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ZEROミッシングリンクⅡ【2】ZERO MISSING LINK2  作者: タイニ
第十五章 繋がる点や線
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93 ニアリーイコールの鏡




全ての検査を終えたチコが、SR社のリラックスルームでオレンジシナモンティーを飲む。



「ゆっくり話すのは初めてだな。少し締めたけれどよかったか?自動調節も調整したから。」

「ああ。違和感が減った。ポラリスはいつまでいるんだ?」

チコとポラリスは久しぶりに向かい合って座った。


後ろでは研究員のチュラもドリンクを作っている。


「少しこっちに指導をするし、こちらから貰うこともあるからしばらくいる。タニアはマーカーもいるし任せられる人間もできたから。ミザルも少し見ていないと。多分シリウスが完成して、少し目的を失っている。高校卒業の前にファクトもいなくなってしまったし。」

「…」

チコはミザルが心配だったが、自分は家族としても、一人の人間としても間に入ることができずもどかしかった。

今はタニア側の技術引継ぎなどしているが、中学校からのインターン含む入社以来、ミザルは初めて長期休日や完全自由出勤を貰っている。でも、一人だと何もせず家でボーとしているだけなので、ポラリスがいないといけないらしい。これまでこんなにい長い自分だけの時間がなかったので、何をしたらいいのか分からないらしかった。


「…でも、ファクトがいない方が、夫婦の時間を取り戻すのにはいいんじゃないか?」

「そうだな…。そう思おう。時々辛辣なことは言われるが、ミザルが横にいないよりずっといい。」


「ミザルの事愛してる?」

「…もちろん。」

普段好きだ好きだと言いまくっているのに、そんなことをチコが言うとは思わなくて、年甲斐もなくポラリスはなんだか赤くなってしまう。


「…。ポラリスが幸せならそれでうれしい。」

嬉しそうにチコは笑う。チュラもこの笑顔と発言に驚く。


SR社の人間は、チコは基本が真顔だと思っているからだ。


「サダルはどうだった?会ったんだろ?SR社(うち)にも来たが。」

「…元気そうだった。」

「今度はいつ会うんだ。一緒に会いたい。」



「…離婚することになると思う。」


一瞬真っ白になるポラリスと、後ろでブゴ!っとアイスドリンクを吐くチュラ。

「は?!!」

「まだ周りに言わないでほしい。カストルやデネブにも言っていない。カストルはユラスの方で知っているかもしれないけれど。」

チュラが周りを見渡す。もちろん誰もいない。

「な、なんでだ?」

「多分もう無理だし、私もアジアに長くい過ぎてユラスが怖い…。族長夫人をやる気があって、もっとサダルに合う人は他にもたくさんいるだろうから。」


「チコ、どっちが先に言ったんだ…。」

「私。」

「はあ…。」


「そういうことは先に相談してくれればよかったのに…。」

「まだ話を出しただけだ。」

「あのな、サダルは一応私の元部下で、同僚で、義息子にもなるんだぞ!」

「……あ、そっか。ポラリスの義息子なんだ…。ファクトと兄弟だな!顔の系統も似てるかも!そこは親近感が湧く!」

初めて旦那の話をうれしそうにする。

聞く方としても、そこ?と言いたい。


「しかも、解放されてあの忙しさで、最初の訪問でそれは………」

チュラがサダルを憐れむ。

「そこは悪かったと思ってる…。でも、きっかけもあったし曖昧にしない方がいいと思って。」

「チコ。」

ポラリスは強く言って、チコの視線を引き寄せた。

「まだ可能性がないわけじゃない。君たち二人のおかげで、ユラス復興が急速に進んだんだ。できれば一緒にいてほしい。愛想はないが、悪い奴じゃない。」

困った顔をするチコ。


「でも私に子孫は残せない。」


「………。」

チコ以外が何とも言えない顔をした。


しばらくして、ポラリスが話す。

「…カストルもそれを分かって一緒にしたのだし、サダルも受け入れたんだ。」


「…あの頃の私はまだ世の中の事とか、出来ないことをよく知らない子供だったから受け入れたけれど、今なら分かる。ユラスの中では無理だ。」

「でもサダルは受け入れた。」

「結婚初期は触るのも嫌がられていたけれど…。」

初期のこと思い出してチコが言ってみると、ポラリスは肩を落とした。


「でも、だからこそあの日みんなが…」

サダルが捕虜になった日の事を思い出して、チコはポラリスの言葉を塞いだ。

「だから、それは…もう考えないことにした…。」


二人がただのユラス人ならまだよかった。


でもサダルはそうできない位置にいた。母系ではあるがナオスの正当な族長長兄血統の唯一の生き残り。そして男系を引いた大叔父家族より優秀で、他大陸に移住した親戚たちと違い、ユラスや近隣国を肌で知っている。


誰もが知っている存在であり、誰もがその存続を願っていた。



「…ポラリス。そんな顔しないで。」

「…するだろ。」

チコはごめんねと優しく笑う。

「他には誰が知っている?」

「サラサと…たまたま居合わせたアーツの何人かが知っているらしい。」

たまたま離婚届に遭遇したジェイたちである。身近なものは皆、予想はしてただろうが。


「…。」

ポラリスが苦い顔をしていると、ファクトがやって来た。

「こんちは!おー、チュラさん!こんちは!チコ、大丈夫?」

「うん。」

「ファクト………。久々にしか会えないお父さんに最初に挨拶してくれないのか~。」

「こんちは!って言ったじゃん。」

「もっと感激な感じで…。」

ハイハイとハグをされて、満足そうだ。


「チコ!ウヌクがさ。なんかいきなり南海の道場に来た。」

「ウヌク?あのバカは追い出してほっとけ。どうせナンパしに来たんだろ?

あ、ちょっと犠牲になったのは感謝しとくけど。」

ウヌクの怪我のおかげで河漢チンピラの話が進んだ。


「でさ、ウヌク。第3弾に入りたいとか言って来た。」

「…。ダメに決まってんだろ。アストロアーツに巣ごもりしてろ。」


「それがさ……入れないなら直接ムギの弟子になるとか言ってる。」

「…ムギ?」

「ムギの家に挨拶にまで行ってたし。結婚すすめられて。」

「はあ?!なんの変態だ!!!」


「ポラリスごめん!今日はもう行く!」

「え?チコ、みんなでお茶か夕食をしようって。」

「俺は家に帰ったついでに、チコ迎えに来ただけだから。チコ、またなんかおいしいの買ってあげようか?甘いのがいい?甘くないの?」

「ホント?パフェは?」

みんながパフェパフェうるさいので、パフェを食べてみたい。

「道場にすぐ行かないといけないし…パフェは食べ歩き出来ないから…。まあいい。行って考えよ。」


ファクトも外食する気がないので、さみしいポラリスである。しかも自分を置いていくのか。自分とお茶はできないのに買い食いはするのか。チコがパフェとか食べるのか?存在すら関心がなさそうなのに。

「チコ!パフェくらい私が奢る!」

ポラリスが乗り出すので、チコは少し考えてそして大きく笑って立ち上がった。

「今度、埋め合わせをするから。その時は私がごちそうする。」

「じゃ!父さん、チュラさん!」

「チコ?!ファクト!」


ポラリスとチュラが呆然と見送る。





「なあ、チュラ。チコってあんな性格だったっけ?よく喋るな…」

「いやあ、ベガスに来てから調整と検診以外でゆっくり話したことがないし。SR社(うち)、警戒されていましたし。」

「……。」

あれが元の性格なのか?とびっくりする。

そして…、言葉は乱暴で顔のタイプもスタイルも違うが、嬉しそうな時のシリウスと似ている。



「あんなにも似るもんなのかな…。やっぱり影響が出ているのか?」

「…。」

チュラも息をのんだ。




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