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さるかに合戦 11

こうして、乙姫の柿の木果樹園の消滅の原因調査という仕事が開始された。


乙姫は、最初に柿の木果樹園が消失してしまった、とある現場にやってきた。


柿の木果樹園が消失してしまった現場というものは、すでに星の数ほどある。


その中で、乙姫の会社が重大な関心をよせている果樹園というのがいくつかあった。


乙姫は、その中のひとつにやってきた。そこでは、柿の木の果樹園は、すでに消失してしまっていた。乙姫は、柿の木の果樹園の消滅がどれほどのものか自分の目で確かめた。


乙姫は、柿の木の果樹園の消失の現場を歩き回ってみた。乙姫は、かなり遠くまで歩き回って見たのだが、乙姫は、柿の木の果樹園の痕跡さえも見つけることは出来なかった。


「確かに、この辺りには、柿の木の果樹園どころか、柿の木の一本どころか、柿の木の痕跡さえも見つからない」


乙姫は、遠くまで見晴らしのきく高台にやってきた。この高台からは、360度の展望が開けている。乙姫は、この展望の全貌を子細しさいにチェックした。


この乙姫の周りの360度の展望の中には、残念ながら、柿の木の一本も見いだせなかった。


乙姫の周りの景色は、遙か遠くまで、満開の桜の薄い桃色がおおいい尽くしていた。


「桜が、この淡い桃色の花を咲かせている桜の木が、今では柿の木の果樹園に取って代わっている」


乙姫は、柿の木果樹園の消失を確認した。


乙姫は、柿の木果樹園の悲惨な現状を報告するために、上司にコンタクトをとった。


上司は、残念な報告ではありながらも、乙姫の冷静な口調には頼もしさを感じた。


      *       *


ところで、早朝に、この世界に到着してからずっと動きぱまなしだった乙姫は、圧倒するような満開の桜の開花する様子を見て圧倒されたせいか、急に空腹と疲れを感じてしまった。


そもそも、柿の木果樹園は、タイムトラベラーにとって、心の安定の第一の元である。


やはりタイムトラベラーにとっては、柿の木の果樹園というものはなくてはならないものだ。乙姫がそんな実感にひたっているときのことである。


乙姫が、バックの中にしまい込んできた「柿の種子」が、振動を始めた。「柿の種子」の発する振動は、弱くなっては、強くなって、また、弱くなっていく、一定の周期的強弱を繰り返していく。


乙姫は、柿の種子の振動にある種の悲哀を感じた。


しかし、それにもまして、空腹と睡魔は強烈なものであった。


乙姫は、その日のご飯とねぐらのための情報を得るため、をスマホを取り出した。


そのとき、乙姫は何かが背後から接近してくる何者かの気配をかんじた。


乙姫に接近してくるもののスピードは、乙姫の運動神経をもってすれば、どうにでも避けられそうな、取るに足りないほどのものであった。そのために、乙姫は、自分に接近してくるものに対して、警戒することはなかった。


しかし、乙姫に接近してきたものは、乙姫から数十センチくらいのところで、急に向きを変えると、乙姫目がけてダッシュして、乙姫にぶつかった。


乙姫は、この衝突の衝撃で、手にしていたスマホを地面に落としてしまった。


乙姫にぶつかってきたものは、男であった。男はスーツを着ている。若い男だった。


乙姫は、スマホをあわてて拾い上げると、男のことをにらみつけた。


男は乙姫のにらみから目をそらすと、なにもわびることなく、走り出した。


「自分から人にぶつかって来て、謝りもせずに逃げようとするのはどういうこと?」


乙姫は、腹が立った。乙姫は、一瞬、空腹を忘れて、男を追いかけて走り出した。









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