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セフィロンの孤島  作者: 凛砂R
2/5

「透徹にして愚昧なるドラキュリア〈2〉」

※グロ注意

※一応、百合注意



横倒しの視界の中、手のひらを開く、閉じる、力を入れて握る。どうやら力が戻ってきたようだ。


「どうですか?気分は落ち着きましたか?」

「あ、はい…なんとか」


メイリは、ソファーで横になっていた体を起こす。

ここは、メイリの部屋。

先ほどまでザキュラとのやり取りがあった部屋の隣に位置する。石造りなのは同じだが、他とは違い、一目でわかるような生活感があった。



「もう少し休んでいてもいいんですよ?」

そうこちらを気遣うのは、傍の椅子に座る、ボブより少し長いくらいの茶髪をした小柄な少女。執事服を身に着け、可愛らしいながらも精悍な印象を受ける。


彼女は少し陰りの見える微笑みを浮かべたまま、続ける。


「無理をして体調を崩されたり、精神に異常をきたされても困りますし」



言い方は優しげだが、定型的な言葉であり、親切心から心配しているわけではないだろう。メイリはそれを知っている。

万が一、本心だったとしても、素直に受け取れるわけがないが。

後半が本音で、メイリがいなくなるとザキュラの世話をできる者がいなくなって困る、という心配だ。

それに、どちらにせよここでこの言葉に甘えるのは、お互いに損になる。



「…いえ、大丈夫です。まだ、やることがあるので…」

「…そうですか」

微かに、どこか安堵したような語調を感じる。メイリは、そういった人の感情変化に敏感だから、隠そうとしても、わかる。

少女は椅子から立ち上がり、メイリに背を向け、ぐっと伸びをした。



「あの…ユカさん、さっきは、ありがとうございました」

壁掛け時計を眺めているその背に向けて声をかける。

「わ、私、パニックになっちゃって…」


ユカと名前を呼ばれた少女は苦笑いを浮かべて振り向いた。

「…「秘書長」として、無視するわけにもいきませんでしたから」


自分の役職を静かに強調した。

ああ、また気に障ることをしてしまった、と後悔が胸をよぎる。いつもそうなのだ。



「あ…すいません、秘書長…」

特に返答はなく、メイリは彼女の背中を見ているしかなかった。

ザキュラのもの程ではないにしろ、上司の沈黙も精神的に疲れるものだ。

静寂の中、時計の音だけが嫌に大きく聞こえた。



この目の前の小柄な、10代前半くらいに見える少女は、大人しそうな見かけによらず、このセフィロン全ての秘書をまとめる秘書長なのだ。おまけに、絶大な権力を誇る直属親衛隊を統べる統帥でもあるのだから、見た目以上にずっと恐ろしい。



メイリは、肩書きとしてはザキュラの秘書であり、ユカを長とする秘書団の一員である。

つまり、ユカはメイリの直属の上司だ。

そして、メイリをザキュラの元に配属させた張本人でもある。

だが、時々助け舟を出してくれたりするし、ついさっき、哀れなメイリを救ったのもまた彼女だ。

一体、どういう感情を向ければいいのか。答えはいつも出ないまま。






1時間程前。


しばらくの間、メイリは言葉もなく、ただ蹲ってすすり泣いていた。

ザキュラは、困惑し、ただメイリを見下ろすだけだった。


それから数分ほど経った時、数回、部屋にノックが響く。沈黙を挟んで、もう一度。しかし、誰も動かず、痺れを切らしたようにドアが開く。


入ってきたのは、大きな麻袋を片手に抱えたユカだった。

ドアを開けた彼女の視界が捉えたのは、蹲る緑髪の少女と、それを見下ろす赤髪の少女。


ザキュラはどうしていいかわからないという顔で、まるで助けを求めるようにユカの方を向く。

メイリは、人が入ってきたことに驚き、泣き腫らした顔を上げる。



ユカは、少し目を見開き、小さく、だが確かに、舌打ちをした。メイリには、聞こえた。




事態の収拾はすぐについた。



麻袋をドサリと床に落とすと、つかつかと、怖い顔でザキュラの前に大股で歩み寄る。

後一歩の距離まで近づいたところで、僅かに腰を落とし、

そして―― 一閃。


強烈な右フック。

頭に拳が吸い寄せられるように命中。

ベキャッと嫌な音が響く。

無防備なザキュラの左側頭部に、文字通り、拳がめり込む。



彼女の体は仰け反るように吹っ飛び、勢いよく石壁に叩きつけられる。

「ぁ…がッ」

絞り出すような呻き声と共に床に崩れ落ち、そのまま動かなくなった。



確実に、頭蓋骨が叩き割られている…

一目でわかる程、彼女の赤髪から覗く側頭部は、拳の形に陥没し、砕けた骨が見え、どくどくと真っ赤な血がとめどなく流れ続けている。

左目は眼窩から視神経が見える程飛び出しているし、右目は白目を剥き、血色の泡を吹いて僅かに痙攣している。

おまけに、陥没部からクリーム色っぽい脳と、脳漿が溢れ出ている。




どう見たって死んでいる。即死だ。……もしも、彼女が人間だったなら。


「…はぁ…ザキュラさん、動けるようになったら自分で掃除してくださいね。それまで、反省でもしていて下さい。…まぁ、あなたに反省できるだけの知能があればですけど」


横たわるザキュラに、ユカは何事もなかったかのように声を掛ける。だが、声音とは裏腹にその目は酷く冷徹に、赤塗れになった少女を見下ろしていた。



メイリは、ザキュラの惨状には驚きもせず、ユカを見つめていた。

自分がなすすべもなかった相手が、彼女の拳一発で倒れ伏したのだ。

押しつぶされる程の恐怖も薄れて、代わりに妙な安堵が身を包む。


「あ…あ…」

なにか言わないと、と声を出すも、まだ、口が震えてうまく動かない。

そんなメイリに、ユカは困ったような、疲れたような、微笑みを向ける。



「あぁ…ザキュラさんならこれくらい数時間もすれば動けるようになるでしょう。だから、大丈夫ですよ」

「え、えと…いえ、そうじゃ…」

そうじゃない。だが、言いたい事の整理がつかず、しどろもどろになる。


「それよりも…」

と言いつつ、ユカの視線はメイリの足元に。

「まずは着替えましょう?」


そこには、石畳に作られた薄黄色の水溜まりと、濡れたスカート。

「…あっ!」

…自分が失禁していたのを忘れていた。

今になって、羞恥心が湧き出してきて、メイリは手で顔を覆った。

さすがに、お漏らしをするような歳ではない。しばらくユカと目を合わせることが出来なかった。





それから、身体に力の入らなかったメイリはユカに抱きかかえられて自室に運ばれた。介護のように着替えまで手伝ってもらい、子供のようにソファーに寝かされ、今に至る。





メイリは、沈黙の中、ぼんやりと、つい先ほどまでの出来事を反芻していた。羞恥心も反芻されて戻ってきたが。

そこで、ふと疑問に思い至る。


「あ…あの…そういえば、なんで秘書長がアレを運んでいたのでしょうか…?」

そういって指さしたのは、部屋の隅に置かれている、ユカが抱えてきた大きな麻袋だ。



ユカは、ちらりと袋に目を向ける。

「今日はミューリが急に呼び出されてしまったので。代わりもいなかったので私が持って来ました」

「あ…そうでしたか…ミューリが。…わ、わざわざありがとうございました。」


見られてはいないが、一応頭を下げる。

ミューリとは、いつもアレを運んで来る少女で、メイリが安心して話せる数少ない知り合いであり、唯一の友達だ。

急に呼び出されたというのが気になるが、それは今度直接聞けばいい。

今は…



「あ、あの、秘書長。えっと、今回の件は…」

いかにも恐る恐るといった調子で、声を震わせながら尋ねる。


「はぁ…この事は私の方で内密に処理します。ですので、他言無用です。いいですね?」

ユカは溜息をつきつつ苦笑いを浮かべてそう言う。

だが、目は笑っていなかった。


「は、はい…もちろんです」

その目の気迫に、つい姿勢を正してしまう。


メイリとしては、職務放棄して泣き喚き、ザキュラを刺激してしまったことについて報告され、解任されてしまうのではないかとひやひやしていたので、ありがたい話だ。

なにせ、メイリは秘書団の中で一番の落ちこぼれ。誰もやりたがらないザキュラの秘書を務める事でどうにか生きていられるのだ。

これを解任されてしまうと、次はどんな役立たずでもできる、「ザキュラに生きたまま喰い殺されるだけ」という役目を与えられることになる。


だから、メイリはどんな失敗も報告されるわけにはいかない。自分の命のために。


だが、どうにも、これは後から何か言われることになりそうな嫌な予感がする。



「では、私はそろそろ行きます。後はお願いしますね」

そういうと、彼女はそそくさと部屋を出て行ってしまった。


薄暗い石造りの建物は、人がいなくなっただけで途端に寒々しく思えてしまうものだ。

とはいえ、緊張から解放されたメイリはホッとした。

ユカが居るというだけで心が休まらないので、それより寒々しい方がマシだ。




さて…メイリにはまだ仕事がある。

それが与えられた職務の中で最も憂鬱なものなのだが。

大きな溜息を一つして、ゆっくり立ち上がる。


そして、アレの入った麻袋を、ズリズリと引きずってソファーの前まで持ってくる。

片手で抱えていたユカがおかしいだけで、この袋は非力なメイリにとって途轍もなく重い。

数十キロはあるのだから。

…ミューリはいつもどうやって運んでいたのだろうか。



太い革紐を解き、袋を開ける。

中から透明なビニール袋がのぞく。

なぜ重いのか、見ればわかる。

この袋に詰められているのは―――


バラバラになった人の死体。

それが、丸ごと入っているからだ。


「うぷっ…」

思わず顔を背ける。

ビニール袋の封を開けただけで、血と脂の濃厚な臭いが漂ってくる。

これがザキュラの食事だ。

彼女の好みに合わせ、なるべく新鮮なものを血抜きせずに解体するので、余計に臭いが強い。

だいぶ慣れたとはいえ、それでも不快感は拭い去れない。


だが、やらねばならない。メイリはゴム手袋とマスクを付け、中身の確認を始める。




大体は骨を取って部位ごとに小分けにされている。それぞれビニールに部位の名前が書いてあるため、確認は容易い。

そして、寸胴鍋のような金属製のケースが二つ。

一つは内臓、もう一つは血である。血は言わずもがな、内臓もザキュラの好物であるのだ。

後は、肉から剥がすのが難しい肋骨と骨盤が、皮膚付きの状態で鎮座している。内臓は大方抜かれているが、それでも一目で人間のものだとわかってしまう。それが、生々しくて恐ろしい。



そして…極めつけは、底に置かれていた、頭部だ。

メイリは顔をしかめて、少女の生首を、取り出す。

…重い。

脳や頭蓋骨どころか、髪も抜かれていない。首の断面には蓋がつけられ、血が漏れ出ないようになっている。

今にも目を覚ましそうな程、傷のない、綺麗な生首だ。目が閉じられているのがせめてもの救いだろう。



これは、食事中の観賞用兼、デザートのようなものなのだそうだ。

メイリには全くもって理解ができないが、どうやら人食い達(セフィロンにはザキュラ以外にも人食いが結構いる)は「食事」の外見も気にするそうで、好みの顔をした人間を食べているという実感を得るために、その顔を鑑賞しながら食事中をするのだという。

もちろん、最後にはそれも食べる。


…本当に狂っている。

本来、メイリにとって一生関わりたくない世界だったのだが。


とにかく、そんな訳で、この少女もかなり容姿が整っている。肉は、脂肪が少なく、色が鮮やかで肉質も良い。恐らく、ザキュラは気に入るだろう。

メイリは、食べた事こそないが、今まで数えきれない程、少女の死肉を見てきて、段々とそういうのがわかるようになってきた。…知りたくなかったが。

そんな事に段々と慣れてきている自分が怖い。


メイリは思わずため息を付く。

内容物の確認は済んだが、次は「これ」を料理しなければならない。

そして、キッチンがあるのは先ほどの部屋だ。

誰かが今のメイリを見れば、全身から真っ黒な憂鬱オーラを放っているように見えるだろう。

そこでふと思い出す。そういえばザキュラはどうしているだろうか。もう1時間と少しくらい経っている。


耳を澄ましても、物音は聞こえない。できれば、食事が出来るまで動けないままでいて欲しい、と心の底から願う。

だがもし、動いて勝手にどこかへ行ってしまったのならそれはメイリの失態だ。ザキュラが外へ出て何か問題を起こしてしまえばメイリの監督不行き届きとして、責任を取らされてしまう。



そんな訳もあっていつまでも躊躇っているわけにもいかず、メイリは意を決し、ドアをゆっくりと開ける。


静かだ。

壁際に行くと、ザキュラは、まだ血塗れのまま、己の血だまりの中に倒れていた。メイリは少しホッとしつつ、様子を見る。

傷はある程度治っており、飛び出ていた左目も眼窩に収まっている。

だが白目を剥いているし、意識は戻っていないみたいだ。


「…よかった」

つい安堵の言葉が漏れる。

とりあえずさっさと料理を済ませてしまった方がいい。食事の入った麻袋をキッチン前まで引きずってくる。


それから、メイリは自室から一冊のノートを持って来た。

表紙には「ザキュラ様のお世話記録」と丁寧な文字で書かれている。

これは、メイリの前任者が残したものであり、鈍くさく不器用なメイリがザキュラの秘書を務めてこれたのは、ほとんどこのノートのおかげだ。

大事な命の恩人、いや恩ノートである。


メイリは迷いなく、目的のページを開く。そこは、食事のメニューの項目。

さて、何を作ろうか。

とはいえ、ザキュラは人間の少女の血と肉であればどんな料理であっても食べるので、凝ったものである必要はない。それどころか調理せずに丸ごと出しても何も言わずに食べるだろうが、事情があってそうする訳にもいかないのだ。

そして、ザキュラが起きてきたのは実に一週間ぶりのことである。開口一番食事をねだるのだからそれなりに空腹のはず。

量は多めにしておこう。


この仕事はメイリの職務の中で最も重要だ。なぜならば、ザキュラを空腹のまま外に出したりすれば、たちまち彼女は外で生きのいい獲物(にんげん)を捕らえ、その場で食事を始めるだろう。外に出さなかったとしても、部屋の中で空腹の限界を迎えれば、捕食されるのは唯一ザキュラと生活を共にしているメイリに他ならない。


それらを防ぐため、起きてきた日は欠かさずに食事を出さなければならない。

とはいえ、それで完全に防げる訳ではなく、時々は生きたままの少女を捕食させてその欲求を発散させる必要もあるのだが。

セフィロンに人食い多しといえどもこれだけ手がかかるのはザキュラだけだ。

…彼女は本当に難儀な存在である。


しばらく、そのページ上を視線が右往左往したが、

「…よし」

という言葉と共にノートをパタンと閉じる。

作るものは決まった。さっさと終わらせてしまおう。



メイリは、キッチンに立つ。見た目は完全に竈なのに、ガスコンロとグリルがついていたり、隣に電子レンジが置かれていたりと、いつ見ても珍妙だ。流しで手を洗いつつ、そんなことを思う。

本来火を焚く部分である下の空間は道具入れになってしまっている。

そこから鍋など必要なものを出したら、調理開始だ。


献立は、腿肉のステーキ、腕肉の骨付き刺身、内臓の血液スープ。これくらいでいいだろう。

まずは煮込む必要のあるスープから。



内臓は麻袋の中の円筒形のケースに入っているのだが、これは重くて持ち上げられない。

周りの肉をどけ、袋の中で蓋を外す。


この中に内臓のほとんどが雑多に詰め込まれている。絵具をまき散らしたような、乳白色と暗い赤のコントラスト。

すぐに、濃厚な血の臭いと、うまく言い表せない生臭さがマスクを貫通してくる。

「うぇ…」

メイリも最初の頃はよくこの臭いで嘔吐していたが、ここしばらくはなんとか吐かずにすんでいる。



ゴム手袋越しでもわかる、ムニョっとした気持ち悪い感触に顔をしかめながら、肝臓と腸を引きずり出す。

まな板の上に乗せ、半分ほどの大きさで切り、後はケースの中に放り込む。

腸などは数メートルもあるのだ、さすがに全部使うわけではない。



しかめっ面のまま、使う分を全部ぶつ切りにしていく。

包丁が手に伝えてくるなんとも言えない手ごたえがこれまた気持ち悪いのだ。


手早く終わらせると、次は鍋を火にかけ、小さく白い正方形の塊を放り込む。

牛脂のようにみえるこれは、言わば人脂。

人間の脂肪を抽出して固めたものだ。

メイリには牛脂と何が違うのかわからないが、これも人間由来のものでないとダメなのだそうだ。



脂が溶けたら、すぐに内臓を入れて軽く炒める。多少火が通ったら鍋に血を注ぐ。

後はすぐ弱火にし、時折混ぜつつ、少し温まればもう完成だ。あまり熱すると血が固まってしまうため、火を止めて放置すればいい。


味付けも必要ないし、調理自体は楽といえば楽なのだが。

メイリはどうにも、血の赤色をずっと見続けることができない。

その上、部屋に充満する濃厚な血の臭いには、不快を通り越してうんざりしてくる。



メイリが、何度目とも知れない溜息をついた時、後ろで何かが動いた気配がする。

まあ、ザキュラしかいないのだが。

振り向くと、立ち上がったザキュラと目が合う。無表情のまま、赤い双眸がこちらを見てくる。

血塗れのままだが、傷はもう完全に治っているようだ。



「あっ…」

メイリは反射的に顔を背けてしまうが、それに気づき慌てて向き直る。

「あ、ザキュラ様…お、おはようございます」

そう言って、目を合わせずにおじぎをした。


ザキュラはきょろきょろと部屋を見回している。恐らくユカを探しているのだろう。


「…えと、ユカさんなら、もう帰りましたよ」

メイリが恐る恐る声をかけると、赤い瞳がこちらを向く。


「そっか。ご飯できた?」

反応は薄いが、どうやら合っていたらしい。

「ええと、も、もう少しかかるので、待っていて下さい」

ドクリと、メイリの脈拍が上がってくる。


「わかった」

ザキュラはそういうと大人しく椅子に座った。

なんだかんだ、彼女は基本的に素直だ。だというのに、ユカも手を焼く程に扱いづらいのだから一周回って感心さえ覚える。



ザキュラは座ったまま、じっとこちらを見ている。

…非常に居心地が悪い。

「…えっと」

彼女の顔を見ると、無言でじっと見つめてくる。

悪気は全くないのだろうが、メイリからすれば恐怖でしかない。

だが、恐らく言っても聞かないだろう、と経験から判断したメイリは、観念してさっさと料理を終わらせてしまうことにした。


腿肉はレアくらいにサッと焼くだけ、腕肉に至っては切って盛り付けるだけ。

なのだが、委縮したメイリの手は震えを止めてはくれず、普段の倍くらい時間がかかってしまったのは言うまでもない。



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