呪いの真相
私の名前は、西園寺リュウ。西園寺グループの次期社長だ。
私には悩みがある。それは、子供が産めないということだった。
私自身が不能という事ではない。私には呪いが掛けられている。
亡くなった祖父が生前に受けた呪いは、子孫末代まで呪われるというものだった。
現代からは、想像もつかないことかもしれないが、昔は黒魔術を使った呪いが流行った時期があり、恐ろしいことに教会でも、黒魔術の儀式が行われていたことがあった。
当時、近くの教会へ寄付をしていた祖父は、黒魔術の存在に気がつき、止めようとして呪いを受けてしまった。
その呪いは祖父の血縁関係、末代まで続くという呪いで、ありとあらゆる災難がふりかかるというものだった。
祖父が呪いを受けたとき、すでに私は母のお腹の中にいた。母は亡くなる前、泣きながら私に詫び、病で先立っていった。
その後、事業がたちいかなくなった父も酒に溺れ、後を追うように亡くなった。
祖父に引き取られるも、引き取られた翌日から祖父の姿が見えなくなり、行方不明扱いとなった。
そんな私の様子を知ってかしらずか、知り合いの黒田家から使いが来て、屋敷全体に札が貼られた。
その札が屋敷全体に貼られていれば、呪いが無効化するというものだった。
ただ無効化する訳ではない。自分自身に更なる呪いが掛かったのだ。
そんな私に手紙が来た。滝川マリアを助けて欲しいと──。
私は依頼された内容に戸惑いながらも、手紙を読む内に、それが黒田家の考える最善の策だと知った。黒田には、命を助けて貰ったという恩がある。
手紙によると、滝川夫人は、何故かは分からないが、西園寺家の出身だと言っているらしい。
黒田からの手紙には、行方不明になった祖父の後妻だということが書かれていた。祖父は誰かに捕らわれた後に亡くなったらしく、亡くなる数年前に、女性に保護されていたということが書かれていた──その人物が、どうやら滝川夫人らしい。
黒田家は、一時的にでも構わないから結婚して彼女を守って欲しいと言っていた。
私は何度も断った。呪いがある限り、子孫を残すわけにはいかないと。