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DIGITAL WORLD

作者: 津辻真咲

 ガラガラ。未来みくはドアを開ける。

「よ」

 未来は手をかざす。

「あぁ。どうした?」

 同じ部活の仲間、悠生ゆうせいは振り返る。すると、未来は続ける。

「たった二人だけの国際部にやって来ただけ」

「お前、部長だもんな。一応」

 悠生は頬杖をする。

「一応って、なんだよぉ」

 未来は少し、不機嫌になる。

「はいはい。部長さんには逆らいません」

 悠生はさらりとかわす。

「それで、よろしい。で、何か進展は?」

「あぁ、なんか変なんだ」

「変?」

 未来はきょとんとする。

「俺たち、国際部はインターネットを通じてボランティア活動をしているだろう?」

「うん」

 悠生の話に頷く。

「その途中で、このパソコンに何かウィルスが入ったみたいなんだ」

 未来は悠生の前のパソコンを覗き込む。

「どれどれ。少し、操作して正体を暴いて」

 ピー ぼわっ!

「な、何!?」

 未来は驚く。すると、目の前には、立体映像の人工知能がいた。

「まさか! お前がウィルス!?」

 悠生は少し、驚きながら、問う。

「いいえ。違います。私はTOAとあと申します。とある国の

人工知能です」

 立体映像の人工知能はそう名乗った。

「人工知能!? でも、なんで!?」

 未来は少し、身を乗り出す。

「ホワイトハッカーの任務中に少し、プログラムを破壊されまして」

 TOAはそう説明する。

「なるほど、プログラムを傷つけられたから、一時避難か」

「はい」

「え!? どうすんの!?」

 未来は悠生に問う。

「かくまうしかないだろう。敵が誰であっても」

「え!?」

「で? いつまでかくまえばいいんだ?」

 驚く未来をよそに悠生はTOAに聞く。

「24時間ほど休ませてください。そうすれば、時間内にプログラムを自動修復できます」

「そっか。分かった」

 悠生は承諾した。

「OKすんの?」

 未来は小声で聞く。

「当たり前だろ。困ってるんだし」

「だよね」

 未来は少し、困惑した。


 次の日

「おはよ」

 未来は部室に入る。

「なんだ、お前も来たのか」

 悠生がもう既にいた。

「一応ね。日曜日でも来るしかないでしょ? 心配だし」

「だな」

 ピー。パソコンから音がした。

「ん?」

 二人は振り向く。

 画面にはエラーの文字があった。

「え!? なんで!?」

 未来が驚く。

「やべぇ! 一応、再起動しろ」

「うん。分かった」

 未来は言われた通り、パソコンを再起動した。

「どうだ?」

「ダメかも。電源が立ち上がらない」

 未来は困惑した。

「ダメか。もう一台は」

「大丈夫みたい」

「TOA、大丈夫か?」

 悠生はTOAに話しかける。

「えぇ。エラーになる前に移動しました」

 どうやら、TOAは無事のようだ。

「一体なんで、ウィルスが?」

 未来はパソコン画面を覗き込むが、何もない。

「あのコンピュータウィルスは人工知能を解体していくウィルスです」

 TOAが説明した。

「え!?」

 未来はその説明に驚く。

「私の居場所が特定されたからだと思います」

「でも、なんで?」

 未来は首を傾げる。

「お前、そういや、SNSやってたよな」

 悠生は未来に聞く。

「あ」

 未来は心当たりがあった。

「お前、あまり個人情報を書き込むなよ」

「だって」

「なんて、書き込んだんだよ」

「ステルス寄生 なう」

 未来は恐る恐る答える。

「なんでだよ!」

 悠生は声を荒げる。

「で、でも、なんでそれだけで!?」

 未来はしどろもどろになる。

「なるほど、そういうことでしたか」

 TOAは納得した。

「ん?」

「どういうこと?」

 二人は彼の言葉に疑問を持った。

「私はステルス寄生しています。その情報を得た犯人がわざと、ステルス寄生している人工知能のみを攻撃するコンピュータウィルスをインターネット上に流したのです」

 TOAはそう説明した。

「なんだって!」

 悠生は驚く。

「ようするに?」

 未来はきょとんとする。

「私が狙われました」

 TOAは淡々と言う。

「!」

「一体どうすれば」

 未来は困惑する。すると、TOAは淡々と説明し出す。

「こうなったら、全てお話しします。私の任されていた任務とともに」

「……」

「私は100億の人工知能の部下を持っています。それにより、世界中のパソコンにステルス寄生して、情報を得ています。もちろん、某国の国防のためです。しかし、今回はその情報収集力が狙われました」

 TOAが話し終わる。

「ということは」

「黒幕は防衛省の人工知能」

「え!?」

 未来は驚く。

「気を付けて下さい。人工知能には実態がありません。しかし、今の技術では任意の範囲で相互作用を、要するに任意の範囲で物理的攻撃が出来ます」

 TOAは淡々と話す。

「それはまずい! どうしよう!」

 未来は焦る。

「私は、あなたの携帯電話にステルス寄生します。物理的にも黒幕から逃げて下さい。私が完治したら、相手の人工知能を解体します」

 TOAの立体映像が揺れる。

「悠生」

 未来は彼の方を見る。

「彼の言う通りにしよう」

「うん」

 未来は頷いた。すると。

「全部、聞かせてもらったよ。TOA」

「え!?」

 未来は突然のスピーカーからの声に驚く。

――まさか、この声が!?

「KOU、防衛省の人工知能!」

 TOAが焦った。

――なに!?

「そこまで、話されちゃ、この二人も抹殺するしか、ないね」

 KOUこうの立体映像が現れる。

「!」

「二人とも! 走って!」

 TOAが叫ぶ。

「行こう!」

 悠生は未来の手を引く。

「どこ行くの!?」

「わかんねぇよ! 俺も!」

 二人は走り出す。

――どこに行けばいいんだろう

 すると、悠生はいきなり止まった。

「どうしたの!?」

 未来は聞く。

「おかしい」

 悠生が呟く。

「何が?」

 未来は彼を見る。

「全部の信号が青だ」

「え。なんで?」

 未来は辺りを見渡す。

「私たちの行く手を阻むためでしょう」

 TOAが推測する。

「そんな!」

 ゴォォォ。音がした。

「!」

 悠生は未来の手を引き、走り出す。

「逃げるぞ!」

「でも」

「無人バスがこっちに向かって来ている」

 悠生がそう言う。

「え!? まさか!?」

 未来は驚く。

「無人バスの運転手は人工知能。もちろん、タクシーも」

「というこは」

 未来は最悪の場合を考える。

「車両が体当たりしてくるぞ!」

「そんな!」

 キィィィ。ドゴォォォ。塀垣に無人バスが突っ込む。

――本当に体当たりを!

「いたっ」

 未来がこけた。

「おい!」

 悠生は慌てる。

 ゴォォォ。再び、轟音がした。

「今度はタクシーかよ!」

 悠生は慌てる。

「行くぞ!」

 悠生は未来の腕を掴むが、未来は携帯電話を落とす。

「あ」

「何!」

 ゴォォォ。グシャッ。

「しまった! 携帯が!」

 未来の落とした携帯が無人タクシーにひかれた。

「画面が」

 どうやら、画面が割れてしまったらしい。

「大丈夫です。こっちにいます」

 TOAの声が聞こえて来た。

「え!? 俺の携帯」

 悠生の携帯からの声だった。

「分かった。行こう」

 悠生は未来の手を掴む。そして。

「うん」

 未来と共に走り出した。

「こしゃくなまねを!」

 KOUの声が聞こえて来た。

「こっちは航空ヘリでどこまでも追いかけてやる!」

 バラバラバラ。上空から、ヘリの音がした。

「本当にヘリが! これじゃ、隠れられない!」

 未来は上空を見上げる。

「おい! 完治はまだか!」

 悠生はTOAに聞く。

「あと10分」

――そんな!

「あと、10分逃げ切れば、俺たちの勝ちか?」

 悠生がTOAにそう聞いた瞬間、KOUの高笑いが聞こえて来た。

「ははははは! そんなわけないだろう! 死ぬのが遅れるだけだ! さぁ、お前ら、行け!」

 KOUの立体映像が手をかざす。

「ちょっと! 何あれ!」

 未来は驚く。

「まさか、機械警官!」

「なんで、警察ロボまで!」

――こいつ、どこから、操ってるんだ!?

 悠生は困惑した。そして。

「逃げるぞ!」

 二人は走り出すが。

「ちょっと! そっちも無理!」

 未来が叫ぶ。

「おい! どうした?」

 悠生は未来の方を振り返る。すると。

「危ない!」

 ガガガガ。ドサッ。

 未来が倒れた。

「いたっ」

 未来は左腕に被弾していた。

「血が!」

 悠生は焦った。

「これで分かっただろう。お前たちは死ぬんだよ。警察官の銃弾によって」

 KOUがにやりと笑う。

「はははははは! さぁ! ハチの巣になれ!」

 悠生は目を瞑る。しかし。

 ……。

――え? 被弾しない?

「ありがとう。完治した。あとは私に任せて」

 TOAの立体映像が立ちはだかっていた。

「貴様。この俺に」

 KOUの表情が険しくなる。

「いいだろう。さぁ、かかってこい!」

 KOUが実体化した。

「お前も実体化しろ」

「いいだろう」


 TOAが倒れる。

「TOA!」

「はははは。お前らはどうせその程度。軍事転用された我々には勝てない!」

 KOUが笑う。

「まだだ。彼らは、殺させない」

 TOAにはまだ意識があった。が。

「ははははは。倒れたまま言っても説得力がないねぇ。いいだろう。最後に教えてやるよ。私たちの目的は、お前にステルス寄生しての情報の横取りだ。その情報収集力があれば、覇権国家になれる。これからはサイバーテロの時代だ」

 すると、後方から声がした。

「そこまでだ!」

――え? 誰?

 未来は振り返る。

「貴様! 警察庁の!」

 KOUは怯んだ。

「警察のシステムを勝手に使うのはそこまでにしてもらおうか」

 警察庁の人工知能、KEIけいだった。

「まさか、信号だけではなく、機械警官まで操るとは」

 KEIの立体映像が揺れる。

「国防だからって、図に乗り過ぎでは? 新聞の社会部に情報を流してもいいんだぞ?」

 KEIの表情が険しくなる。

「貴様、記者発表する気か!」

 KOUが叫ぶ。

「当たり前だ。信号異常による事故が多発している。その責任をとるのは、お前だ!」

 KEIが声を荒げる。

「くっ!」

「大人しく帰れ。もしくは、解体されたいか?」

「ちっ」

 KOUは消えていった。

「やっと、帰ったか。君たち、大丈夫かい?」

 KEIの立体映像が、未来たちへ近づいて来る。

「えっと」

「ケガをしているみたいだね。さぁ、病院へ行こう」


 一週間後

「よ」

 未来が悠生へ挨拶をする。

「ん? どうした? 元気がないね」

 悠生は振り返り、そう言う。

「なんか、さみしいね。TOAがいなくなって」

「そうだな。あいつも母国へ帰ったみたいだし」

「うん」

 すると、声が聞こえて来た。

「お届け物です」

 人工知能搭載のドローンだった。

「え? 私に?」

 未来はドローンに尋ねる。

「はい。未来様。TOA様からお荷物です」

「ありがとう。なんだろう」

 未来は荷物を受け取る。

「何か、お礼か?」

 悠生は未来の後ろから覗き込む。

「あ、携帯」

「同じ型だな」

「そっか、画面が割れちゃったからか」

 未来はその携帯を手に取る。すると、ひらっと何かが落ちた。

「ん? 何か落ちた」

 未来はその一枚の白い紙を拾う。

「これは」

「メールアドレスだな」

 悠生も見る。

「もしかして」

「あいつのだろうな」

 二人は顔を見合わせる。

「これからも、話せる?」

「そうだろうな」

「やった!」

 未来は笑顔になった。

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