表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

#エピローグ

 これが約1万年前の地球人の手記を翻訳した結果になります。我々は偶然にも宇宙空間に漂うこの手記を入手することができましたが、周辺の探索ではこの男の遺体を見つけることはできませんでした。彼の手記はここで終わっており、彼がこの後どうなったかは知る由がありません。

 この当時の人間は各個人の意識が他者と共有されることなく、孤独の戦いを強いられていたことが想像されます。ええ、そうです、確かに個人の意識を話す自由はあったでしょう。それは一方で、話す不自由でもあったのです。

 今、我々の意識は、言語を介することなく、思念波として自然と体外に放出されています。そして、同様に自他の思念波を触覚の感覚器官で自然に受容しているのです。これによりスムーズな意思疎通と完璧な理解が促進される一方で、各個としての自我の確立は我々にとって大変興味深い事象です。

 これから行われる実験については既に皆様ご存知の通りです。反対する者がいないことも承知しています。さあ、それでは、開始しましょう。

 我々はまず、この人間の手記から採取された遺伝子情報を元に、身体組織を再形成しました。既に地球人の身体を構成する一般的な分子構造を我々は把握しておりましたが、ここに遺伝子情報である染色体を体内で再合成させることは最新技術になります。これは明朝の実験で成功したと、先程実験者の思念波の報告を受けました。

 この男を再構成するためには、男の誕生以来の非遺伝的情報も組込む必要があります。我々のデータベースが有する当時の地球人の一般的な知識および教養に加えて、この手記の内容を電子化し、男の大脳皮質へ転送しました。これも明晩無事アップロードできたそうです。

 我々はこの地球人から自我を学ぶとともに、彼の行動を観察することとしましょう。彼が求めるのであれば、手記中に記載された彼の宇宙船を再構成する材料も整っています。これから我々は思念波が通じない生命体とファーストコンタクトすることになります。ええ、万全を整えているとのこと、安心しました。

 それでは皆さん、思念波に集中してください。我らの新時代へ、さあ参りましょう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ