち切る、というわけでもない。

確かにそれもあるが、何より過去の経験が強く思い出されたためだ。

8年前の魔神を襲撃してきた事件。最初から隼綛が出張ったのではなく傭兵らしき奴が初陣を切っていたことを思い出した。

「あった! 見つけた!!」

奥歯を噛みしめながら策を練ろうとしていると先程から静かだった雇い主(オーナー)が突然声を上げた。

「……どォした。場違いな声を出して」

「首輪のカギ、見つけたの」

「……ァ?」

「いざという時のためにカギをつけて作っといたの、付け替える前にね。まさか本当に使うことになるなんて思ってなかったからどこにやったか分からなかったけど、やっと見つけた」

「…………つまりアレか? 解放ッてわけか?」

「まあそういう事かな。緊急事態だし仕方が無いよ、いずれこうなるとは思ってたしね」

あっさりと首輪の解除に取り掛かる、雇い主。

ほんの数秒足らずで、爆弾であり拘束具であった首輪はガラクタと化し、地へと落ちる。

そしてそれと同時に、爆風が吹き荒れ、辺りで隠れていた敵を蹴散らした。

「さァて……まずはウォーミングアップと行きましょォか」

吐きそう

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