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カチカチ山 2

「サンキュー、サンキュー! ドウモ、ゴカイガ、トケタ、ワタシ、ホント、ウレシイ、アルデス!」


先ほど地面に叩きつけられて、意識を失った若い男は、こころから喜んでいる様子である。


地面に叩きつけられて、意識を失った男は、亀の事務所に運び込まれていた。


意識を失った男は、亀の事務所のソファーに寝かされている。


男は、まだ起き上がれないでいる。


『オールワークアンドノープレイ(働くばかりで娯楽はなし)』と言う名の事務所のオーナーの亀は、応接テーブルの上の皿の上にのせられている柿の種子を興味津々で見つめている。


皿の上の柿の種子は、二個あった。


一個は、乙姫という女性が持っていたもので、もう一個は、派手に地面に叩きつけられた男が持っていたものだ。


亀の視線の先で、柿の種子たちは、交互に振動をしては止みを繰り返していた。


亀には、二個の柿の種子がなにか会話のような交流を行っているように見えた。


「アノトキ、コレラノ、カキノ、シュシハ、オタガイ、ツヨイチカラデ、ヒキツケ、アッタノデス」


「ソコデ、ワタシホント、ガンバリマシタ。デモ、ダメダッタネ! ワタシノ、モッテイタ、カキノ、シュシハ、オトヒメノ、カキノ、シュシヲ、メガケテ、トッシン、シマシタ。ソーリー。スミマセンデシタ。ケッキョク、ワタシマデ、オトヒメ二、ブツカッタノデス」


乙姫は、まだ納得していない。


「それでも変ですね! 自分が悪くなかったらどうしてあの時、逃げたりしたのですか、私には納得できません」


「ワタシ、コノセカイニ、ヤッテキテ、ジカンガ、スギテ、イマセン、ニューカマー、シンジンデス! コノセカイノコト、マダマダ、リカイ、デキテマセン」


「ダカラ、コワカッタ。デキルダケ、モメゴトハ、サケタカッタ」


「ソレニ、ナゼカ、ワタシ、コノセカイノコトバガ、マッタク、デキマセン」


「ダカラ、ワタシ、フレンド、デキナイ。ヒトト、クチハキカナイ」


亀は、若い男の話を止めた。


亀は、自分がはなしだした。


「お嬢さん、確か名前は乙姫とかいったよね」


「ええ」


「あんた、この男のコトバ、理解できているみたいだね。俺は、このコトバをよく知っている。このコトバは、時間の流れに縛られずに旅することができる人たちの世界で話されているコトバなんだ」


「実は、俺もな、このコトバは、馴染みなわけだ。俺も、このコトバが使われている土地に生まれ、このコトバが使われる土地で育った。つまり、タイムトラベラーの国の人間なんだ。この男が話すコトバは、タイムトラベラーの国のコトバなんだ。この男は、タイムトラベラーの国の出身だろう」


「そして、この男のコトバを理解出来るあんた。ということは、乙姫さんとやら、あんたもタイムトラベラーというわけかい」


「……」


乙姫は、うなずいた。


乙姫と、亀と、タイムトラベラーの國のコトバを話す若い男。三人は、互いに顔を見合わせた。


亀は、あきれたように言った。


「この世界の、この街の、この部屋に、三人のタイムトラベラーが顔を合わせるとは、とんでもない事件の予兆なのかい」


乙姫が、亀の後を受けて話し始めた。


「しかし、私たち三人は、コミュニケーションに困らない。言葉より先に、気持ちが通じ合っているのかもしれませんね。そんな気がします」


確かに、不思議な巡りあわせであった。


乙姫は、話を続けた。


「亀さんが、おっしゃる通り、この世界ではとんでもないことが起こりつつあると思います」


乙姫は、自分がこの世界にやってきた理由を話した。この世界だけではなく、宇宙の各地において、とんでもないことが進行しつつあるのです。


乙姫は、亀や若い男に対して、宇宙の柿の木の果樹園で起こりつつあることについて話した。乙姫が、現在調査中の件について、亀やこの若い男からも情報を提供してもらいたいからである。



乙姫の話を聞いた若い男も、感慨深げだ。


「タシカニ、コノセカイハ、ナカナカ、オモイドウリニハ、イカナイ、セカイデス。コレハ、カキノキノ、カジュエン二、ナリカワリ、ハナヤカニ、サキホコル、サクラノ、セイナノカ?」














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