難易度の高い恋
15分短編です
日曜日の昼下がり、人気の少ない公園で、俺は彼女に告白をした。
思わず目をつぶって手を出してしまったから、彼女の顔は見られない。
おなじ人物に、合計七回目の告白。これが成功すれば、俺は、ようやく彼氏になれる。
「・・・よろしく、お願いします」
彼女のか細い声が、そう呟いた。嬉しくなって顔を上げると、顔を真っ赤にした彼女と目が合った。
か、可愛い。
彼女は数か月前に転校してきた。誰がどう見ても美人で可愛くて、すぐに注目の的になったけど、一週間が経っても、彼女には同性の友達すらできない状態になっていた。
「私には七人の人格が居ます」
そう言った彼女の言葉に嘘はなかった。無口、ツンデレ、泣き虫、陰鬱、朗らか、オタク気質、おとなしい、それぞれの曜日に必ずそれぞれの人格が現れた。記憶の共有もない様で、月曜日に仲良くなったやつは、火曜日には忘れ去られていた。そのせいで、今までも友達すらできたことがないらしい。
俺は初日から彼女に一目ぼれしていたから、まったく気にはならなかったけど、クラスメイト達はどう接してよいかわからないといった様子で、彼女を敬遠しているようだった。これはチャンスだ、彼女と仲良くなって、あわよくば彼氏の立ち位置を獲得して、リア充の仲間入りがしたい。
初めはそんな下心満載だったけど、彼女と接するようになって、毎日変わる彼女の変化に、妙なハマり方をしていったのは事実だ。
だって考えても見てくれよ。同じ顔、同じ容姿、なのに性格や話し方が全く違う。次に何が飛び出してくるのか全く予想がつかない。そんな彼女を好きになるのに、時間はかからなかった。
俺は毎日彼女に話しかけ、ゆっくりそれぞれの彼女との距離を縮めていった。
一番手を焼いたのは土日の彼女だ。そもそも土日は、彼女に会うのが難しい。
でも俺は連絡先を交換して、毎日連絡を送った。
初めこそ警戒していた彼女も、俺との連絡を楽しんでくれているようだった。
そして今日、ようやく俺の願いが成就した。最後の日曜日の彼女からようやくOKを貰えたんだ。こんなにうれしいことは無い。
舞い上がりそうな心を抑えつつ「ありがとう」と言って抱き着こうとした瞬間、彼女の体が光り輝き始めた。
「な、なんだ!?」
彼女の頭上に、真っ白な服を着た天使のような女性が現れた。
「「あなたは、どの彼女を選びますか?」」
まるで頭の中に直接語り掛けてくるような声が響いた。
「選ぶって・・・」
「「一人の人間の人格は、一つしか選べません。さぁ、選択の時です」」
妙に厳かな曲が流れ、選択肢が浮かび上がる。
月、火、水、木、金、土、日。どの彼女も、大好きで、どの彼女も、俺の大切な彼女たちだ。
「選べないよ。だって、俺はみんな好きだから!毎日変わる彼女と一緒に過ごしていきたいんだ!」
どうする、どの彼女を選べばよい?どの選択が正解なんだ!?
選択肢を選べないままでいると、画面が急に切り替わった。
「「強欲、しかし正直な願い。良いでしょう・・・」」
そう言って画面が真っ白に輝いたかと思うと、天使のような女性はいなくなっていた。
「「あなたは彼女との人生を選びました。どうぞ末永く、彼女を大切にしてください」」End…
俺はコントローラーを置いた。エンドロールと物悲しい音楽が心に沁みる。
このゲームをクリアするのに一年近くかかってしまった。
一週間ごとに変わる彼女の好感度を毎日毎日上げて、たまに他の曜日の子を怒らせると、全員の好感度が下がる、そんな難易度の高いゲームだったけど、終わってみると、なんだかあっさりと終わってしまったし、燃え尽き症候群みたいな、そんな感覚が俺のナカに芽生えていた。
「・・・・・あ~・・・頑張ったぁ・・・・」
——恋愛ゲームならうまくいくのになぁ・・・——
待てよ?これもしかして、曜日ごとのEndも有り得るのか・・・?




