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NOISE.3  作者: 坂津狂鬼
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理由

そもそも何の話を聞いてたか忘れちまったよ。

本題って何だっけ?

「次、狐狩りが起こった時に何が起こるかについて説明するよ。メモの用意はいい?」

引き続き魔神が説明しようとしてくる。

その前に一つだけ重要な問いかけを俺はしなくてはならない。

「すいません、トイレタイムは無いんですか?」

「ありません」

案外魔神は厳しかった。校長先生の話くらいだぞ、トイレタイムが無い話は。

でも魔神が本題を最初から語らなかったということは、今まで説明してきたことが全て重要だからだろう。

そしてそれについて俺が何も知らなかったからだ。

「まずシキが殺される。【虚無の王】たちの計画によって。隼綛によって」

オトアも言っていた。隼綛白兎は死神を殺すというようなことを。

魔神も言うということは、おそらくほぼ確定なんだろう。避けては通れない道なのかもしれない。

それでも俺は…………。

「そしてオトアと隼綛が殺し合って、どちらかが死ぬ。まあここまでは被害が予期できるんだけど……問題は、鬼神が出てくるってこと」

「……あれ? 魔神はまだ生きてるから、鬼神は出てこないんじゃ?」

「魔神を瀕死まで追い込んで、死神を殺した。条件的には鬼神が来ても全然おかしくない。問題はその時の被害よ」

「被害って……絶対鬼神が勝つんだろ。だったら【虚無の王】と隼綛ってやつが死ぬだけ――――」

「国一個無くなる程度ならいいんだけど……大陸一つ無くなったら、さすがに被害がヤバいでしょ?」

……ヤバい。色々とヤバい。

とんでもない事になってる。俺が知らない間に、あと少しでとんでもない事が起こる。

「【虚無の王】って今、兄貴の体にいるのか……?」

俺の問いかけに魔神はすぐに答えてくれた。

「ええ。張空陽介の中に、【虚無の王】はいる」

「じゃあさ……もし、鬼神とやらが出てきて【虚無の王】を殺すとなったらさ」

「そうね。張空陽介も殺すことになるでしょうね」

……おいおい待てよ、鬼才。

まさかアンタは鬼神とやらに、運命の擬人化とやらに殺されるのか。

そりゃ2年前にアンタが死んだ時、俺は喜んだよ。

でもいつもそうだと思うなよ。今はシキと出会って、俺にも守りたいものがあって……兄貴の婚約者とか言ってる奴にまで会ってんだぞこっちは。

【虚無の王】の体を乗っ取られる前に何か企んでるんだろ。

予言なんてもの残して、死んだ後も電話なんてものを掛けてきて、それで何も手を打ってないなんて言われたって信じられるか。

俺にはまったく分からないけど、お前には今の現状すべてが理解できてるんだろ。

なのにこのままだと、【虚無の王】の好き放題やられて鬼神を出すことになっちまうじゃねぇーか。

そしたらお前は死ぬだろ。シキも死ぬし、挙句の果てには大陸一つ無くなるそうじゃないか。

また俺は何もかも失くすのかよ。兄貴がいなくなることで、また。

また大切に思ってる場所を奪われるのかよ。誰かに。

「さてさて、小月君」

俺が事態を把握したと思ったんだろう。

魔神は問いかけてくる。

「シキを裏切ってでも、シキを守りたい? 大切なものを裏切ってでも、大切なものを守りたい?」

兄貴が死ねば、また俺の大切な場所はすべて奪われる。

シキと出会う前と同じになる。何も無い状態になる。

でも、俺が裏切ったところで意味などあるのか。

裏切っても力はない。守る力も、傷つける力も、変える力も何も持っていない。

「力なら与えてあげるよ。ただし時間がかかる」

魔神にはどうやら俺の考えが読めているようだ。

だがその誘いには乗れそうにない。

どうせ魔神に力を借りたところで、暴走するのがオチ。

どうやったって、俺に力は――――。

「だからさ、力を与えるって言ってるじゃん。その形は私にもわからないけど、貴方に適切な力を与えてあげる。でもそれには―――」

「時間が掛かる。でもそれなら、シキを裏切る必要は無いんじゃないか?」

「あるよ。シキには知られちゃいけないだろうから。小月君が変えたいもの全てを」

……最悪だ。

この変態魔神、どうやら俺の心は全てわかるらしい。長年、俺の心の中にいたからだろうか。

でもだとしたら、一つだけ最後に問わねばならない。

「魔神。お前はさ……俺が変えたいもの全てを変えられる力を、俺に与えるのか?」

「与えてやってもいいよ。シキを守ると約束するのならば」

即答だった。確認作業のようなものだった。

最初から答えが決まっているものだった。

だったら……答えてやろう。

「ああ。俺は何を失っても、シキを守る」



だから俺は裏切った。

所詮は自分のエゴのため。

所詮は自分が失ってしまうのが怖いから。

所詮は力を欲したから。

所詮はただ守りたかったから。

だから裏切った。だからもう戻ることは許されない。

せめて全て終わるまでは、許されない。

まあ、どうせこの程度の理由で裏切る主人公ですけどね

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