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王国追放

 元王国最強剣士レッズはキースター王国を追放され、各地を転々としていた。今はキースターの南に位置するロワネイア帝国まで赴いている。


 レッズは歴戦の戦士で腕が立つ。それはかつての戦争でも証明されていた。傭兵にでも戻って余生をゆっくり楽しもうかとさえ思っているのがレッズの心の内だ。


 そして、傭兵業を再開して、二月ほど過ぎたころ少し手持ちの金が出来たので旅仲間をと思い、奴隷市まで足を運んだ。


 色々と見て回るなか、気になる奴隷が出来た。


 それは、金髪の少女だった。歳は14くらいだろうか。


 「奴隷商。こっちの少女はいくらだ?」


 「ロワネイア金貨3枚でお売りします。」


 「ふむ。では買おうか。」


 少女はこの市場で安いほうだったし、レッズはしっかり吟味して選んだ。とりあえず、服を買ってやりたいが、その前に水浴びだ。


 レッズと少女は奴隷契約を交わしてある。主人の命令には逆らえない。よって、簡単には逃げられないため、木の根元にもたれかかり、目をつむって待ってやった。


 しかし、レッズは自分が奴隷を買うことになるとは思ってもみなかったのだった。


 「お前。名前はなんというんだ?」


 「キーナ・アス・フォルトゥナ...です。」


 「なるほど、かつての戦争で滅んだ名家のお嬢さんだったのか。俺はレッズ・ガイアだ。これからよろしく頼む。」


 「はい。」


 今度は服の仕立て屋に寄った。


 「あら、レッズさんが女の子を連れてるなんて、珍しいこともあるもんね。」


 「はは。まあな。この子の服を頼みたいんだが。」


 「よろしいのですか。レッズ様。」


 「なんか様はむず痒いなあ。そうだなあ歳も少し離れてるし、レッズさんとかで。」


 「わかりました。レッズさん。」


 「こっちへおいで。嬢ちゃん。見たところ主従関係みたいだけどレッズさんならきっと良くしてくれるよ。」


 仕立て屋のお姉さんのフォローのおかげか、少しキーナの緊張も溶けたみたいでレッズも安心した。


 「二日もらえたら服もできるわ。その間これを着なさい。」とピンク色のワンピースを貸してもらった。


 次は飯だ。キーナがお腹を空かせた様子だったので、少し急いで定食屋に向かった。


 キーナは肉や魚を美味しそうに頬張っていた。しかし、急に泣き出してしまう。


 「レッズさん。こんなに良くしてもらって。私どうやってお返ししたらいいか。」


 「気にするな。お前は確か魔法が得意らしいし、期待してるぞ。戦いになったら、サポートを頼む。」


 「はい。もちろんです!」空腹が満たされたからか元気そうだ。


 そして、今度は狩りに出た。キーナの魔法を確かめる意味でもだ。


 まずは手始めに弱い魔物を選んだ。スライムだ。


 キーナは詠唱を始めた。「火の精霊よその力今ここに顕現せよ!ファイアーボール!」


 ものすごい火力で、あっという間にスライムは倒された。スライムの魔石をポッケにしまい込み、レッズは思ったのである。これは、大物を拾ったかもなと。


 街に戻り、レッズとキーナはキーナの冒険者登録をしに、ギルドへ赴いた。パーティー名はサンライト。縁起のいいものにしておいた。


 冒険者登録を済ませ、さっそくクエスト依頼の掲示板を見ていると、オーク3体の討伐が目に入った。


 クエストランクC級、レッズはB級冒険者としての顔を持ってはいる。次に目に入ったのは、黄竜の討伐。これはまだきつい。


 「キーナ。お前はF級からのスタートだから、そうだなあ。このホワイトラビットを狩りに行くか。」


 レッズの言うクエストは難易度D級だが、二人のレベルを考えると、このくらいは余裕といったところか。


 そして、ホワイトラビットの討伐に向かった。

 

 ホワイトラビットは簡単に狩れた。そして、わかったことはキーナは火属性の魔法が得意ということ。


 報酬を手にし、キーナに美味いものを食わせてやった。


 そうして、月日が流れ、1か月が経った頃、思いもよらない知らせを受けることになる。


 それは、昔の知り合いで親しかったクレイツが馬を走らせてやってきたのだった。


 「レッズさん。やっぱりまだロワネイアにいたんですね。実はキースターとロワネイアが一触即発の危機なんですよ。戦争が始まるかもしれません。レッズさんはどうするんですか?」


 「この国を逃れるのも手だが....ロワネイアに付くよ。ここの人達には世話になったし、気にいったんだ。」


 「そうですか...レッズさんらしいですね。昔のよしみで知らせに来ただけですんでお気になさらず。」


 「ああ。助かったよクレイツ。お互い武運を。」


 「はい。それで、そっちのお嬢さんは?」


 「この子はキーナだ。俺の連れになった。」


 「お嬢さんも戦場に?」


 「無論だ。腕は立つし、いざという時は俺が盾になってみせる。」


 「レッズさんがいるなら問題なさそうですね。」とクレイツははにかんで見せた。

 

 クレイツは鞭で馬を走らせ、キースターへと帰っていった。


 「クレイツさん。良い人ですね。」


 「ああ、あいつは人ともすぐ打ち解けるやつなんだ。」とレッズはなぜか嬉しそうだった。


 





 一方で、キースターではレッズの事に関して波紋が広がっていた。


 「何、レッズが敵国につくだと!本当なのか!クレイツよ!」キースター王は怒り散らしていた。


 クレイツは内心であんたが追い出した張本人だろと突っ込んでいた。


 王国戦士長だったレッズのことを面白くないと思っている人物は確かに一定数いた。しかし、レッズはその人柄と尋常ではない強さで、周囲の人に愛されていた。


 故にキースター王を支持しない人物はクレイツを筆頭に少なからずいたのだった。それでも、戦争は行われるだろう。


 クレイツは一抹の不安さえ覚えていた。現王国戦士長グレスとレッズがぶつかるなんて想像したくなかった。それほど、二人の力は強大なのだ。


 最もレッズを追放した黒幕はグレスだとクレイツは踏んでいる。レッズが追放された経緯はこうだ。


 レッズは国家転覆を狙っているという噂が流れ、実際に証拠となる精霊の証言を王は得た。長年の功績を称え、命だけはとレッズを慕う人間が言うので、事なきは得た。しかし、レッズは傷心し、キースターを出たのだった。


 そう、クレイツはレッズが人々の幸せを脅かす真似なんてするはずがないと考えていた。しかも、今度はレッズが敵に回るのだ。


 




 ついに時はたち、キースターがロワネイアに宣戦布告した。戦争が始まるのだった。


 レッズとキーナは小部隊を任され、さすがの力で敵を薙ぎ払っていく。


 「すげー!これが元キースターの王国戦士長の力か。」兵士たちの士気はレッズのおかげで高い。


 そして、レッズは一番自分に求められている役割を知っている。


 それは、現王国戦士長である。グレスを倒すことだ。


 「キーナ。ここからはお前に部隊を預ける。これから俺は敵将と一騎打ちだ。」


 「レッズさん。無事に帰ってきてください。約束ですよ!」


 「ああ。」



 元最強対現最強の戦いが始まる。

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